1月18日、「Tokyo Startup Dating 10th Edition」が前回と同じくLIFULL Table(東京・半蔵門 LIFULL本社1階)にて開催された。ユニコーンファーム代表・田所雅之氏が始めた本イベントには、弊社アドライトも第8回目より共催として参加している。記念すべき第10回目の今回も恒例のピッチコンテストやパネルディスカッションなど、「最小の時間で最大のネットワークを構築する場」として盛り上がりを見せた。
はじめに、株式会社アドライト代表・木村がファシリテートのもと、株式会社アトミックスメディア代表取締役CEO、Forbes JAPAN編集長、そしてD4V Founder & CEO高野真氏が基調講演をおこなった。
2014年から3年間、Forbes Japan編集長の傍ら、エンジェル投資家として20億円の投資をおこない、2016年合同会社を設立したという高野氏は金融業界出身。自身のお金をベンチャーに投資しようと思ったきっかけは「大学の後輩が起業し、面倒を見たいと思った」から。
日本は少子高齢化、マクロ的に見るととても厳しい。やらなければいけないのは新規産業の創造。少しでも役に立ちたいという思いからベンチャーの育成につながっていったという。
投資は「人間力の高さ」で決める
投資するかの判断をどこに置いているか聞かれると、「人間力」と高野氏。「ラウンドが上がるほど数値やビジネスモデルが重要となってきますが、はじめはビジネスモデルなどすぐ崩れてしまう。だから、人間力を大切にしています」
高野氏は、こう続けた。「我々は社会に育てられている。だから社会貢献したい。その面からも人を見ています。世界一になって日本を救いたいという人はいますが、それはどうかと思う。ミッションは高いけれど、それをやりきる力がないのではと思う。具体的なプロセスを導き出さないといけない」
応援する基準も3つあり、「志が高く、難しいけれどできるかもしれないもの」「そのプロセスがしっかりとしていて、計算されているもの」「そのうえでの発言であり、やりきる力がある人」という。
Forbes Japanが毎年12月におこなっている起業家ランキングは、審査員10人がガンガンやり合っていて決めているという。そこで見るのはCEO力に加え、チーム力。CEOがどれだけそのチームをまとめられるかがポイントなのだとか。
日本の起業家、ベンチャーキャピタルに足りないもの
「日本の起業家に足りないものがあるとすると?」と聞かれると、孫泰蔵氏を例に挙げた。「彼は自身でも成功し、下を育てている。そういう人がいるからベンチャー業界はみんなが仲良くなる。ただ、最近の起業家は横の広がりは全然ない。大企業や海外とのやりとりもほとんどない。それでは視点が偏ってしまう」と苦言を呈した。
会場からも質問が飛び交った。
できる社長、できない社長の特徴を聞かれると、「取るべきでないリスク(金使いが荒い、不適当な行動、セクハラなど)を取る人はダメ。ビジョンをしっかり持っていて、それのpathを持っている人」。
日本のベンチャーキャピタルは日本に閉じているように思うが、彼らがしなければいけないことについては「アイディアの実現」を挙げた。高野氏曰く、現在コンサルティング会社・IDEOと組み、いいアイディアはあるけれどもビジネス化に苦労している学生のために学生ファンディングを進めている段階という。
「もっと海外マーケティングに力を入れていく必要がある」。高野氏の発する重みのある言葉に、会場も真剣に耳を傾けていた。
世界中の無料Wi-Fi自動接続、スマホ用OS開発—スタートアップ10社ピッチ
後半はスタートアップ10社によるピッチが繰り広げられ、得票数の結果、世界中の無料Wi-Fiに自動でつなげるサービス「TownWiFi」が選ばれた。現在、250万ユーザが利用し、3月までに世界33カ国で現地の人も旅行者も使えるようにしていくという。
前回のStartup Dating Vol.9では無料SIMを提供するBridgeがピッチを行った。Town WifiはBridgeのFreeWi-Fiの少なさを無料SIMで解決するというソリューションに対し、Wi-Fiそのものに対してのソリューションを提案。
セキュリティ対策への明言は聞こえてこなかったが、こうしたチームが連続して出てくる点からも、Town Wifiが掲げる「通信料をゼロに」という世界もそう遠くはないのかもしれない。
他に登壇したスタートアップは以下のとおり。
Keychain
Keychainはヒト、モノ、デバイスが安全に繋がるテクノロジーを提供する。近年のIoTの発展と共に語られるのがIoTセキュリティの問題だ。心臓ペースメーカーや原子力発電所といった人命に関わるセキュリティ、他にもなりすましやフィッシャーといった致命的な問題をブロックチェーン技術で低コスト且つスピーディに解決する。
School With
英語学習環境は変化しているのに英語話者の質が変化していない。School Withは英語の学習時間の少なさに着目し、世界1,000都市、会員数3万人という巨大留学プラットフォームを構築。現在は世界のどこで学ぶかを共に考えているが、今後は世界のどこで働くか、どこで暮らすかといった部分にもフォーカスしていく。
Migidonari
大学生の右隣について「就活という言葉を10年後に求職という言葉に変えたい」というMigidonari。就活の現状の問題を打ち消すため、学生に企業でのコミット経験やコーチングを提供することで職業観を培い、質の高い職業選択を行えるようサポートしていく。
SPLYZA
アマチュアスポーツマンの「もっとうまくなりたい」をサポートするSPLYZAは、アマチュアスポーツ向け分析アプリを提供。時間が制限される中での効率的な分析を選手にも分担することでコーチの負担を少なくし、選手の意識を高める。現在、サッカーのなかでも高校全国大会レベルに絞っている。選手のトラッキングの自動化を開発しているという。
デジタルアイデンティティ
デジタルアイデンティティはその名の通りKYC(顧客確認)のサポートを行う。提供しているTRUST DOCKというAPIはデジタル上の本人確認を行う。決済APIのように本人確認時にもニーズがあるという。最近では買取アプリのCASHや会議室シェアのSpaceeなどで導入されている。
アメグミ
スマホ用OSを開発。スマホの現在のモデルは基本的に買い替えで、OSの更新が過剰もしくは全くされないという現状にフォーカス。ビジネスモデルを変更し生産販売は大手と提携。アップデートを最低限に抑え、スマホが1台30~50ドル程度で手に入れられるよう価格破壊を狙う。既に試作機は完成しており、2018年はより前進する見込みだ。
アントレプレナーファクトリー
企業、起業家向けe-learningサービスを配信。自身のVCでの経験で、知っていれば防げた失敗などをしないように教育コンテンツに舵を切った。既に1,000以上のコンテンツを作成し、田所氏も出演しているとのこと。今後のe-learning市場の拡大や機械学習などのコンテンツが追い風となっているようだ。
デリバリーサポートシステム
サプライヤーと運送業者、ホテルや病院といったリネンサプライマーケットの一元化を実現する。在庫管理や売上予測に加えて、サプライヤー同士、顧客同士のネットワークにも着目する。将来的にはフードサプライヤーや医療品卸とも提携をしていきたいとのこと。実際にエストニアの医療業界にパートナーもできている。
ピッチ後もいたるところで積極的なネットワーキングが見られ、会は盛大のうちに幕を閉じた。