ICT特化のアクセラレータ―「mashup angels」はイノベーター集団だった

 addlight journal 編集部

ソウル・江南区にはテヘラン路と呼ばれる大通りがある。イランのテヘランが由来となっており、友好の証としてその名がつけられた。そのテヘラン路を中心にITベンチャーが集まったため、テヘラン路周辺地域はテヘランバレーとも呼ばれる。
ヨクサム駅から歩いて数分、そんなテヘランバレーの一角にmashup angelsは位置する。

mashup angelsが正式に発足したのは2014年。というのも、代表パートナーTaekkyung Lee氏によれば2014年以前からもエンジェルネットワークはある程度形成していたのだという。発足後はICTに特化したアクセラレーターとして、Batch1から2017年のBatch4までで50チームを超えるスタートアップがプログラムに参加した。その中にはLINE&NAVERに買収された名刺管理ソフトを提供するチームもある。

個性溢れる投資のプロ集団

代表のTaekkyung氏はDaum Communication(現在はカカオと合併)を創業し、CTOとして携わった。Daumではコスダックに上場させ、事業を韓国通販大手・GSホームショッピングにも売却するなどの経験を持つ。また韓国初となる国内アクセラレーター・Primerにも参画し、現在は延世大学校の兼任教授、国内VCのパートナーでもある。

mashup angelsの驚くべき部分は、他メンバーもTaekkyung氏同様に様々なバックグラウンドを持っているということだ。

Junghee Rye氏は本サイトでも取り上げたテック系スタートアップに特化したアクセラレーター・FuturePlayの創業者であり代表でもある。2006年に設立したOlaworksでは、サムスン、LG、HTCなどの大手メーカーに画像認識技術を用いたソリューションを提供し、2012年に韓国国内の企業として初めてIntelに買収された。

Min YJ氏はDaum Communicationで19年働いた後、社内ベンチャー育成制度を立ち上げる。人工知能を用いたスケジュール管理アプリを提供するKonolabsを創業し、現在もCEOを務めている。

Taekkyung氏も参画していたPrimerで経理や会計に携わっていたSangyuk In氏は、IPO担当者として資源開発を行うSi-resourseをコスダックに上場させた経験を持つ。Primer設立時より内部管理や投資相談などを請け負い、スタートアップと繋がるきっかけを持った。
総合商社である現代で勤務したのち、サムスンSDSでIT関連の業務に長年従事していたTaekhoon Lee氏は、Sangyuk氏がIPO担当であったSi-resourseでも経営統括本部長を務めた。その後現在は、Sangyuk氏が法務関連の業務を行うHubigを運営している。

2016年までは上記5人がパートナーとして投資をしており、前述の通りICTに強いという特徴を持っていた。しかし昨年さらに2名のパートナーが加入し、より幅広い分野への投資が可能になったという。

Robin Kim氏は現代キャピタルなどの金融機関からDaum Communicationへ移り、そしてその後投資家としてイエローモバイルなどへ投資した。Youngjil Lee氏はCom2usの創業者であり、その後ゲームビルに売却。2017年11月には新たにモバイルゲーム市場をターゲットにした企業をソウルに設立。この2人の加入により金融、通信、ゲームなどに関して投資のハードルが下がったという。

豊富なネットワークでスタートアップを成功に導く

mashup angelsは主にシード期のスタートアップを対象としている。シード期を対象にしている韓国のアクセラレータは他にもFuturePlayやSparklabs、Primerが挙げられる。なお本サイトでも取り上げたNAVERが運営するStartup Allianceはプレシード期を対象としている。まずはスタートアップをサポートし、成長を促す、ネットワークを用いてシナジーを創出するという点が第一段階となる。次に専門家によるメンタリングで事業のスケールや安定をさせるという段階に移る。最終段階はmashup angelsの持つグローバルなネットワークを通じて、スタートアップがアジアやアメリカをはじめとした舞台で活躍できるようにしていくという。

Taekkyung氏はmashup angels以外にもBig Basin Capitalのパートナーを務める。Big Basin Capitalはシリコンバレーを拠点とする、韓国とアメリカのアーリーステージのスタートアップを対象とするVC。ステージが変化することで投資そのものへの認識に変化が生じるとのことで2つのフィールドで投資をすることには大きな意味がある。このように複数のフィールドを持っているからこそ、ポートフォリオが一貫性を持ち、各チームの成功へとつながるのではないだろうか。

Taekkyung氏によると現在のバッチ(バッチ4)は終わったばかりでわからないが、これまでのプログラムは概ね良好といえる状況にあるという。バッチ1~3に参加したチームのおよそ83%が資金調達もしくはM&AによるEXITを果たしている。またチームの内訳は20%強がAI、ビッグデータ、IoTに関わるものとなった。

これまでの総投資額は70億ウォンを超え、冒頭で挙げたLINE&NAVERによる買収など回収事例も次々と出てきている。バッチ4でもHealthybrosなどメディアに取り上げられるチームがいくつか出てくるなど活発な動きが目立つ。新メンバーを2人迎え勢いをつけるmashup angelsが目を付ける次なるチームに期待がかかる。

日本からの参加ももちろん歓迎とのことだったので、興味があるチームは次回バッチへの参加を検討してみてはいかがだろうか。