英国Cambridge大学pre-MBA Trek ~香港・深セン編~

 addlight journal 編集部
hong kong shenzhen trek

こんにちは。前回のサンフランシスコ/シリコンバレー編に続いて、今回はもう1つのPre-MBA Trekとして参加した香港・深センTrekについてご紹介したいと思います。 (一部の企業や内容は公開NGのため、公開可能な範囲でのご紹介です)。Trekとは、いわゆる「trip」のことですが、旅行だけではなく多種業界にわたる企業訪問や各種議論を行うため、使い分けて「trek」という呼称となっています。今回はOxford MBAとCambridge MBAの共同開催で、様々な国から合計40名の参加者が集まりました。

電子マネーで世界最先端をいっている中国の中でもスタートアップが盛んな香港。また、深センではあらゆるシーンで携帯マネーが使われていました。特にTencentのWeChat PayやAlibabaのアリペイは中国人が過半数が使いこなしていました。MobileやOfoのようにGPSを使って、公共ルールを守ればどこでも駐輪していい非固定型自転車シェアリングは日本よりも進んでおり、英国、米国、日本の福岡への進出をはかっています。中国本土には外資の規制もあるため一概に比較できないところありますが、アリペイが日本進出するように今後も注視が必要です。IT・デジタル業界は、先進国と途上国(中国はもはや途上国ではないですが)の差がどんどん縮まっており、経済のデジタル化、グローバル化を改めて感じました。アジアのSilicon Valleyとも呼ばれるShenzhenは、秋葉原の何十倍もの規模で様々な電子部品が売られ、少量でも製品を生産してくれる工場がひしめいています。アイデアをすぐ製品化できるため、中国のみならず海外からのスタートアップも集まっています。

では、訪問順にご紹介していきます。

長江集団(CK Holdings、香港), China Vanke (万科、深セン) 

まずは、長江集団 (CK Holdings、香港)とChina Vanke (万科、深セン)です。

CKは香港最大の不動産会社の1社で、世界最大の港にも出資し不動産以外にも拡大しています。Vankeは91年に深セン株式市場に上場しており、同社説明者曰く、上場から株価は3,000倍になっているという中国を代表する不動産会社です。同社の訪問で印象に残ったのは、不動産の演出方法。中国程派手ではないとはいえ、日本人の一般的な感覚だと派手すぎる印象を受けるかもしれません。モデルルームはドアがしっかり閉まらず、細かいところで傷や汚れがありましたが、そこまでお客さんは気にしていない模様です。

Vankeで印象的だったのは、まず奇抜ですが緻密に計算された環境にやさしい本社建物。地形に沿って建物をつくり、水の池の下に会議室や通路をおき、水が下から眺められる、壁は原則全て竹(木より成長が早くエコと)等いろいろな点をPRしてもらいました。北京や上海もそうですが、中国では奇抜なデザインの建物が多く見られます。こちらのリンクでVanke本社建物の様子が分かります。

両社に共通していて感心したことは海外オペレーションであり、事務所では中国からの駐在員派遣は1~2人程度となっており、極力現地化を優先しているとのことです。変わってきているとはいえ、日本では未だにオール日本人で物事を進めようすることが多いですが、両社ともオールグローバルで、各国、地域に根差して発展していきたいという気概が見受けられました。(一方で、カリスマ的なVanke創業者のビデオ集やエベレスト山登頂の映像を流したりして、企業文化の違いも興味深いものがありました。欧米人学生の一部はそのビデオに違和感があった模様で、当方も同様な意見を持ちました)

DJI

ドローン製造世界最大手のDJIを訪問。事前に雑誌やニュースでよくDJIのことは聞いていましたが、一般的な中国メーカーのイメージとはいい意味で異なり、オフィスもドローンのデザインも洗練され、欧米人含む外国人が多く働いておりシリコンバレーのオフィスのような雰囲気でした。服装も各自自由、会社にはテニスコート、バスケットコート、各種ゲームもありました。

お客さんの80~90%は一般消費者で、B2Bはまだ少ないようです。想定しているB2Bの用途はよく最近メディアでも報道されている通り、インフラ点検用、農業(農薬散布、センサー)、一般のデリバリー、緊急薬品・医療品デリバリー等で、DJIとしては特にインフラ点検用、農業に注目しているとのこと。デリバリーは、まだ管制塔のルールが確立されていないため安全上不安でDJIとしてまだ力を入れておらず様子見というお話でした。やはり不安要素はリチウムイオン電池のバッテリーで30分少々という持続性と部分とのことです。とはいえ、ドローンを使った現代的なダンスや、美しい風景、映像の数々を体感でき、今回のTrekで最も感心した企業の一社でした。

hong kong shenzhen trek

ドローンにセンサーをつけリモコンを使わずに手で操作している

Tencent

その後、有名なTencentを訪問しました。とにかくWeChat、WeChat PayでOne-stop paymentを実現しており驚きです。1つのアプリで日常のことがかなり網羅でき、今回参加した中国籍の大学院合格者も、Tencentのゲームや情報コンテンツにはまっており、これらの事業はTencentの収益柱となっています。自転車シェア最大手の一角Mobike、以前Softbank傘下であったSupercell、他には韓国カカオトーク、ロシアの会社等多数投資しており、大企業ながら意思決定はトップダウンで早いようです。

中国の外資規制や独占禁止法の考え方の違い等一概に比較できないですが、性能等に日本企業や欧米企業のアプリと差を感じません。ステッカーのデザイン等はもちろん違いますが、それは文化背景によるものであり経済のデジタル化のスピードを感じた次第です。

Huawei(華為技術)

こちらも、中国を代表する企業の一社であるHuawei。スマホの販売数は世界3位で2016年の売上高は8兆円超。先日、中国企業としては初めて、通信機器や関連機器の工場を日本に建設することでも話題になった会社です。シリコンバレーでもよく耳にしましたが、「everything digital」つまり「全てがデジタル化される」と強調しこの波に乗って行くのだ、との説明が印象的でした。当方は以前アフリカによく行っていましたが、電線が繋がっていない地域に、太陽光パネル、ディーゼル発電機と電灯、Wi-Fi、電源を繋げた通信塔をよく見かけ、これらはHuaweiが非常に強い分野です。下の写真のものは、それにEV用の充電器を加えたサウジアラビア向けの通信塔です。また、石油ガス業界用のパイプにIoT機器を付けメンテナンス、場所によってはドローンで修理できるようなシステムを検討中とのこと。ケニア首都ナイロビでは防犯カメラと通信機器を合わせて犯罪率や警察官到着の効率を上げる、など世界中で活躍しています。中国政府がエネルギー確保と政治的な理由からアフリカに力を入れていることも寄与しています。

自転車シェア事業にも通信機器で加わっています。中国ではOfoとMobikeが二強で、Mobikeは先日福岡に進出することを発表しています。Ofoはアリババが出資、MobikeはTencentが出資し、30分1元(約16円)程度ですが、各社は無料キャンペーンを実施しており消耗戦の模様で、小さいスタートアップは淘汰されています。現状、ほぼ上記2社に集約されています。中国では、2016年の自転車シェア事業の本格導入からわずか1年で中国主要都市を両社自転車のシンボルカラーであるオレンジや黄色の自転車で染めました。かつて自転車大国だった中国の大都市は元々道路が広めで、自転車用道路もあるのも普及に後押しました。ただし、自転車の非固定型vs固定型で管理方法も変わるため、この点は要注意です。実際、中国でも駐輪問題、盗難問題が既に社会問題になりつつあります。2016年の自転車シェアの数は中国で既になんと1,800万台となっており、2017年には5,000万台に達すると言われています。Trekに一緒に参加したメンバーからは、“Share bikes need to turn their popularity into profitability”(自転車シェアはその人気を利益に変えていく必要がある)との声が上がり当方も同様の感想を持ちました。

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Huaweiのサウジアラビア向け通信塔兼EV充電器

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Huawei事務所の食堂。実際は写真の何倍もの広さがあり驚きです。最先端のオフィスの中に中国らしい食堂が多数あります

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自転車シェア2強。オレンジ色はMobike、黄色はOfo社の自転車です。街中で本当によく見かけました

Shenzhen Stock Exchange

中国のIPO(新規公開株)で有名な深セン株式市場(Shenzhen Stock Exchange)を訪問。上海では、ほぼ毎日新規上場会社があり、申請しても実際の上場まで1~2年待ちのようで、深センでは上海ほどの頻度ではないものの数多くのIPOがあるとのことです。但し、IPOにはリスクも伴うため、個人株主保護のために上場会社の資本統制を強化している、また情報の正当性が疑問視されているのは認識しているが、透明性も強化していると強調されていました。興味深かったのは、中国人は借金してまで株式投資に突っ込むことはせず、あくまでも自己資本内で投資する点。ただし、リスクの高い投資商品に投資する人が多いことを問題視しているとのことでした。これは、別途訪問した中国商業銀行でも同様のコメントありました。

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Shenzhen株式市場で記念撮影。東京と同じく新規株式公開時は上のベルを鳴らすと。周り全てが縁起のいい赤でした

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株式市場からの景色。このようにデザインが面白い建物が数多く見られます

余談ですが、特に不動産会社訪問時のクーラーが冷蔵庫並みに寒く、当方含め3人程風邪をひきました。中国人が気を使って風邪薬とビタミン剤を買ってくれました。サービス名は失念しましたが、スタートアップのデリバリーサービスを使い、なんと1時間後には写真のような風邪薬がバイクで届きました。輸送料は彼曰く「無料みたいなもの、どうやって利益を上げているのか分からない。自転車シェアもそうだが、中国のスタートアップにはどのように利益を確保しているのか分からない企業が多数ある」と言っていたのが印象的でした。

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注文後1時間でホテルに届いた風邪薬

その他には、投資銀行、商業銀行、ファンド、監査法人などを訪問し、サンフランシスコ/シリコンバレーに続いてとても濃い内容のTrekとなりました。

いかがでしたでしょうか。今回は、ケンブリッジ大学Pre-MBA Trekということで、サンフランシスコ/シリコンバレーと香港/深センを2回に渡ってご紹介しました。特に普段日本在住の方には興味深い内容も多いのではないかと思います。現地に行かれたることがありましたら、ぜひお立ち寄りください。

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