「YC Summer 2020」Demo Dayレポート─注目スタートアップ6選

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

2020年、米国時間8月24日に米国シードアクセラレーター・Y Combinator(以下、YC)のbatch(期)「YC Summer 2020」のDemo Dayがオンラインにて開催された。本バッチは2020年よりコロナ禍の影響もありオンラインでの開催となったが、その熱気は変わらない。参加スタートアップは去年よりも多い198チームが参加した。

コロナ禍でも手を休めないYCのスタートアップ支援

今回、過去と比較すると以下のような特徴が見られた。

・コロナ禍を意識したデリバリーサービスやオンラインサービスが目立った
・オンラインカウンセリングなどのヘルスケア領域の台頭
・魚介版インポッシブルフードを始めとしたフードテック領域の変わらぬ根強い人気

詳しくは、YCのオフィシャルブログに記載されているYC Summer 2020の参加属性を参照いただきたい。

米国のアクセラレーターの状況を見てみようと思う。BtoBや各領域、とりわけテクノロジーに特化したプレイヤーは引き続き顕在だが、総合型のアクセラレーターとしてはYC一強には変わりない。

YCは2020年6月の発表で、COVID-19などによる将来の不確実性の増加に伴い、一社当たりの投資額を150K USDから125K USD7%のequityを取得と減少させた。しかしYC自身、様々なスタートアップへの投資に対する意欲は高い。YCのスポークスパーソンは、「弊社の標準的契約を変更したことによって、従来よりもさらに3000社もの企業に出資できる」と述べていた。YCが公開しているRFS(Request for Startups)を見ると、COVID-19に関する文言が追加されている。またYCのPresidentを務めるGeoff Ralstonは、YC公式ブログにてColorStack やCodePathといったマイノリティや黒人に向けにコンピューターサイエンスの知識獲得を支援するスタートアップとパートナーになったと記載している。

COVID-19を始め、社会問題が浮き彫りとなっているが、YCはスタートアップ向けに様々な手を打っていると言える。

PICK UP! YC Summer 2020スタートアップ6選

YC Summer 2020で気になった6チームを以下に紹介する(オフレコチームは除く)。

1)Fancy
2020年にイギリスにて創業。お菓子や飲み物などのコンビニエンスストアにある商品を30分以内に配達するサービス。現在はイギリスのリバプールやマンチェスターといった都市を中心に展開中。既存の店舗から商品をピックアップするのではなく、独自の「ダークストア」(ネットスーパー専用の物流センター)を運営することで利益率を高めている。

2)Together Video Chat
2020年にスペインのバルセロナにて創業。子どもや祖父母のために作られたビデオチャットサービス。オンライン通話サービスのFacetimeやZoomは話すことに特化している。エンタメ機能はなく、子どもが利用するには少々退屈である。Together Video Chatはビデオ通話をしながら遊べる機能が備わっている。例えば、絵本の読み聞かせのほか双六や塗り絵である。同社は毎月1万7000ドル(約180万円)の経常収益を上げているようだ。

Together Video Chat

3)Daybreak Health
2020年にサンフランシスコにて創業。10代の若者を中心に、彼らに対するオンラインカウンセリングを提供する。特徴的なのは、単に問題を抱えている子を治療するだけではなく、ストレスの対象法を知り、プレッシャーに適切に対応する能力を身に着けてもらうという点だ。「当社がしていることは、臨床プログラムとテクノロジーの融合だ」と創業者のアルバラド氏が語るように、患者はアプリを通してコミュニケーションを行い、自身でエクササイズを行えるようになっている。親が気づいていない子どもの状態を伝える、悩みを抱えている子どもとのかかわり方を伝えるなど、親に対しても支援を行う。

Daybreak Health
利用イメージのキャプチャー(https://www.daybreakhealth.com/)

4)OrangeHealth
2020年にインドのバンガロールにて創業。オンライン相談やその他の遠隔医療サービスの請求、配送などのインフラの提供を行っている。これまでインドでは非対面の医療行為に対してのルールが無く、遠隔医療サービスに対して医師や病院は及び腰だった。しかし、ロックダウンに伴い遠隔医療のルールが定まったことで、オンライン診療インフラのニーズが急激に高まりサービス成長の後押しとなっている。同社は健康診断をパッケージ化した商品の販売も行っている。

OrangeHealth
当該サイト画面(https://www.orangehealth.in/)

5)MilkRun
2018年にアメリカのオレゴンにて創業。都市部に住む人々と地元の食品をつなげるサービスを展開。ポートランドで月に42万5000ドル(4523万円)のGMV(総売上金額)を達成している。利用者はオンライン上で商品を選択し、それを届けてもらう。農家や漁師に直接お金が流れるため、サービスの利用が彼らの支援につながることが特徴。利用者が注文した商品に応じて、シェフがそれを利用した料理のレシピを同封してくれるサービスもある。

6)Kuleana
2019年にサンフランシスコにて創業。魚介版のインポッシブルフードである生マグロの代替品の開発を行っている。マグロやサーモンの代替品を提供する企業は他にもあるが、Kuleanaは寿司用の生マグロを再現することで差別化を図る。現在、40万ドル(約4220万円)の基本合意書(レターオブインテント)を獲得している。

Kuleana
当該サイト画面(https://kuleana.co)

YCに参加する一投資家として思うのは、日本人のスタートアップの登壇が極端に少ないということ。今回も残念ながらありませんでした。世界標準を見据えて、ぜひとも1社でも多く日本のスタートアップの皆さんに登壇いただき、数多の投資家の前でピッチを繰り広げていただきたいと思います。「YC Summer 2021」の参加申し込みの締切は、米国時間の3月15日の午後8時まで。奮ってご参加ください。