【開催報告】Fin Book Camp #6「起業家のためのM&AによるExit戦略」

 addlight journal 編集部

Fin Book campとは

「Fin Book Camp」は、株式会社アドライトが主催する、起業家のための資金調達や資本政策など、ベンチャーファイナンス全般に関するテーマを題材にした勉強会シリーズです。第6回目となる今回は、株式会社モバキッズ(現:シナプス株式会社)の創業者であり2017年2月に競合事業を運営するDMMグループ入りを果たしたシナプス株式会社の代表取締役、田村健太郎氏をお招きし、創業の経緯から、今回のDMMグループによるM&Aに至った過程まで、ご自身のリアルな体験談を交えてお話いただきました。当日を前にチケットはすべて完売、その後からもなんとか参加させてほしいとの問い合わせが後を絶たない、始まる前から非常に注目度の高いイベントでした。

学生起業の後に様々なサービス開発に孤軍奮闘

田村氏は、一橋大学在学中にビジネスコンテスト団体「KING」の同期と共に起業しました。プログラミング未経験でありながらCTOに就任され、受託開発で収益をあげながら自社のサービス開発に打ち込んでいました。当時は、まだスマートフォンが出回っていなかった時代で、主にガラケー向けにeラーニングの学習管理システム、インディーズコミックのCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)サイト、出版社向けの電子書籍の開発などのサービスをローンチされました。しかし、2008年のリーマンショックの頃にはマーケットが冷え込み資金調達が困難になった上に当時の代表が退任。その後の数年間、良質なコンテンツをインターネット上で流通させることをテーマに様々なサービス開発に孤軍奮闘していたところ、2011年末に展開していたサービスのひとつが評価されたことをきっかけに、現シナプス社が本格的にスタートしました。


シナプス社の歩みは順風満帆にはいかなかった

田村氏はその後、無事に資金調達を終え、電子書籍や動画といったコンテンツ単体の販売プラットフォームを考案し展開しました。当時のコンセプトは、「良質な情報を手頃な価格で」。しかし、先行した海外の競合が盛り上がりをみせたもののその後急速に衰退。そんな背景もあり、事業は伸び悩んだそうです。そんな中で月額課金のコミュニティで成功した時のことを思い出し、また、同じ頃に知人からの追い風となる助言を受けたこともあり、オンラインサロン事業にピボットすることを決断し現在のSynapseが生まれたそうです。オンラインサロン事業を開始した当初は事業が軌道にのるまでは、収益安定化のため受託開発も並行して行っていました。しかし後者も一筋縄にはいかず、開発を請け負っていた顧客が倒産する事態に見舞われキャッシュが底をつく経験もされたそうです。その後は、株主に支えられながら事業を継続していたところ、オンラインサロン事業を大きく伸ばす著名人をユーザーとして迎えたことで事業が良い方向に転換していきました。

売上の順調な拡大とともに新たな資金調達も完了しサロン数も増加させてきたシナプスには、様々な企業からM&Aのオファーがあったそうです。検討を重ねた結果、田村氏はDMMグループの傘下に入ることを決断されました。

自身の失敗経験から

講演のはじめに、田村氏は「自身の失敗経験から、大企業のオープンイノベーションの取組みやスタートアップコミュニティに対して貢献ができれば」という想いでご登壇されました。シナプス社の経緯をお話いただいた後、田村氏は起業家として歩みを8つの失敗経験を交えて振り返りました。例えば、撤退した事業が失敗した理由、事業ピボット後のリソース配分がうまくいかなかったこと、マーケティングとサービス開発のバランスが取れていなかったこと、受託開発で失敗したこと、大手競合ともっとうまく対応すれば良かったということ、など、実に幅広いエピソードを語っていただきました。

成功と失敗を両方とも経験してなお活躍されている起業家のリアルな体験談、知見、見解を惜しげなく紹介いただいた田村氏の講演はとても興味深い内容であり、参加者の皆さまが田村氏の貴重なお話を逃すまいとメモを取りながら聞き入っている姿が目立ちました。

注目度の高いスタートアップ創業者のExit体験談

当日は、田村氏によるExit戦略の講演ということで、起業家、スタートアップ企業の方、起業家支援者、学生の方など色々な方にご参加いただいたこともあり、幅広いを交えて活気のあるディスカッションが繰り広げられました。

現在田村さんはどのような活動されているのか、M&A後のご自身の役割をどのように考えているのか、売上の上昇や資金調達につながるような人的ネットワークの築き方、M&A決定時のボードメンバーの体制について、M&Aが完了するまでの期間はどのくらいだったのか、事業が成長していく過程でどのようにご自身の役割が変わっていったのか、従業員や投資家とのコミュニケーションはどのようにしていたのか、Exitの手段がIPOとM&Aで重要視するKPIが異なると思われるその点に対する見解、M&Aに向けて自社の価値というのはどのように試算していたのか、など、様々な質問が田村氏に投げかけられ、弊社代表からのコメントや関連する質問を挟む形でインタラクティブなやり取りがなされました。

質疑応答の後、登壇者の田村氏と参加者を交えた懇親会を行い、積極的に名刺交換や情報交換をされている皆さんの姿が印象的でした。

最後に

学生時代の起業から、シナプス社の再出発と事業拡大を通じて、様々な失敗を経験してきたという田村氏。失敗談を中心にお話いただいた今回でしたが、田村氏のお話の中では笑いが生まれるシーンも多々あり、終始良いムードで行われた会となりました。

株式会社アドライトでは、スタートアップのエコシステムの発展のために、起業家にお役立ちいただけるような様々なコンテンツの提供をはじめ、資金調達やM&AによるExit支援を行っていきます。また、社内で起業家を育成し、起業家とともに事業を立ち上げ発展させていく社内起業家制度も開始しました。

本記事やベンチャーファイナンス、または弊社のスタートアップ育成サービス内容に関することやその他お問い合わせがございましたら、ぜひこちらからお気軽にご連絡くださいませ。

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