英国Cambridge大学pre-MBA trek~San Francisco, Silicon Valley編~

 addlight journal 編集部
San Francisco Trek - Facebook

こんにちは。今年9月から英国Cambridge大学院で経営学修士(MBA)コースに留学しております久保と申します。先日、6月末から7月上旬にかけて、Pre-MBA trekとしてSan Francisco (SF), Silicon Valley Trek、Hong Kong・深セン Trekに参加してきましたので、その内容をご紹介したいと思います。 (一部の企業や内容は公開NGのため、公開可能な範囲でのご紹介です)。Trekとは、いわゆる「trip」のことですが、旅行だけではなく多種業界にわたる企業訪問や各種議論を行うため、使い分けて「trek」という呼称となっています。今回は、多種多様な国から14名の参加者が集まりました。

ポイントとして、SF、Silicon Valleyのダイナミックさ、Be yourselfをモットーにした自由で各々が活き活きと仕事をしている様を直接見聞きできたことが印象的でした。英語が公用語なのでできるところもありますが、やはり日本も、保守派の意見は一部取り入れつつも、外国人がより働きやすいように早急に改革していくべきだと改めて感じさせられるものでした。後述しますが、特にIT・デジタル業界は、先進国と途上国の差がどんどん縮まっており、むしろ中国のスマホ環境やモバイルペイ、自転車シェアリング等は、一部日本よりも進んでいるのが現状と感じます。

まずはSF・Silicon Valley Trek (基本的にはCambridge MBA卒業生経由で企業を訪問)についてご紹介します。

Yelp

Yelpはローカル企業やB to Cを対象にした米国で人気の口コミサイト。1億人近くのユーザーが利用している模様です。同社は多くのMBAホールダーを採用しており、4つ程の各部門から説明を受けました。ただし、似たようなサービスは他国で既にある理解で、海外展開では多少苦戦しているようにも感じました。多様な部門と出身校の方々から話を聞け、プレゼンは面白かったですが、詳細は開示できないこともあり割愛させて頂きます。よく言われることですが、アメリカ人のプレゼンはやはり上手いなと感じた次第です。

Facebook

Facebookの有名な本社の写真は事前にTVやインターネットで見たことがありましたが、広大な敷地に開放的なオフィスを直接見て経験できたのは大変貴重でした。社員でスーツ姿の方はやはりおらず、Tシャツに短パンの人もいれば、少しフォーマルな格好の人もおり、服装や勤務時間は結果さえ残せば、「Be yourself」とのことです。オフィス屋上にも緑、公園、Bar、アイスクリーム屋、オフィスにも食堂、バー、ラウンドリーまであり、近くに宿舎もあるので生活のほぼ全てがここで完結できるようになっていました。お会いした卒業生は、B to Bの交渉を担当している人で詳細は非公開のため割愛しますが、その方は同性愛を公表しており週末に開催予定だった全米最大のPride Paradeの話まで及びました。会社は同Paradeのスポンサーもしており、あらゆる価値観をサポートすると。これによりFacebook支持者や閲覧者が増えるのでビジネスとしても成り立つとのことです。その後、話はいろいろ脱線しましたが、少しぶっとんだ話が聞けて新鮮でした。これだけ楽しい雰囲気の会社で、業績も右肩上がり、すごい会社です。

San Francisco Trek - Facebook

Facebook本社内Pride Parade展示前にて。8か国から14人参加。

Accenture Strategy

Accent of Future Leaderという名前から有名な総合コンサルグループAccenture。ITに非常に強い総合コンサルグループで、お会いした卒業生は、そのグループの中の戦略コンサル部門であるAccenture Strategy出身の方でした。当然、昨今毎日耳にするAI、IoT等にグループで精通しており、業績は右肩上がりで今後も暫く続くだろうとのことです。確かに、いろいろ話聞く限り、同社は戦略では多少大手より劣るところがあるかもしれませんが、それを補って時代の潮流に乗っているように感じました。

Google

続いてGoogleは、Facebook同様と言ったら語弊があるかもしれませんが、やはり巨大な敷地にある自由な雰囲気な会社でした。会った卒業生は、B to Bの会社スポンサー探しやアライアンス関係の仕事をされている方で、一部Facebookで聞いた仕事内容と似ている点もありました。Facebookでも見受けられましたが、数学等理系が多いからかインド人、中国人、韓国人等アジア人をよく見かけました。 (余談ですが、一般的に日本含むアジアの数学のレベルは欧米の数学のレベルと比較すると、高いと言われています。MBA受験に必要なGMATというテストのレベルでもこの傾向は見受けられます)

San Francisco Trek - Google office

Google本社受付前。受付の隣に位置するものが有名な滑り台。

Code Tenderloin

SFの貧困地域で活動するNPOで、彼らのアレンジで貧しい人向けにプログラミングをシリコンバレーのIT企業からのボランティアが教えているプロジェクトがCode Tenderloin。Twitter、LinkedIn、Salesforce等がボランティア講師を提供し、スキルを習得した方の一部を採用もしているとのことです。中には、年収1,000万円近くまでもらう人もいるとか。Code Tenderloinにて、同貧困地域のWalking tourを開催し、既に累計24,000人が参加し、AirbnbみたいなビジネスをAirbnbが出る前から実施していた模様。衝撃だったのは、この貧困地域はSF市のFinancial District (アメリカ西部で最大のFinance area)から徒歩圏内だということ、清潔さや町の雰囲気、行き交う人々の雰囲気ががらりと代わり、改めて米国の貧富の格差を実感しました。

IBM

IBM社では、Digital Twins、つまり工場や製品等現実世界を、デジタル化しそのままデジタル上にリアルタイムで再現する技術やWatsonについて説明がありました。詳細は開示できないものの、卒業生曰く「IBMはold companyで学生からの人気も下がっていると耳にするが、startupの雰囲気を失わないようかなり気を遣っている」とのことです。

Pacific Gas & Electricity (PG&E)

SFベイエリアを中心として、カリフォルニア州北部地域の天然ガス、電力供給を行う企業がPacific Gas & Electricity (PG&E)。2000年のカリフォルニア電力危機時に経営危機に陥り一度倒産していますが、現在はNYSEにも上場し、通常通り運営されています。方針として、対外会社向けのコンサルや投融資は実施せず、あくまでも管理地域内の節電や発電効率向上、知事意向もあり再生可能エネルギーへの転換をはかっていると。話をされた方は、USD 6億/年もの予算を持ち、石炭は勿論、将来的には(比較的環境にいい)天然ガスも無くし、再生可能エネルギーによる地域分散型の発電に変更していきたいと説明有り。例えば、電球に”this is my light”というかわいらしいデザインのシールを住民や企業に配り、その人が責任もって消灯を担う、等いろいろなIdeaを実施している模様です。内容も伴い、非常にプレゼンが上手い方で、当方のみならず他国留学生皆一同に感嘆していました。ここまで来て改めて思うことだが、アメリカ人はパワーポイントを使わない人も多いです。最初は戸惑いましたが、確かにPPTが無い方が、気持ちが伝わり話に集中しやすいと思いました(正直、プレゼンは上手いものの回りくどく話す方も一般的に多いですが)。

Siemens (Mentor Graphics)

2016年11月ドイツSiemensがUSD 45億で電子系設計ソフトウェア開発・販売会社Mentor Graphics (MG)を買収し誕生した企業がSiemens (Mentor Graphics)。MGによるプレゼンでした。Siemensといえば、GEや三菱重工のライバルで、重厚長大なconglomerateのイメージでしたが、今は多くの投資をデータ、ソフトウェア、IoTに向けていると。冒頭で、Everything is Digitalと切り出し、印象に残った言葉として:「但し、全Dataの内0.5%しかAnalyzeされていない。戦略コンサルティングも大事だが、データがFactで大事(Accentureでも同じことを言っていた)。AmazonはWhole Foodsを買収したが、リアルな店舗というよりデータが狙いではないか。」等が挙げられます。

既に一部では起きていますが、生産ノウハウをロボット(Factory Automation)メーカーがDigitalizeし、他社へ販売・ノウハウ提供することもどんどん起きて来る、と。但し、Intellectual Propertyについて質問したところ、明確な回答はありませんでした。それはFAメーカーや弁護士が考えること、と。余談ですが、太陽光パネル製造で一時期世界一だった日本のメーカーが凋落した一つの要因は、パネル製造装置がパネル製造のKeyであり、装置メーカーが装置と製造ノウハウを他国へ展開し、パネルがcommodity化した為、ということを聞いたことあり、似た話かと思った次第です。既に各種メディアで言われていることですが、ガソリン自動車等摺り合わせが必要なものづくりは兎も角、摺り合わせが比較的必要でないものづくりに関しては、どんどんcommodity化、digital化され、差別化をはかるのがより難しくなってくると改めて実感しました。

週末 自転車、Pride Parade

SFで週末を過ごし、Trekに来ている他国留学生と一緒に市内をサイクリングし、全米最大のPride Paradeも見学しました。反Trumpのデモもあり、Facebook、Google、Amazon、航空会社等多数の企業が各々の山車にSponsorしパレードしていることで、会社のみならずSFという都市そのものが多様性を重んじており自由であると改めて感じました。印象的なこととしては、中東出身の方々が各々の国の格好でパレードしているのには驚きました。クウェートから来ている留学生が「あれを故郷でやったら、即刻死刑だろう」と。China Town, Japan Townもまわり、国際色豊かで多様な価値観を経験した週末となりました。

SF市内Pride Parade. いろいろな賛同企業の店、オフィスビルは虹色に染まっています。当方が見る限り、唯一堂々と中東の格好をして臨んだParade参加者。その心意気に沿道から拍手喝采でした。

耳にはしていましたが、SFとSilicon Valley間の通勤、渋滞は非常に大変です。1時間弱、渋滞があると2時間近く車でかかります。電車は一応ありますが、乗り継ぎや頻度が悪く、あまり利用されていない模様です。自転車通勤しているのは、SF市内からではなく会社近くに住んでいる人だけとのことです。

次回は、香港・深センTrekの内容についてお届けしたいと思います。