企業が社内起業(社内ベンチャー)、イノベーションを成功させる極意

 addlight journal 編集部

4月27日、ユニコーンファーム主催、弊社アドライトが共催のイベント「企業が新規事業/イノベーションを成功させる極意」が、LIFULL Table(東京・半蔵門)にて行われた。テクノロジー・スタートアップを数多く支援し世の中に送り出してきた、TomyKこと鎌田富久氏と、株式会社ユニコーンファーム CEO・田所雅之氏が登壇。成功する新規事業を起こしていくポイントについて触れた。

企業が社内起業のメリットを最大化するのに必要なこと

社内起業のメリット 〜成功へと導く2つの視点〜

鎌田氏が「企業が新規事業を成功させるために」というテーマの下、基調講演を行った。社内起業に着手することのメリットを最大限に活かすには、どのようなポイントを重視して展開していくかに懸かっている。基調講演では二つのポイントが挙げられた。

鎌田氏曰く、通常のスタートアップは課題が先にあり、それを解決する事例が多い。翻って技術型スタートアップは実証化したい優れた技術が既に決まっており、それをいかにニーズに合わせて売り出せるかがポイントと述べた。

またそのテクノロジーが課題を解決するベストな選択で他には変えられないものであると同時に、課題そのものが市場規模の大きく、社会的に重大な「良い問い」であるのかを見極めなければいけないと主張した。

鎌田富久氏

鎌田富久氏

この二つを見極めるには「結論はとにかく端から試すしかありません。それほど簡単に良い課題は見つからないのです。最初のアイデアはうまくいかず、試行錯誤していく中で大きなアイデアが生まれます。なかなか思いつきにくいですが、色々トライすることにより大きな可能性に繋がります。粘り強くやることではじめて見えて来るのです」と述べた。

最後に、医療分野に着目。これまでは経済や産業を最適化してきたが、これからは人間自身のためにイノベーションを起こし、自分たちの技術で世の中を変えていく価値の重要性について語り締めくくった。

過去の社内起業の事業分析から得られた知見 〜効果的な学習方法〜

続いて、田所氏が壇上に上がり、自身の失敗した体験談から学んだ教訓を元に「新規事業の失敗を90%減らす7つのポイント」と題して講演を行った。

田所氏は世界中1,500社のdue diligenceや300社のアドバイザーの経験を持つ。そこでの成功・失敗の事例を分析し、「一番大事なのは学習にフォーカスすること」と述べた。自身の分析によると、学習にフォーカスするスタートアップは7倍資金調達が可能で、3.5倍早く成長する。学習しないスタートアップは自分たちの思い込みを信じ、プロダクトをとりあえず作り、見たいものを計測し、また思い込みが強くなる、というスパイラルに陥るという。

株式会社ユニコーンファーム CEO・田所雅之氏

株式会社ユニコーンファーム CEO・田所雅之氏

ではどのように学習すれば良いのだろうか?田所氏は「仮説を構築し(対象の確認・現状把握)、ヒヤリングし(課題を感じている顧客にメデイアだけでなく一次情報も)、仮説を検証する(顧客の不安や課題を深堀する)サイクルが重要です。自分の思い込みからではなく、人の欲しがるものを学習し、作ります」と説いた。

自分たちの勝手な思い込みや、その場の雰囲気で作り上げるのではなく、今人々が欲しているもの、課題と感じているものを見極め、実際に現場の声を中心に考え、それを元に根本的な問題の解決に挑むことができれば成功に繋がることを示唆した。

社内起業を成功に導くには

社内起業における着手段階のすすめ

パネルディスカッションでは、弊社代表・木村がモデレートのもと両者と事業を成功に近づけるにはどうしたらいいか話し合った。
「スタートアップがピボットを繰り返すなかで“このアイデアで行く”と決めてギアアップするタイミングはどのように決めるべきか」という問いは、おそらく参加者の多くが抱いた疑問だろう。鎌田氏は「まずはピボットではなく、ワンラウンドは何でもやるという意識を持つこと」と回答。「目立って、問い合わせを増やして、いろいろやるのを一年くらいやってみます。その中で、お金を払ってくれる人を選びます」とコメント。

対する田所氏は「代替案がないところを探すべき」と回答。スマートHRの領域を例に挙げ、PMFの考え方を説明した。氏はまた、利用者の60%くらいにとって「サービスがなくなると困る」と思える「感動したという体験」が溜まるかどうかもポイントだと述べた。

ギアアップを決めるタイミングについても多くの関心が寄せられた。このトピックでは外に出ることでセレンディピティを得ること(鎌田氏)やユーザーを見て、大局観を得ること(田所氏)などが大きなカギを握るというのが両者の見解だった。

社内起業のデメリットを克服するには 〜未来予測・士気向上・人材配置〜

社内起業を行ううえで考えられるデメリットとして一般的によく挙げられているポイントは、「成功率が低いのではないか」という説だ。そうした不安要素も、目標に対するギャップ対策や、企業全体の士気を高める言葉選び、適材適所の人材配置によってカバーすることが可能となる。

Jカーブと目先の利益を取りに行きたくなる時のギャップ対策として、田所氏は「5年、10年で見てスケールするかどうかを考える必要があります」とコメント。オープンテクノロジーを使用することでスケーリングに立ちはだかるハードルを低くすることが可能であると添えた。

社内へのイノベーションの伝え方やスタートアップの手法への大企業の適応も熱く語られたテーマだった。「現在は、何もしないリスクのほうが高く、今までと違うことに対する(社員の)やる気を出させることが大切だ」と鎌田氏。田所氏は、パナソニックを例に挙げ、同社の“ヨコパナ”社員に自由を与え、経営会議における言葉の変革をもたらしたことについて言及した。

新規事業を任せるべき人材について、田所氏は「CAN、NEEDED、GET PAIED、WANT」が重要だが、中でも教え込むことのできないWANTの器を大きく持っていることが重要とコメント。これにより、グリット不足を防げるとも述べた。

情熱と執着と忍耐、そして学習能力を持ち、「既存ラインからはみ出た、調整役ではない人、推進力があって尖っている人が適していると思います」(鎌田氏)。
また、周囲のサポートも新規事業には欠かせないと主張した。

この後満員の会場からは、三者に対して他にも多くの質問が出され、大盛況の内にイベントを終えた。

取材を終えて

大企業は人や資金などのリソースを保持している。しかし、新規事業開発においては、改善のイノベーションに計画的に投資しつつデッドラインも決めておく必要があるかもしれない。新規事業開発は熱意のある人が微笑むだけでは足りない。周囲のサポートや外部からの声も必要なのだ。

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