ブロックチェーン、メディカル…YC Winter 2018スタートアップトレンド

 addlight journal 編集部

4月23日、FINOLAB(東京・大手町)にてイノベーション創造支援会社・株式会社アドライトが行った「Trend Note Camp 13」。今回は、今年3月に開催された「YC Winter 2018」のDemo Dayを中心とした、アメリカのスタートアップトレンドがテーマだった。

過去最多のチーム数にわいたYC Winter 2018

ゲストスピーカーは「YC Spring 2017」を取り上げたTrend Note Camp 9でも登壇した、株式会社WiL パートナー・久保田雅也氏。参加するチームの特徴としてより大きな課題への社会実装に取り組む会社が増加。メディカルなどの5年から10年といったスパンでの時間軸を見据え、ターゲットとする市場を大きくキャプチャしたチームが多く参加していたという。

Demo Day参加チーム数は過去最大の141チーム、投資家サイドもおそらく過去最大。会場のコンピューターヒストリーミュージアムに入りきらず、別室が用意されるほどだったそうだが、Y Combinatorからの投資額は12万ドルでここ数年変化がないという。それにも関わらず参加チームが増加し続けるのは、Y Combinatorのブランド力によるところが大きいとみられている。

株式会社WiL パートナー・久保田雅也氏

株式会社WiL パートナー・久保田雅也氏

別のY Combinatorの特徴として、例年同様、ローカルに特化したチームの参加が挙げられた。少し誤解があるかもしれないが、グローバルな環境、あるいはアメリカでのビジネス展開が必須なわけではない。インドならインド、ラテンアメリカならラテンアメリカで儲かればそれでいいということだ。とはいえ、日本からの参加者は今回もゼロ。久保田氏は「英語のうまい下手は関係ありません」と強調していた。

Demo Day開催時期、Y Combinator出身のメガベンチャー・Dropboxが初のIPOを果たしたため話題となっていたという。お祝いムードであることは間違いなかったが、実はY Combinatorスタート13年目にして初にあたる(Dropboxは創業11年目初)。これだけやってようやくというのがシリコンバレーのベンチャーの熾烈な競合環境と、IPOまでの時間軸が長期化した今のファイナンス環境を物語っているのだという。

アメリカはM&Aが主流だ。IPOもしようと思えばできるが、非上場でもお金が集まっている場合、あえて踏み切らないこともあるのだとか。ちなみに、Airbnb CEO・Brian Chesky氏は、2018年のIPOはないと公言している。

変化の多い激動の時代を生き抜く

アドライト 代表・木村からは、注目のスタートアップ20チームを紹介した。パーソナライズに特化したチームが多く、うまくAIやマシンラーニングを活用していたという。例えば数個の質問に答えるだけでスキンケア製品を選んだり、個人に合ったプロテインシェイクの種類や摂取タイミングを薦めてくれるサービス、ゲノム解析データを基にサプリメントを提供するといったサービスを挙げた。
参照:「YC Winter 2018」Demo Dayレポート─注目スタートアップ30選

ブロックチェーンのチームも出始めたということで、オーディエンスからその分野へのアメリカのスタンスを聞かれると、「ブロックチェーンが分権や分散を象徴するという点から、キャピタリズムの塊とされるシリコンバレーと相性は良くない面もあります。米国はICOもSEC(アメリカ証券取引委員会)が厳格な姿勢を表明していて規制が厳しい方向に傾いています」と久保田氏。

とはいうものの、「SAFT(Safe Agreement for Future Token)のような法規制と折り合いをつけるICOの実務が生まれており、力強いイノベーションの底力を感じます。最近の大型ICOでも軒並み主要なVCが参加しており、投資家の関心は引き続き高いです」という。アジア諸国や東欧などはアメリカ以上の盛り上がりを見せており、熱狂度が高いことも補足した。

取材を終えて

両者の意見をふまえると、Y Combinatorに限らずスタートアップエコシステムの中にいるそれぞれの役割や立ち位置が徐々に変化している。そのため、次回のDemo Dayにどのようなチームが参加し、どのような特徴を持つのかはっきりとはわからないが、今回を上回るプロダクトを発表するチームが多く参加することは間違いないだろう。

次回は8月20日〜22日を予定しているとのこと。会場の満杯具合から別の会場を検討しているという話もあった。日本からの参加が増える日は来るのだろうか。