【台湾スタートアップ事情】イノベーションと起業家精神の風を台湾に Taiwan Startup Stadium

 addlight journal 編集部

台湾のスタートアップ事情をお届けするシリーズ。今回は台湾・台北に拠点を置くインキュベーションハブ・Taiwan Startup Stadiumをご紹介いたします。

ワークスペース内に併設されるカフェ

 

Taiwan Startup Stadiumとは

Taiwan Startup Stadiumは2014年に台湾国家発展委員会が始めた「創業抜萃投資計画」をきっかけに、2015年に作られました。主に台湾のスタートアップエコシステムを構築していくということに重点を置き、イノベーションの創造や起業家精神の育成を推進しています。

日本・香港などアジアはもちろんのこと、サンフランシスコやニューヨークなどでも活動をしており、グローバルなネットワーク構築も台湾Startup Stadiumの強みです。

ちなみに2017年5月にサンフランシスコ・ニューヨーク・ニュージャージーで行われたTaiwanRocks Tourには、InnoVEXで取材をしたAdenovo、ToiiLyra VRも参加していました。

Startup Stadiumのホリー・ハリントン氏によれば、このプログラムのチーム選出はプログラムの3か月ほど前から行われたそうで、内容は2分間のピッチのみだったとのこと。デモやプロトタイプを作成するのではなく、どのようなサービスで何ができるのかを2分間で表現するということが参加希望チームに求められました。

 

強固なネットワークと丁寧な支援

アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オーストラリアと8か国に渡るネットワークを持つTaiwan Startup Stadium。各チームとアクセラレーターや政府などを繋げる役割を各地域で担っています。外に出てグローバルに活躍していくことは非常にチャレンジングであるといいます。資金調達のさることながら、その後どのように市場へ参入し事業展開を行っていくかという点が特にチャレンジングであるといい、その部分を手厚くサポートすることを心がけているそうです。

ハリントン氏は実際に事業として動き出す段階の前に、市場のリサーチなどに対し投資することができるだけの資金力を持っていなくてはならないのだということを強調します。そのため資金調達と市場参入は特に大きな壁となるわけです。日本のように国内に強固なエコシステムや投資環境が整っているわけではない台湾や東南アジアではこうした壁を意識しなくてはならないということです。

 

 

外から見た日本のスタートアップ市場

”One of The Coolest Startup Clutures in Asia”

グローバルに活動するという特徴を持つTaiwan Startup Stadium。世界的な文脈で見た際に、日本のスタートアップはどのように映るのか。ハリントン氏は以前日本を訪れた際の経験も交え台湾と日本のスタートアップの違いを指摘します。台湾は日本に比べスタートアップエコシステムや投資環境が成長過程にあるため、各チームがグローバルな視点で事業を考えていくのに対し、日本では国内の環境が整っているため必ずしもグローバルな視点を持たなくてはならないということがありません。以前イベントで日本を訪れた際に、英語で話しかけてくれる人がほとんどいないという状況に陥ったということもあったと言います。台湾と比較した場合に日本は英語に対するアプローチがやや不足しているのではないかということ。さらに日本のスタートアップ市場の規模自体もグローバルな視点を無視できるほどの大きさではないとし、アメリカに次ぐポジション争いをアジアで行っているこの状況を打開できるのかという懸念点が残ります。

また、台湾スタートアップからしても日本の市場はそれほど魅力的には映りません。ハリントン氏によると日本の市場が外部に対して柔軟性を持っていないため日本へ進出しようと考えるチームは少ないそうです。どれほど素晴らしい市場でどれほど素晴らしいプロダクトがあったとしてもビジネスの機会になりうるかという観点で見ると変わってきてしまうということになります。

カフェの横にはイベントスペースも

 

最後に

台湾国内のスタートアップを活気づけるべく様々なサポートをしているTaiwan Startup Stadium。グローバルな視点で各スタートアップが活躍できるような広いコミュニティを構築しています。そうした中でも台湾スタートアップが世界のスタートアップコミュニティへ参加していくための課題は未だ残っており、Taiwan Startup Stadiumのような台湾スタートアップエコシステムを構築していく存在は今後も必要不可欠となってくるのではないでしょうか。

 

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