【開催報告】「起業家のためのM&Aケーススタディ-買い手側と売り手側の両体験から」(Fin Book Camp #7)

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

Fin Book campとは

「Fin Book Camp」は、株式会社アドライトが主催する、起業家のための資金調達や資本政策など、ベンチャーファイナンス全般に関するテーマを題材にした勉強会シリーズです。第7回目となる今回は、ベンチャー再生事業を手掛けた株式会社キメラの元共同創業者であり、2017年にフリークアウト・ホールディングスグループ入りを果たした、株式会社タレンティオの代表取締役である佐野一機氏をお招きし、ベンチャーファイナンスに関わるM&Aについて、買い手側、売り手側、両面における実体験に基づいてお話いただきました。予定していたチケットが事前売り切れになり増席するなど、開始前から起業家達の注目の高いイベントです。

株式会社タレンティオ 代表取締役兼CEO佐野一機氏(左)と株式会社アドライト代表取締役 木村忠昭(右)

買い手側としてのM&Aの経験

佐野氏は、ご友人である家入氏と共にベンチャー創造・再生事業を手掛ける株式会社キメラを創業しました。その後、株式会社ハッチ(現株式会社タレンティオ)からM&Aの相談を受けます。株式会社ハッチは、当時キメラ側も参入を検討していたHRTech事業を先行して展開していた企業あったこともあり、約1か月のDue Diligence期間を経て買収の決断に至ったとのことでした。買収の決め手となったのは、やはり株式会社ハッチがHRTech分野で先行しており、そのノウハウや経験を得られることのメリットが大きいという点であったそうです。この点について、佐野氏はM&Aによって時間を買うという側面を強調しておられました。

経営戦略としてのM&A

佐野氏にはその後、経営戦略としてのM&Aという観点からお話をいただきました。

佐野氏によれば、(一般論として)M&Aの経営戦略としての利点の一つは、無駄な競争を避けるという点にあるといいます。同じような事業を展開している競合同士の場合、そこに競争による摩耗が生じ成長スピードが鈍化するという事態が生じがちですが、それを避けるための手法としてM&Aを積極活用していくべきというのがその要点でした。

未上場企業同士のM&Aはどのように進むか

未上場企業に関しては、その企業価値を鑑みて合理的に取引額を決定することが難しいものですが、その点について佐野氏はどのようにM&Aを進められたのか、という点もお聞きしました。佐野氏のマインドとしては、先方の希望額はある程度尊重した上でご自身の感覚と適合するかどうかが重要、であるそうで、その値段に関してお互いにロジックを突き詰めていくという手法をとるそうです。

売り手側としてのM&Aの経験

その後、M&Aにおいて企業の売り手側としてのお話を伺いました。株式会社タレンティオの買収後、PMI(※)を進めながら、サービスが市場に受け入れられるだろうという手応えは感じていたとのこと。その中で、バイアウトの可能性については常に念頭に置いて動いていたといいます。佐野氏は(今回の)バイアウトに関してそれをexitだとは捉えておらず、タレンティオ側のサービスを洗練していくために最も良い決断とは何かを考えた結果、バイアウトという意思決定に至ったとのことでした。

(※)PMIとはPost Merger Integrateの略で、M&Aののちに然るべきシナジーを実現するために、組織と組織の経営統合を進めていくプロセスのことを指します。

バイアウト後のPMI

まずお話の前提として、経営戦略とは何かという点から始めていただきました。経営戦略とは、戦略上の目標を達成する上での施策決定及び最適資源配分のことを指していますが、しかし、スタートアップはその資源が乏しい状態から始まるため、まずは資源を獲得すること、そしてその配分を考えることから考えなければいけません。つまり、スタートアップの経営者にとってはまず資源獲得が必要になります。それを達成するための手段はいくつもあり、M&Aによるバイアウトもケースによっては非常に有効であるとのことでした。実際にフリークアウト・ホールディングスグループに入ったことで佐野氏が感じていることとしては、グループ全体のビジョンに合致してさえいれば経営戦略に関して問題が生じることはなく、むしろ必要な資源を提供してもらえることによる成長スピードの加速という効果が大きいといいます。

今後のビジョンは、アジアNo.1のHRTechの企業に成長させること。現在の日本のHR業界をみると、まだまだ改善の余地は大きく、データベースの洗練やアナリティクスといった分野でタレンティオ社としては貢献していきたいそうです。

参加者の皆さまから多種多様な質問が飛び交う会場

質疑応答

質疑応答では、会場の皆様より多くの質問が寄せられました。

買収側の経験として、相手側の資本構成はどうであったか。資本家の説得はどのようにしたか。ベンチャーにおけるM&AのDue Diligenceはどう行われるか、バイアウト時に従業員に対する説明はどうしたか、決算指標を公表する際に気を付けることは何か、日本の起業家のファイナンスのリテラシーについてどのようにお考えなのか、ファイナンスの勉強はどのようにしたらよいか、など、将来的にエグジットを考えられている参加者の方も多かったことから、佐野氏のリアルな意見を聞こうと突っ込んだ質問まで活発な議論が繰り広げられました。モデレーターの弊社木村からも、実際の経験事例などを踏まえたベンチャー企業のM&AにおけるTIPsの共有や、起業家のファイナンスリテラシーを高めるために弊社主催イベントシリーズFin Book Campを通じて貢献していきたいとのビジョンの共有もあり、インタラクティブに進行しました。

最後に

様々な会社を経営してきた経験を持つ佐野氏ですが、バイサイドとセルサイド、双方の立場からM&Aについて語っていただけたのは非常に貴重だったのではないかと思います。また、佐野氏はファイナンスを非常に重視されており、M&Aに関わる具体的な企業価値指標等についても講演の中ではお話をいただきました。その中で、M&Aに向けてファイナンスを徹底的に勉強し相手と同じ立場で交渉を進められるように準備をしていたエピソードなど、スタートアップ経営者としての覚悟とただならぬ努力を垣間見ることができました。

いかがでしたでしょうか。未上場企業のM&Aは日本国内でも年々増加傾向にあり、今後も経営手法のひとつの選択肢としてさらに注目が集まっております。「Fin Book Camp」では、ベンチャーファイナンスに精通したベンチャー経営者をはじめ、弁護士や会計士、CFO、投資銀行や証券会社などのプロフェッショナルをお招きして、経営現場のリアルをお届けするイベントを今後も展開していきます。

本記事やベンチャーファイナンス、または弊社のスタートアップ育成サービス内容に関することやその他お問い合わせがございましたら、ぜひこちらからお気軽にご連絡くださいませ。