イノベーターは社会を変革できる—韓国・D.CAMPが目指す支援の理想像

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部
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朝鮮王陵として世界遺産にも登録されている宣陵・靖陵。そこから道路を挟んで反対側に位置する「D.CAMP」は、2012年韓国・テヘランバレーの中でも最も早く生まれたスタートアップコミュニティの1つとして知られている。Banks Foundation for Youth EntrepreneursというNPO財団によって運営されている。2012年、韓国国内18の金融機関が協力し、同財団設立に至った。D.CAMPのDは“Dream”から取り、“Dynamic”や自主性を重んじるという意味での”Do it yourself”といった意味があるという。

テヘランスタートアップベルトの先駆者

D.CAMPはアーリーステージのスタートアップを主な対象とし、投資やインキュベーションサービス等展開している。オンラインサービスも手がけており、登録スタートアップ数はなんと4,000近くにも上る。スタートアップサイドだけでなく投資家等も含めたオンライン登録済の総メンバー数は10,000人を超えるため、他のスタートアップコミュニティにはない大きな特徴の一つだといえる。

現在でこそ多くのスタートアップコミュニティが江南区に集まっているが、設立当時の江南区にはほとんど存在しなかったという。D.CAMPがスタートアップコミュニティ創成期において重要な役割を果たしたということは言うまでもない。

コワーキング、ピッチイベント、シナジー創出を一気に実現

 今回、グローバルパートナーシップリーダーのSonia Lee氏にD.CAMP施設を案内してもらった。

4階のコワーキングスペース

4階のコワーキングスペース

D.CAMPは2階から6階までの5フロアで構成されている。2階がラウンジとなっており、カフェテリアラウンジや有料のOfficeスペースが設けられている。3階はスタッフオフィス、4階にコワーキングスペース、5階が育成プログラムのスペース、そして6階にイベントスペースとそれぞれフロアごとに役割が分かれている。

4階のコワーキングスペースでは40名が作業可能となっており、チャットボットアプリを開発しているチームや、不動産情報を管理するサービスを提供するチームが利用していた。5階の育成スペースには月末に行われるピッチイベントD.DAY等通じて選抜されたチームが所属し、投資家や企業、メディア等とのシナジー効果を狙う。6階はD.DAYやD.TALKといった様々なイベントを行う200人近く収容可能のスペースとなっている。

コワーキングスペースで作業を行い、ピッチイベントでプロダクトを発表、そこから投資家や企業等と連携といった一連の流れをD.CAMPで完結させることができるのは大きな特徴の一つだ。これらを実現できるのも巨大なスタートアップコミュニティを築け挙げているからだと言える。

91億円のExit経験

D.CAMP内にある200人収容可能なスペース。ここでスタートアップがピッチを繰り広げている

D.CAMP内にある200人収容可能なスペース。ここでスタートアップがピッチを繰り広げている

Sonia氏によると、D.CAMPではこれまで50ものデモデイを開催。現在うまくいっているスタートアップの数は240チームにも上るとの答えが返ってきた。小さなスタートアップを中規模のスタートアップにスケールさせていくのがD.CAMPの狙いの1つでもある。そのためには自ら投資していくだけでなく、エンジェルやVC、企業等から投資を引っ張ってくる必要もある。

これまでの歴史の中で最も成功した例として、昨年NEXONの持ち株会社であるNXCによるKorbitの買収を挙げた。Korbitは2013年設立の仮想通貨取引のスタートアップで、ビットコインに世間が目を向ける前から仮想通貨の取引所を開設し、韓国で一番最初に誕生した仮想通貨取引所となった。KorbitはNXCに買収される前もSKやソフトバンクなど大手企業からの資金調達に成功しており、最終的には91億円での売却となった。

スタートアップをオープンにつないでいく

D.CAMPのビルの中にはアメリカ・サンフランシスコを拠点とする動画広告スタートアップVengleも入居する。彼らともイベントを開催し、アプリ開発チームのグローバル進出を手助けするコンペティションを開いたり、合同でメンタリングを実施したりした。スタートアップサイドや周辺環境にも間口を広く開く理由として、「より社会とのつながりを持たせ、社会に反映していきたい」とSonia氏。そのためD.CAMPはスタートアップに関する興味を持つ人であれば、立場に関わらずオープンであるという。

こうした文化で育ったチームは卒業後もそれを引き継ぐ形で、Google CampusやWeWorkといったコワーキングスペースに移籍していくケースも多く見受けられることから、Sonia氏は「育成サイド同士のつながりも大切にしたく、Startup AllianceやGoogle Campusと合同でD.PARTYのようなイベントを企画していきたいです」と話す。

D.CAMP グローバルパートナーシップリーダー、Sonia Lee氏

D.CAMP グローバルパートナーシップリーダー、Sonia Lee氏

今後、グローバルな働きかけとして、2018年3月にシンガポールで開催されるMoney20/20というFinTechやファイナンス分野のカンファレンスにも参加するという。

「Innovaters can innovate society.(イノベーターは社会を変革できる)」
Sonia氏がふとこぼした一言には、D.CAMPの大切にする思いが込められていた。