NAVERと韓国政府が作り出すスタートアップコミュニティ「Startup Alliance」

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

韓国でスタートアップエコシステムの献身的貢献に努めている「Startup Alliance」。ディレクターを務めるKidae Lee氏(以下、Kidae氏)は、アメリカで複数のスタートアップに参画後、Startup Allianceにジョインした経歴を持つ。Kidae氏に韓国の現状と今後についてお伺いした。

Startup Alliance ディレクター・Kidae Lee氏

Startup Alliance ディレクター・Kidae Lee氏

——Startup Allianceについて教えてください。

政府とNAVERによるNPOコミュニティで、2014年3月にスタートしました。今年中に会社化の予定です。

我々は4つのセクター・役割からなっています。

  1. 韓国のスタートアップエコシステム構築とレベルアップ。毎年関係者やキープレーヤーを集めたカンファレンスを開催
  2. バークレー大学と連携した教育サービスの提供による起業家リテラシーの向上
  3. 韓国政府のスタートアップ関連の政策の提言
  4. コミュニティプラットフォームの構築。日本や深センでのイベントによる国際化の進展や、隔週でのミートアップやランチ会等。無料で使えるイベントスペースの貸し出しも実施

 

——韓国で盛り上がっている領域は?

世界中どこでも共通だと思いまが、人工知能がひと段落し、あらゆるサービスにビルトインされるようになってきました。今はブロックチェーン技術を活用したスタートアップや仮想通貨関連に注目が集まっています。

韓国の財閥や大手企業を中心に広がるオープンイノベーション

韓国でのオープンイノベーションの状況はいかがでしょうか?

韓国でも大手企業によるベンチャー連携が盛んです。財閥系大手企業による主導により、最近はその手法も多様化しています。

Startup Alliance内のワークスペース

Startup Alliance内のワークスペース

例えば、サムソンはグローバルカンパニーということもあって、世界中のスタートアップとコラボレーションしています。社内ベンチャー制度も設けていて、一部の株式をサムソンが持った形で従業員がスピンアウトできる「C-LAB」という仕組みがあります。これまでにスマートグラスやIoTスピーカー等のチームを輩出していますね。C-LABは人材流出のリスクは否めませんが、モチベーションアップのためにあるようです。

韓国大手企業のロッテは、コーポレートアクセラレーションプログラムを展開しています。ロッテやロッテ関連会社とスタートアップとの戦略的協業が目的です。他にも、SKグループやハンファグループ等、財閥系企業も近しいプログラムを展開しています。

アクセラレーションプログラム以外ですと、CVCは韓国でも従来から盛んなオープンイノベーションの手法を取り入れて、LPや直接出資と組み合わせて運用されています。

最近はソウルメトロ(地下鉄)等の公的機関もベンチャー連携によるオープンイノベーションに取り組んでいます。そのアレンジとイベント会場として当Startup Allianceともコラボレーションしました。プサン市等からも依頼があり、自治体や政府系の団体もスタートアップ連携に熱心です。

Startup Alliance内の多目的スペース

Startup Alliance内の多目的スペース

——スタートアップ創造プログラムで新しい取り組みは出てきていますか?

ひとつ最近の象徴的なオープンイノベーション事例を紹介します。スタートアップスタジオ・FUTURE PLAYと大手化粧品会社AMORE社のスタートアップ創造プログラムです。プログラムのbatchが始まる前にFUTURE PLAYが50K USDで7.5%を投資します。そして、6ヶ月のプログラム後に100KUSDをAMORE社が投資する仕組みです。目的は、その後のAMOREによる延長線上のM&Aです。この新しいモデルは、ヒュンダイ社等他社でも広がっています。

シリコンバレードリームは存在しない

——韓国スタートアップはどのような海外戦略をとっているのでしょうか?

日本と韓国の若者の大きな違いのひとつがあるとすると、韓国は多くの若者をアメリカの大学に20年間近くもかけて送っていることでしょうか。彼らが今の韓国のスタートアップの原動力となっています。

ですが、トライアンドエラーを繰り返しています。韓国のスタートアップは、シリコンバレーに行けば「いいビジネス」や「いい投資家」が見つかると夢を見がちですが、実際帰ってきているチームも多いです。

彼らはアメリカのスタートアップの情報も参考にしつつ、最近は東南アジアに注目しています。日本市場も魅力的ですが、すべて日本語に変換する必要があります。また関係構築にも時間がかかるので、韓国の若いスタートアップはそこまでの忍耐力がない場合が多いですね。

資金調達面では、海外には期待せず、国内での調達を検討しています。前述の通り大手企業からの投資額も増えていて、国内でもお金は回り始めています。海外とはパートナーシップ等で連携していく方向性です。

——インバウンドによる海外スタートアップの受け入れもしているのですか?

韓国政府は海外スタートアップの受け入れに積極的で、予算も付けています。あるプログラムでは80チームを受け入れて、その半分に対してワーキングスペースや宿泊施設等を提供しています。ヨーロッパ等からも来ていて、韓国のスタートアップのエコシステムにプラスに働いているといえます。ただし、国によっては文化の違いから韓国進出に苦しむ場合もあるようです。

——韓国スタートアップのイグジットは活発なのでしょうか?

スタートアップのイグジットは韓国でも大きな課題となっています。法律の制約があって、赤字の企業は基本的に上場できません。大企業のM&A事情でいうと、KAKAOはいくつかの小規模な買収を始めました。最近はNAVERも積極的で、大きなM&A投資予算を持って活動しています。その他の大手企業や財閥系企業のM&Aも期待していますが、彼らはスローペースです。アメリカでも、IT企業に比べてメーカー企業等のM&Aは消極的という印象です。

——今後のビジョンについて教えてください。

Startup Allianceはイベントコーディネートがメインでしたが、今後はもっとリサーチ機能を強化して、情報に基づく政策立案支援や企業の戦略立案支援を行っていきたいと考えています。なかでも「韓国政府のスタートアップ関連の政策の提言」には力を入れていきたいですね。

 

取材を終えて

オープンイノベーションというキーワードをもとに韓国の大手企業も海外の情報を取り入れつつ、様々な手段で活動を展開しているあたり、日本と似た環境のようだ。オープンイノベーションのためには長期的時間軸で大胆な意思決定も必要になる。韓国財閥系のトップダウンによる施策はインパクトがあり、今後の大きな可能性を感じた。