日本におけるブロックチェーンの未来

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

ビットコインの論文が 2008年に発表されたとき、ブロックチェーンがビットコインの公開通帳をはるかに超え、現在のようなイノベーションが起こるとは誰も想像していなかった。ブロックチェーンはファイナンスと保険、小売業とサービス業、公衆衛生とエネルギー、そして電気通信とメディアといった様々な分野において極めて重要な発明である。
このような使用例がまだ成長段階である一方で、カギとなる特徴はスマート・コントラクトによる自動化だ。スマート・コントラクトとは、自律力もしくは独立執行力のある当事者間での契約で、様々なシステムや企業全体でさえも監督なしで運営することを可能にしている。

スマート・コントラクトはまだ一般的には普及していないかもしれない。しかし、日本の企業が既に共同でブロックチェーンプロジェクトを実験的に行っていることからも、これらが自動化時代の特徴的な性質になることが予想できる。

共同ブロックチェーンの採用ブーム

日本では、ブロックチェーンが強い追い風を受けて成長している。今年のみで70もの銀行やマネジメント・コンサルタント会社といったレガシーな企業や、ブロックチェーン・スタートアップが日本ブロックチェーン協会設立のために提携を図った。

ブロックチェーン画像

仮想通貨を超えて、ブロックチェーンは経済、保険、小売り、エネルギーといった縦断的な応用法も見出している。日本のブロックチェーンへの熱意はその技術を内部に取り入れることや、国内外のスタートアップなど第三者とのパートナーシップを使ってその発明を外部から調達することにもある。

たとえば、LINEは独自のブロックチェーン・プラットフォームを立ち上げ、NTTデータは新しいブロックチェーン基盤のソリューションを作り出すため、スタートアップや世界中のパートナーと協力することに着目している。一方、三菱UFJフィナンシャル・グループは2018年前半、MUFGコインというブロックチェーンベースの新デジタル通貨の社内試験利用を開始した。金融サービスの大手、SBIホールディングスの出資子会社は1月、320億円相当の有望なブロックチェーン・スタートアップ向けの基金を設立した。

ブロックチェーン最前線

スタートアップ分析会社・CB Insightsは、2012年から2017年の間、SBIホールディングスを世界のブロックチェーン投資会社の中でNo.1とランク付けた。このことからも「56%の日本企業がブロックチェーンの活用を検討している」(日本経済新聞)ということは驚くべき事実ではない。
そして、日本の経済取締役である経済産業省はこの技術を受け入れ、勢力拡大を許している。例えば、約350万人の日本人が仮想通貨を運用していると推定され(Fortune)、この人数は間違いなく世界最大である。
さらに、政府もブロックチェーンの風潮に便乗しており、法務省や国土交通省での現行の裁判ではブロックチェーン使用した土地や財産の管理や中央貯蔵を行っている。

JTLS写真

4月6日、株式会社アドライトがおこなった「Japan Tech Leaders Summit 2018 Spring」内のセッション「ブロックチェーンは現存のビジネスモデルや縦断的産業にどのような創造的破壊をもたらすか」に、政府CIO補佐官で日本の暗号通貨の第一人者のひとり、Japan Digital Design株式会社(以下、JDD) CTO・楠正憲氏、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、NTTデータ)技術革新統括本部 システム技術本部 方式技術部課長 丸山智浩氏、シリコンバレーのスタートアップ、Mobius CTO・Cyrus Khajvandi氏が登壇。ブロックチェーンを使った取り組みや可能性について触れた。

オープンイノベーション+マルチセクター・コラボレーション

2017年会計年度における売上2兆円越えのシステムインテグレータであるNTTデータは、積極的にブロックチェーンに向かっている一社と言える。ブロックチェーン先導の同社の世界的なコラボレーションには、スペインやイタリアのグループ会社も含まれている。
スペインでは、同社グループ会社のメンバーが同国一流マルチセクター・ブロックチェーンコンソーシアムAlastriaの立ち上げ及び運営に協力していると丸山氏は語った。2017年設立のAlastriaは、銀行や電話会社、大学、スマートシティそしてブロックチェーン・スタートアップ等70の団体によって構成されている。

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 技術革新統括本部 システム技術本部 方式技術部課長・丸山智浩氏

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 技術革新統括本部 システム技術本部 方式技術部課長・丸山智浩氏

「ブロックチェーンを使い、KYC(顧客確認)のデジタルシステム発展させることでマネーロンダリングを取り巻く問題を解決することがコンソーシアムの初期の目的でした」と丸山氏。もしこの試みが成功すれば、ユーザーが製品やサービスを使うたびに自身の個人情報を共有する必要はなくなるだろう。
「一度プラットフォームに情報が記録されれば、個人識別は以前よりもはるかに簡単になり、官民両方のグッズやサービスをタイムリーかつ、安全な方法で提供できるでしょう」(丸山氏)

オープンイノベーション+サプライチェーン

マルチセクター・コラボレーションに加え、ブロックチェーン・スタートアップとの連携による新たな取り組みをNTTデータは重視している。
2018年初頭、同社は、シリコンバレーを拠点としサプライチェーン・マネジメントを主に扱うブロックチェーン・スタートアップであるSkuchain社との連携を通し、日本の製造業向けプラットフォームの開発を行う意向を発表した。

「Skuchainはブロックチェーンを用い、トレサビリティを強化することを目標としています。既に弊社は目標に向けた投資を行っています」(丸山氏)
1月のプレスリリースによると、NTTデータとSkuchainは「コンセプトプロジェクトの調査を実施し、教育的なプログラムの提供によって 2020年までの年度会計売り上げを50億円にすることを目標」としている。しかし、サプライチェーン・マネジメントはまだまだ始まったばかりだ。

また、NTTデータは、銀行、保険、製造業、IoT、エネルギーそして公共分野と様々な領域ブロックチェーンの取り組みを展開している。(NTTデータ

オープンイノベーション+FinTech

三菱UFJ銀行の子会社であるJDDは、フィンテック分野でのブロックチェーンの可能性を模索することに積極的である。

Japan Digital Design株式会社 CTO・楠正憲氏

同社のCTO・楠正憲氏は、日本におけるブロックチェーンの歴史と仮想通貨の社会的受容について触れた。「今のところ、ビットコインのような暗号通貨を使っての国境を越えた取引は、ブロックチェーン技術の最も有効な活用例と言えます」
振替や暗号通貨をはるかに超えて成長したものの、ブロックチェーン技術はまだまだ発展途中だ。JDDは実証実験段階を超える新しいチャンスを探している。

日本企業+スタートアップまたはサードパーティー・ブロックチェーンプロジェクト例

企業 パートナー・テクノロジー 応用法
株式会社日立製作所 リナックス・ファウンデーション/ハイパーレジャー・プロジェクト 金融イノベーションラボ:ビッグデータ分析、AI・機械ラーニング、ブロックチェーンフィンテックサービス戦略的コンサルティングサービスに重点を置いた研究開発機構
ルノーグループ、日産自動車株式会社、三菱自動車工業株式会社 マイクロソフト+VISEO+BitSe+RCi Bank & Services マイクロソフト・アジュール ブロックチェーンテクノロジー、BaaS(blockchain-as-as-service) Digital car maintenance history ledger)
みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行 日本IBM、リナックス・ファウンデーション/ハイパーレジャー・プロジェクト IBMプラットフォーム:
(信用状のような取引文章のための)サプライチェーンが効率的な金融取引プラットフォーム
東京電力ホールディングス Electron ブロックチェーン:
エネルギーシステムとトランザクションにおける効率化と確実性
富士通株式会社 ブロックチェーンイノベーションセンター+ブリュッセルなどのヨーロッパの都市 ブロックチェーン:
グッズやサービスの売買や交換を含めたユーザー体験
中部電力株式会社 インフォテリア株式会社+株式会社Nayuta ブロックチェーン+スマートモバイルデバイス:
電気自動車やプラグ接続式ハイブリッドカーの充電管理システム
みずほ銀行、住友銀行、三菱商事 R3と40以上の金融機関 ブロックチェーン:
輸出入金融や派生取引を含む金融取引ネットワーク

ビットコインを超えて:IoT+ビッグデータ+ブロックチェーン

ブロックチェーン・スタートアップ「Mobius」もJDDのようにビットコインを超えることを目指している。同社では、安全で手頃かつ効率的な方法で現実世界の数百万人のデータや消費者アプリをブロックチェーンにつなぐこと目標としている。
この技術の初期のファンである同社CEO・Cyrus Khajvandi氏は、銀行等の仲介なしに金融取引を可能にするブロックチェーンのプラットフォームとしての能力に強く感銘を受けた1人だ。
しかし、その時でさえも彼の心にはとある懸念があったという。「どのようにブロックチェーン資産を人々に浸透させ、どうしたら単なる仮想通貨の貯蓄や取引を超えてこの仕組みを成長させることができるか?」というものだ。

ブロックチェーンのスタートアップ「Mobius」CEO・Cyrus Khajvandi氏。同社は、スマート・コントラクトや予想される急激なIoT機器やデータを用いて新しいサービス、製品そしてアプリケーションを提供することを求めている。

ブロックチェーンのスタートアップ「Mobius」CEO・Cyrus Khajvandi氏。同社は、スマート・コントラクトや予想される急激なIoT機器やデータを用いて新しいサービス、製品そしてアプリケーションを提供することを求めている。

「スマート・コントラクトを用い、分散型データ市場で取引される現実世界のデータを処理する技術を作ることが私たちの解決策でした」

Mobiusは単なる取引や投機ではない現実的な仮想通貨ベースの取引を目指している。予想される膨大なデータやIoTデバイスを利用し、新しい製品、サービス、予測市場を含めたアプリケーションを提供するためにスマート・コントラクトを使用する意向だ。
今日、小売業からの支払い、バックエンド・プラットフォーム、イベントデータそしてweb APIsなどの現実世界のデータは同社の特許出願中の技術、『Mobius Oracles』を経由してブロックチェーンに記録されているかもしれない。(Mobius Oraclesの詳細はBlockchainHubへ)

ブロックチェーンの変化:食品+医薬品 + FX + その他

丸山氏とCyrus氏はブロックチェーンの変容や新しい利用例の開発にまで機は熟したと考えている。丸山氏曰く、特に二つの分野において変化は際立っているという。一つは食品業界や医薬品業界での商品やサービスのトレサビリティに対して。もう一つは外国送金。

Cyrus氏は中央銀行のような主要団体がブロックチェーンの流行に便乗すると予想する。「彼らには選択肢がありません。適応するか、拠点を変えるか、さもなければ潰れるかしかないのです」。ブロックチェーンは10年以内にロボット工学や自動化に統合されるだろうとも予想した。
しかしながら、サプライチェーンにおける信用を高め、スケーラビリティを取り巻く問題を解決しながら高い忠実度でデータをブロックチェーンにつなぐ方法を開発するなど、当分の間乗り越えなければならない壁はまだまだ沢山あるといえる。

暗号通貨の有効性

別のパネルディスカッション『主流の暗号通貨の利用方法は予測を上回る進化をするか?』では、日本では暗号通貨部門もまた、大企業やスタートアップらがその効力を主導する大きな過渡期にあるという意見が出た。

左から 三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタル企画部・藤井達人氏、ブロックチェーン・グループ、LINE株式会社・Peter Park氏、Telcoin CEO・Claude Eguienta氏、Truffle Capital・Mark Bivens氏

左から 三菱UFJフィナンシャル・グループ デジタル企画部・藤井達人氏、LINE株式会社・Peter Park氏、Telcoin CEO・Claude Eguienta氏、Truffle Capital・Mark Bivens氏

例えば、三菱UFJフィナンシャル・グループは、1コイン=1円の価値を持つ新しいデジタル通貨“MUFGコイン”のアプリを従業員向けに配り試験利用を開始している、と同社デジタル企画部の藤井達人氏は説明した。
一方、LINEは同社のアプリ内で暗号通貨を取引し、ローンや保険証券の契約を可能にする市場を運営している、と同社のブロックチェーンプロジェクトの責任者の一人・Peter Park氏は述べた。

暗号通貨イノベーションは日本企業のみにとどまらない。外国人経営を含めたスタートアップらもブロックチェーンへの道へ加速している。例えば、東京を拠点とするブロックチェーン・スタートアップでかつて日本最大の新規仮想通貨公開(ICO)だったTelcoinは「telcosとの協力関係によって『鋳造されないコイン』を未来の市場に出すことを目指している」とは、同社のCEO・Claude Eguienta氏。

日本のブロックチェーンの未来

「日本はブロックチェーン・イノベーション、投資、そして契約に打って付けの場所」とある参加者は話してくれた。リスクや先進的なイノベーションを厭うこともあるが、確実に大手企業やスタートアップ、政府はブロックチェーン採用に積極的と言えるのではないだろうか。

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ブロックチェーンはまさに黎明期。医療や製造、BPO、不動産などあらゆる産業においての活用方法を探るべく、実証実験が至るところで進んでおります。

2017年以降、世界ではICO(ブロックチェーンビジネスの主な資金調達手段)による資金調達がVCラウンドの3.5倍となり(出典:TechCrunch, 2018 VC Investment Into Crypto Startups Set To Surpass 2017 Tally)ましたが、単に資金調達のしやすさよりもICOの持つ可能性を探るためにあえて選択していることが伺えます。

一方で詐欺まがいのような残念なニュースも聞こえてきますが、当レポートで取り上げているベンチャーは、PoC(Proof of Concept:コンセプト検証)に取り組むアメリカ、ヨーロッパ(イギリス、フランス、ドイツ)、アジア(中国、シンガポール)を中心としています。加えて、「大企業との実証実験の実績がある」「著名ベンチャーキャピタリストやメンターが関わっている」「幅広くテクノロジー業界に注目されている」のように、信頼性高く、ベンチャーとしての可能性も秘めている企業のみ集めております。

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言語:日本語(英語版を後日リリース予定)

内容・ブロックチェーン概要

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  • ブロックチェーンスタートアップ詳細レポート約70社(1社1ページ)
    • 製造/サプライチェーン × 8社
    • 製造/自動車 × 3社
    • 製造/IoT × 4社
    • 金融 × 12社
    • アドテク × 7社
    • 不動産 × 10社
    • 医療/電子記録 × 4社
    • 医療/治療の最適化 × 3社
    • BPO × 4社
    • DAO(スマートコントラクト・分散型組織) × 9社
    • その他(基礎技術・その他の業界など) × 8社
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