デザイン思考が支えるイノベーション重視の経済とは

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部
デザイン思考が支えるイノベーション重視の経済とは-Japan Tech Leaders Summit 2018 Spring

ブロックチェーン、AI、ロボティクス、自動化を目にしない日はないほど世は次世代技術で溢れ、ものすごいスピードで進化している。翻って、こうしたトレンドを理解し、豊かな社会にするために何ができるか考える時間を設けてないことに気づく。4月6日、弊社アドライトと自動化技術を中心とした先に投資を行うMillenium 7 Capitalとの共催のもと「Japan Tech Leaders Summit 2018 Spring」を開催したのは、そのような背景がある。

大手企業、VC、スタートアップ等総勢130名にお越しいただいたが、グローバル視点を意識したこともあり、海外からの参加が半数以上を占めていた。我々独自で掲げた「Industry 5.0」をテーマに、今後イノベーターが意識していくべき技術的シフトやビジネスシフトに対する議論の場として盛り上がった。本記事含め、3回に分けそのもようをお届けしたい。

イノベーションの民主化

最初のセッション「Changes in Innovation」に登壇した内閣府 知的財産戦略推進事務局長・住田孝之氏は、「20世紀(供給中心)から21世紀(需要中心)へのイノベーションを巡る環境の変化」と「増加するデータ、特にIoT、ビッグデータそしてAIにおける情報技術の急激な拡張により始まったイノベーションの民主化という変化」に触れた。

内閣府 知的財産戦略推進事務局長・住田孝之氏

内閣府 知的財産戦略推進事務局長・住田孝之氏

新しい経済においてイノベーション、とくにオープンイノベーションがさらに重要な駆動力になることに加え、「供給サイドで簡単に多くのデータを集められるようになり、需要サイドのデータを取り込み、需要者を何らかの形でそのプロセスに参入させることがイノベーションには必要になってきています。これが『イノベーションの民主化』と呼ばれるものですが、そこではユーザーのニーズと供給サイドのデータ、技術、人材との組み合わせが適切である必要があります」と説いた。

住田氏は、ビジネスや社会全般においてデザイン思考へのニーズが増大することで、付随した新サービスや製品、ビジネスモデルが登場し、ユーザーに選ばれ普及すればイノベーションに昇華するとしている。

「我々は20世紀の象徴でもあるプロパテントの時代からデザイン思考が支える21世紀のイノベーション重視の経済へと進化しているのです」

また同氏は、政府がイノベーションを先導する役割は減少し変化しているとし、最も重要なのは「企業がイノベーティブな発想やアプローチをしやすい環境を作ること」という。「より多くの企業に、将来の変化について共有したうえで、トライ・アンド・エラーの姿勢でリスクを負うことを恐れず挑戦する姿勢を持ってもらいたいです。こうした行動の変化は、より多くの人や日本企業がイノベーションが主役となる未来に羽ばたくことを後押しするのです」と締めくくった。

多様化と新しい技術への適応を求められる日本

住田氏の講演ののち、オーディエンスと全7セッションの登壇者を交えたラウンドテーブルがなされ、いかに人材を有効活用し、組織構成を変えるのか話し合われた。

デザイン思考が支えるイノベーション重視の経済とは-Japan Tech Leaders Summit 2018 Spring

例えば、日本では2016年に外国人労働者の数が過去最大の約108万人となり、今後も増える可能性がある点から職場における多様化の必然性を訴えるチーム、労働者達は仮想現実のような新しい技術へ適応できるようにダイナミックになる必要があるという見解を示すチームがいた。

興味深いデータを提示したチームもあった。日本では42.5%の労働者がデジタライゼーションに対応できるだけの設備が整っていないと感じているというのだ。これは全世界の基準に照らし合わせても平均以下という。

さらに、リーンスタートアップや実用最小限の商品(MVP)といったスタートアップエコシステムからビジネス発展モデルにおける幅広いアイデア採用への需要が社会全体にあるとし、世界共通問題に向けた協力もますます広がるだろうという意見もあった。

世界的なデータビジネス戦略の攻略法がないからこそできること

なかでも盛り上がったテーマを少し掘り下げていきたい。

AIやデータ保護は発表者から繰り返し発せられたキーワードだった。日本では2017年、改正個人情報保護法が施行された。国境を超えるサードパーティによる個人のビッグデータの開示と共有に関する条件と制約についてまとめられているが、そのうえで何ができるかという内容が多かった。

デザイン思考が支えるイノベーション重視の経済とは-Japan Tech Leaders Summit 2018 Spring
  • AIやブロックチェーンといったテクノロジーにより、ビッグデータの価値はユーザーのより確固たるセキュリティを求める声とともに高まるとみられている。
  • セキュリティの他にも、AIやビッグデータは製品、サービス反復のサイクルを短くし、ビジネスの市場におけるGo-to-marketの速度を劇的に加速させる。
  • 計算力の上昇、デバイスやセンサーの縮小そしてAIやアルゴリズム主導の意思決定の出現とともにビジネスの進行速度は加速するだろう。

「私たちはインターフェースなしに沢山の道具が作れるようになることをAI発展の次のステージだとみなす」。機械やその他デバイスとのやり取りをごくありふれた日常の一部分に落とし込むということだ。

別の発表者は自由貿易協定の国境を超えてデータの共有を促進する面と、一国の中に個人情報を留めておきたいという政府間でも矛盾が起きていることを例に、「世界的なデータビジネス戦略の攻略法はない」とし、データの活用や地方化を訴えた。

日本が自動化と相性のいい理由

日本では政府の後押しで自動化社会「Society5.0」が啓発され、高齢化や人口減による慢性的な人手不足、働き方改革による業務効率化の波とともにRPAへの需要は高まるばかりだが、「ここまで自動化が推奨されている国も珍しい」と海外からの参加者は言う。

たとえば、自動化先進国・アメリカは複雑な思いで捉えている。法廷最低賃金の引き上げや不法移民の取り締まりで自動化へのシフトが急速に進み、ブルーカラーや接客を中心としたサービス業は雇用を失いつつある。一方、テクノロジー関連の仕事は急増していることから、政府や民間はスキルアップ支援を行い再雇用に努めているのが実情だ。

デザイン思考が支えるイノベーション重視の経済とは-Japan Tech Leaders Summit 2018 Spring

日本の自動化は決してこうした側面だけでなく、技術力の高さや目利きもあることが大きい。ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)に関する研究が進み、HISや楽天といった消費者と深い関係を持つ企業の自動化プロジェクトが推進されている。ソフトバンクはBoston DynamicsやSCHAFT Inc.のようなロボティクスのスタートアップを買収した。さらに、世界の多くの産業用ロボットメーカーは日系企業でもある。実際、日系メーカーは世界の産業用ロボットの52%を供給している。

一人の発表者はセンサーの能力に関する課題(言語や画像に関するものを含む)を挙げたが、その理由は、自動化、教師なし学習、そしてアルゴリズムといったものを反復的タスクのための解決策として見なしたためである。こうした解決策が進めば、人々は創造性に注力できるようになるのかもしれない。

次につづく——

当日のもようをおさめた動画(1分ver./3分ver.)は以下よりご覧になれます。

1分ver.

3分ver.

関連リンク

【動画付き】Japan Tech Leaders Summit 2018 Springを終えて

 

日本におけるブロックチェーンの未来

RPA、AI、IoT―加速する自動化シフトで近い未来に起きること