全社一丸の体制で社員のアイデアを事業化へ。大手メーカーが挑む新規事業創出とは ーーマックス株式会社

 addlight journal 編集部

1942年創業の機械メーカー、マックス株式会社。(以下、マックス社)

マックス社では、コロナ禍による主力商品の需要減少を機に、新規事業創出の必要性を認識し、全社を挙げた新規事業創出プロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトでは、社員のアイデアを起点に、若手から役員まで全社一丸となって新規事業への挑戦を進めている。

アドライト社は同社に対し、アイデア募集の仕組み作りや社内の巻き込み方の提案など、プロジェクト推進の支援を実施。社内の発想力を引き出し、イノベーションの芽を育てる取り組みを後押しした。

今回、同社にてプロジェクトを推進する運営局の石井氏、竹内氏、窪氏に、プロジェクトの経緯と成果、今後の展望についてお話を伺った。

会社紹介: マックス株式会社
マックス株式会社は、1942年の創業以来、ホッチキスなどのオフィス用品を中心に、国内外で幅広い事業を展開している機械メーカーである。「世界中の暮らしや仕事をもっと楽に、楽しくする」をコーポレートビジョンに掲げ、オフィス機器やインダストリアル機器、HCR機器など、多様な分野の製品を開発・製造する。近年はDXにも注力し、オフィスの業務効率化を支援するソリューションの提供にも注力している。
公式サイト:https://www.max-ltd.co.jp/

コロナ禍を転機に、新規事業創出プロジェクトを開始

—皆さんの所属する部署と役割について教えてください

石井氏:私は新規事業推進室の新規事業推進グループの部長を務めています。新規事業の創出に向けた活動全般を担当し、ビジネスコンテストの事務局運営や事業立ち上げ支援などを行っています。

竹内氏:私はオフィス機器セグメントのグローバル商品企画グループの部長です。国内外のオフィス機器の商品企画を担当しており、新規事業創出プロジェクトにも参画しています。

窪氏:私は新規事業推進室の新規事業推進グループの課長として、新規事業のアイデア創出や事業性の調査・探索を主に担当しています。石井と共にプロジェクトの中心メンバーとして活動しています。

プロジェクトは新規事業推進室が中心となって進めていますが、オフィス機器セグメントなど他部門とも連携しながら、全社的な取り組みとして推進されています。

—新規事業創出プロジェクトを始められた背景や課題感について教えてください

石井氏:コロナ禍や環境の変化により、ホッチキスなどの主力商品の需要が減少して売上に影響が出てしまったので、新たな事業の柱を作る必要性を感じました。そこで、3年前から新規事業創出に向けて、アイデアコンテストを年に1回の頻度で全社的に実施し、今回が3回目になります。

アイデアコンテストの課題としては全社を巻き込んでの活動にできていなかったことが課題でした。1回目は手探りでメンバーを集めて行い盛り上がりもあったので、2回目は挙手制で参加者を募ったところ、参加人数が大きく減ってしまいました。みなさん自分の本業もあるので、上司の許可がおりない場面もあり難しかったようです。また、出てくるアイデアも、何でもいいからアイデアを出してくれという進め方をしてしまったので、テーマが広がりすぎてしまい事業化へのハードルが高くなってしまうという課題もありました。

—過去のプロジェクトの課題を踏まえ、どのような方針で3回目に臨まれたのでしょうか

石井氏:1、2回目は個人事業主として活動されているコンサルタントに支援してもらっていましたが、新しいやり方を取り入れるべきと考え、別の運営会社を採択する方針で進めました。社内で新規事業を進めていく風土を醸成したいという狙いもあり、社内の雰囲気を盛り上げ、参加者を増やすことを目指しました。

竹内氏:当社は比較的堅めの社風なので、外部の方を入れることで新しい考え方や進め方を取り入れたいと考えました。社内だけで進めると、どうしても今までのやり方に縛られてしまいます。外部の力を借りることで、新規事業らしい発想で取り組めるのではないかと期待しました。

外部知見を積極的に取り入れ、アイデア創出を加速

—外部支援企業の選定はどのように行われましたか。またアドライト社を選ばれた理由を教えてください

窪氏:1回目のアイデアコンテストで採用された「レンツール」というサービスの事業化を進める中で、事業化に向けた支援を外部に依頼していました。伴走支援してもらえる企業をいくつか探していましたが、その中の1社にアドライトがあり、そこでアドライトのことを知りました。

今回、3回目のアイデアコンテストを実施するにあたり、何社かにお声がけをしました。過去2回の課題を伝え、プレゼンをお願いしたところ、アドライト社の提案が私たちの抱えていた課題に1番細かく応えてくれていました。社内の雰囲気作りや人材育成の面でも、具体的なアイデアを提示してくれました。

石井氏:アドライト社を選んだ理由の1つは多様な講師陣による指導が期待できたからです。それまでは1人の講師に頼っていましたが、アドライト社は様々な分野の専門家がいるので、発想が広げられるのではないかと思いました。

もう1つの理由は、アドライト社主催で行われたイベントに参加して感じた雰囲気です。社内だけでなく、外に飛び出して楽しそうに活動できる雰囲気を感じました。3年目はこれまでとちがった雰囲気であることをアピールしたかったので、社内ではなく外部会場でイベントができるのは魅力を感じました。加えて、担当者との相性も良かったですね。一緒に寄り添って考えてくれる信頼できるパートナーだと感じました。

参加者は過去最多。社長・役員を巻き込んだ全社プロジェクトへ

—今回のプロジェクトの体制・進め方を教えてください

石井氏:当社からはコアメンバーとして運営局の4名、加えて開発、生産メンバーが携わっています。アドライト社からは2名加わっていただき、週に1回打ち合わせをしました。当社の要望を伝えて、それに対してアドライト社から提案をしてもらいプログラムをブラッシュアップしていきました。

—今回のプロジェクトの取り組みについて教えてください

石井氏:まずはキックオフイベントで常務と執行役員に来てもらい、パネルディスカッションのような形で今回のプログラムを説明しました。役員が出てくることで、会社としての取り組みなのだと本気度を伝えることができたと思います。

実際のアイデア募集では、プログラムへの参加ハードルを下げるため、参加の有無に関わらずアイデアを提出できる仕組みを作りました。「プログラムに参加して欲しい」だと心理的ハードルも高いですが、「参加有無はともかくアイデアを出して欲しい」だと、みんなが普段思っていることを気軽に提出してくれて、その結果、昨年度の10倍である164件ものアイデアが集まりました。今回、個人ではなくチームで進めていくことを念頭に置いていたため、似たアイデアをまとめたりして、一次選考でアイデアを9件まで選抜し、二次選考を経て最終的には5件まで絞り込みました。その5件のアイデアは最終選考として、社長も参加したピッチイベントに挑んでもらいました。

—社内の巻き込み方工夫された点などがあれば教えてください

竹内氏:キックオフイベントはInspired.Lab(セミナー、ワークショップなどの開催が可能なイベントスペース)で行いました。社外でこのようなイベントを行うことはあまりありませんし、役員がオープンな場に出てくる機会も少ないので、社員には新鮮な体験になったと思います。

  1. 石井氏:役員には、キックオフイベントや中間審査、最終審査など、節目節目で登壇いただきました。また、事務局だけではなく、各部門長クラスが早い段階でこの取り組みに応援者として関わるようにしました。経営層と現場の双方を巻き込むことで、プロジェクトが全社的な取り組みであることを印象付けられたと思います。

窪氏:審査員として社長や専務、常務などほぼ全役員に参加していただいたので、普段あまり接点のない若手社員にとって、自分のアイデアを直接発表することができる貴重な機会になったと思います。

—プロジェクトの反省点があれば教えてください

竹内氏:このアイデアコンテストの狙いとして社内で新しいことをやっていく意欲や文化の醸成があります。今回、参加したメンバーは熱意を持って取り組めた一方で、まだ参加意欲の低い社員も一定数いるので、全体の巻き込み方は今後の課題だと感じました。

また、今回は既存事業の知見を活かし実現可能性が高い領域でのアイデアコンテストだったため、最終に残った5件が既存事業に近いアイデアでした。過去2回は既存事業が遠すぎることが課題でしたが、近すぎても新しい発想も生まれづらいので、今後どの距離感が適当なのかを検討していく必要性を感じました。

新規事業創出をきっかけに変革を続ける風土づくりに挑む

—今回のプロジェクトで生まれたアイデアは、今後どのように発展させていく予定ですか

石井氏:前回までのプロジェクトでは最終審査が終わると活動も終了していましたが、今回は5件全てのアイデアに対して来期も継続して取り組む方針です。すでに開発部に引き継いでいるものもあれば、提案者と私たちでペアを組んで、事業化に向けてアイデアをブラッシュアップしていくものもあります。

アイデアコンテストとしては隔年で行い、次の年はアイデアコンテストで出てきたアイデアを事業化にもっていくというサイクルが回せるとよいなと思います。

—今回の取り組みを通して、御社として今後はどのような変革を目指していきたいとお考えでしょうか

石井氏:今回の活動を通して、アイデアコンテストという形だけではなく、自分たちが今やっている仕事の中で新しいことにチャレンジするという風土に繋げていければと考えています。アイデアコンテストとしては文化醸成のツールとして今後も活用できればと思います。

竹内氏:時代の変化に合わせて会社も変わっていく必要があります。新規事業の創出や、ビジネスのやり方を変えていくことは今後も必要になっていくので、社員一人ひとりが変革の担い手であると意識をして働けるようになればいいなと思っています。

窪氏:今回の取り組みで参加者は増えたものの、長期的には全員が新しいことに取り組めるようにしたいですね。また、短期的には、若い人たちにアイデアコンテストで出てきたアイデアを事業化するところまでの過程を経験して、形になったときの喜びを感じてもらいたいです。