AI分析でリスクを管理 Adenovoの提案するカーファイナンスのソリューションとは

 addlight journal 編集部

InnoVEXTaipei 2017に出展していたチームをピックアップしていくシリーズ。今回はカーファイナンスのリスクをAIで分析するというサービスを提供しているAdenovoにインタビューさせていただきました。ブースに置いてある真っ赤なスポーツカーが人目を惹きます。

カーファイナンスというだけあってモーターショーさながらの演出(中央・CEO・劉氏)

年間3,000万件もの相手にされないケース

AdenovoのCEO 劉晉良氏は現在のカーファイナンス事業を興すに至った経緯をこう話しました。

「1社目の会社を売った後、とあるタクシードライバーと出会ったんだ。そのドライバーはローンのことについて心配していた。病気になる可能性があり、そうなった場合車は取り上げられてしまうと話してくれた。タクシードライバーはもちろん多くの人は大変な仕事に追われているのに、なぜ銀行はそれを助けないのか。」

誰にでも襲い掛かる恐怖への対抗策を銀行が講じない。その理由を次のように明かす。

「銀行員は助けたいのに助けることができない。もし自分が銀行員だとしよう。20億円の案件を担当したいと思っても同時に起きる200万円の案件には興味がないわけだ。年間に10件程度しか担当することはできないのだから誰もが10億を担当したいと思い100万は気にもかけない。」

額の大きさの差で相手にされないケースに着目した。

 

「実のところどの銀行も担当しないようなカーファイナンスの案件はロシアと中国で毎年3000万件もある。」

 

 

Adenovoの提供するソリューション

AdenovoのサービスはAIを用いて自動車会社や金融機関の手助けをするというもの。このサービスのおもしろいところは判断基準が”人”であるということで、クレジットカードの信用情報などから判断するのではなく、その人がどのような職についているのか、どのような学歴なのか、普段の生活スタイルはどのようなものなのかといった情報を分析していきます。この生活スタイルへのフォーカスを当てた理由は劉氏自身の経験から、銀行がビジネスに対しては興味を持つにもかかわらず、実際の生活そのものが融資に影響していないということに気付いたのがきっかけだったとのこと。また1つの特徴として車そのものにデバイスを搭載することによって行動スタイルを早く分析することができるというものがあります。

劉氏に一つの例を挙げてもらいました。

「特に何の問題もなく生活を送っていたら毎日同じ生活スタイルになる。例えば仕事に行ってスーパーに寄って家に帰って、また仕事に行ってスーパーに寄って家に帰って・・・という感じに。ところがあるクライアントが5日間仕事に行っていないということに気付いた。どうしたのかと電話をしてみると、離婚をしてしまい仕事に行くのも嫌になったと落ち込んでいた。このケースでは事情が急に変わったのだからとお金を貸すことができたが、従来の方法だったらそうはいかない。5日間で気づいて対処できたが、5か月かかっていたら全てが手遅れだった。」

劉氏はAIを導入することのメリットとしてこのスピード感を挙げていました。危機を早く察知することにより行動することができ、これによりリスクを軽減することが可能だということです。他にもAIによる簡素化により、それまでは90日間かかっていた審査が10分に短縮されるようになったと言います。

今後は日本市場も狙っていきたい

現在のAdenovoはロシア、中国、台湾を主な市場としています。9人のエンジニアを抱え、AWSやGoogleなどのサービスを用い開発を行っているそうです。
将来の展望について劉氏は、日本の自動車市場はその大きさからしてもAdenovoにとっての大きな市場になり得るといいます。また大きな金融機関があるというのも魅力だそうで、ロシア、中国、その他アジアといった海外市場に強い日本のメーカーや金融機関を助ける働きをしたいとお話しいただきました。
同じくアメリカにも大きな市場があり、次のステップはアメリカ市場を狙うことだといいます。劉氏によると92%もの国民がカーファイナンスを使っており、ここ数年は貸倒率が高まっているということなのでまさにAdenovoのソリューションがこの状況を大幅に改善してくれるのではないでしょうか。日本アメリカを主なターゲットとしたマーケティングは3か月以内に取り掛かるとのことです。

最後に

Adenovoのサービスは単にAIを使いリスク計算を行うというだけではなく、社会に対して大きなインパクトを与えるものになりそうです。
Bloombergの記事によると、サブプライム自動車ローンの貸倒率が高まっているとのことで、第2のサブプライムローンになるのではないかとも言われています。こうした大きな問題をスタートアップが解決していくという時代に突入しているのかもしれませんね。

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