CVC、アクセラレータープログラム…オープンイノベーション推進の鍵は「協業仮説・協業先・社内巻き込み」

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

10月21日、京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社主催、弊社株式会社アドライト共催のイベント「オープンイノベーションの事業創造と具体的戦術」がKnowledge Place(※)(東京・虎ノ門)にて開催された。Knowledge Place Opening Monthは計3回のイベントを予定しており、今回は第一回目に当たる。

テーマは「オープンイノベーション」。どうすればオープンイノベーションは成功するのか?そもそもなぜオープンイノベーションは必要なのか?オープンイノベーションの基本から最新事例、大手企業からみた導入戦略と具体的戦術に至るまで幅広いトークが展開された。

※ Knowledge Place(ナレッジプラス)は、2019年10月1日に東京・虎ノ門にオープンした、オープンイノベーションを促進する共創スペース。ここに集まる様々な企業、人々の知識を効果的に組み合わせてイノベートし、新たな価値を生み出すことを目指している。
https://knowledgeplace.jp

日本流オープンイノベーションの実現を目指して

冒頭、弊社代表取締役の木村より「オープンイノベーションの導入戦略と具体的戦術」という題目で講演がおこなわれた。

現代の経営環境は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとってVUCAの時代だと言われる。これまで時間をかけて計画的にプロダクトを世に出していくことができた。しかしながら、技術の発達の速度が上がっていることに加えて、消費者側のニーズの変化も速く、従来の方法では対応できなくなってきている。この状況は、イノベーションカーブがより裾の狭く尖った形状のものになってきたと表現することもできる。

こうした経営環境の変化により、自前主義の姿勢は通用しなくなってきた。計画を立てて開発し、プロダクトを世に出した頃には既にブームが去っていたり、プロダクトを開発するのに多くの新しい技術が必要とされたりすることが増えたからだ。そのような中で重要度が増してきたのがオープンイノベーションである。

オープンイノベーションは「企業の内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造する、イノベーションを促進するための知識の移出と移入の意図的な活用プロセス」だと提唱者のヘンリー・チェスブロウ教授は定義している。期待されるメリットとしては、これまで社内で進めていた研究開発において、企業の境界を越えた技術やノウハウの連携や、連携することによる研究開発課題の解決、研究開発の効率化が挙げられる。

オープンイノベーションの戦術としては、規模や効果の小さい順に

  1. サービス購入
  2. 関連イベント企画運営
  3. 協業プロジェクト実施
  4. 企業アクセラレータープログラム実施
  5. 個別企業への出資
  6. ベンチャーキャピタル(VC)への投資
  7. コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)設立
  8. ジョイントベンチャー(JV)設立
  9. 企業買収実施

といったものが挙げられる。戦術4、5、6、7は、日本でも多く見られる。戦術9の企業買収は、日本ではまだまだだが、欧米では主流なオープンイノベーションの実現方法だ。

オープンイノベーションの重要性は世界中で認知されており、様々な取り組みがなされている。しかしながら、その進め方は国によって異なるべきだと木村は言う。破壊的イノベーションの重要性が叫ばれている昨今だが、日本は社歴の長い企業が多く、なんでもかんでも破壊的であれば良いわけでもない。既存のものと上手く連携して協力的にイノベーションを行っていくこともこの国には重要だ。日本には日本流のオープンイノベーションの形があるはずだ。この日本流オープンイノベーション実現について、木村は以下の3つが重要という。

  1. 自前主義からの脱却
  2. 破壊ではなく共創のモデル
  3. 独自の進化プロセス(社歴の長い企業が多い欧州は参考になるだろう)

木村曰く、オープンイノベーション成功のために重要な要素は「協業仮説」「協業先(スタートアップ)」「社内巻き込み」の三つ。オープンイノベーションはあくまで手段であるため、戦略を立てることがまず重要だ。次に、外部のスタートアップと協業する際に、そのスタートアップをどう選定し、どう関係を構築するのかが重要になる。最後に、事業を大きくしていくためには社内を巻き込んでいくことも必要だ。

アントレプレナーになぞらえ、社内起業家を「イントレプレナー」と呼ぶが、イントレプレナー成功のカギは、個人のWillと企業のWillが重なることに取り組むことだと言われている。内発的動機に基づく自発的な姿勢が重要というわけだ。これは、オープンイノベーションの実現にとっても重要なポイントだと木村は指摘する。大手企業の社内ルールはオープンイノベーションのためにはできていない。そのような中、オープンイノベーションを実現していくためには起業家精神を持ち、自分事として取り組んでいけるかが問われている。

CVCをやめる理由を作らない

木村に加え、株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 総合企画室 コーポレートベンチャーキャピタル担当の岸裕一郎氏、富士通株式会社 FUJITSU ACCELERATORのイノベーション鈴木氏、東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ イノベーション推進担当 主事の福井崇博氏らを迎え、トークセッションが実施された。

岸氏は社内ベンチャー制度を利用して、新規事業としてCVCをポーラ・オルビスホールディングス内で立ち上げている。もともとベンチャーに興味があったことに加えて、アメリカでユニリーバやP&GがCVCを立ち上げ成功している例を見て、日本でも来ると思えたことが取り組むきっかけとなったそうだ。

ゼロからCVCを立ち上げ、これまで10社に投資してきた岸氏。その中でも特に難しかったことを聞かれると、「『CVCの意義』は何か社内でコンセンサスを取ることです」と岸氏。CVCはシナジーの創出が大きな目的のひとつだが、実際にはなかなか難しいという。そこで長期的にはシナジー創出を目指しつつ、短期的にはファイナンシャルリターンを出していくことで「やめる理由を作らない」ように意識しているそうだ。

現在、FUJITSU ACCELERATORの運営に携っている富士通株式会社のイノベーション鈴木氏は、2018年に株式会社リコーにて「360度バナー広告」をオープンイノベーションで実現させた実績を持つ。トークセッション序盤では、イノベーション鈴木氏の呼びかけで「イノベーション!」と叫ぶ催しが実施された。「大手企業とスタートアップが協業すると、サービスリリースまでに1年以上かかり、公開できない情報ばかりのため、『イノベーション!』と叫ぶようになりました」と語るイノベーション鈴木氏。FUJITSU ACCELERATORの特長は、事業化に本気の事業部のみ参画し、事業部の決裁者がコミットすることで短期間での協業の実現などができるスピーディーさだと強調した。

■関連リンク
・FUJITSU ACCELERATOR第8期
– 募集締切:2019年11月22日(金)
– 申し込みURL:http://www.fujitsu.com/jp/innovation/venture/entry/index.html

福井氏は、2018年に東急株式会社に入社し、東急アクセラレートプログラム(TAP)Shibuya Open Innovation Lab(SOIL)の運営を担当している。新卒で入社した前職の日本郵便でもオープンイノベーションプログラムの立ち上げやスタートアップ連携の推進に取り組んでいた福井氏は、2社の大手企業でオープンイノベーション推進に携わった経験を持つ。

会場から、まず「アクセラレータープログラムは自社だけで運営できるものなのですか?」という質問が上がった。福井氏は「東急は、以前はアドバイザリーでVCに入ってもらっていたこともありましたが、今は完全に自社で回しています。最初は外部の支援を活用しても良いかもしれませんね」と回答。また、イノベーション鈴木氏もこれに同意し、「基本的には、我々も自社でアクセラレータープログラムを実施しています。一部イベント運営等のスタートアップ協業の本質ではない部分に関しては、外部の企業にイベント運営支援として入ってもらっています」と語った。

また、「投資先の目利きは社内でできるのですか?」という会場からの質問に対し、岸氏は「社内で取り組んでいますが、目利きできるかは業界によりますね。D2C、Beauty Techはできますが、できない業界もあります。投資先の80%は目利きができる領域、20%はできない領域にするといったようにポートフォリオを組むのが良いのではないかと考えています」と答えた。

目利きをする立場の木村曰く、「実際、目利きは難しいです。特にシード期のスタートアップは事業も複数回ピボットしていくため判断するのは難しいです。変化率(前回会った時に比べてどれくらい良くなっているか)は、創業期のスタートアップを見極める際のひとつの指標になるかもしれません」と答えた。そして、「Y Combinatorは、『目利きはできない』を前提とし、ある基準を満たしたスタートアップには幅広く投資しています。またトップVCの間でのトレンドは『合議制の排除』。一人のキャピタリストがGOサインを出したら投資するという方針が増えてきています」と付け加えた。

また、福井氏は「目利きができなくとも、Top tierのVCが投資している場合などのように目利きの面はある程度担保されるのではないでしょうか。大事なのはそうしたTop tierのVCから投資先を紹介したい、一緒に投資して欲しい、と思われる価値を発揮できる事業会社になれるかではないかと考えています」と述べた。

ほかにも会場からは様々な質問が投げかけられ、スピーカーの方々の経験に基づく考えや秘訣を聞くことができた。トークセッションの後には懇親会が催され、スピーカーと参加者の方々とで密な情報交換が展開されていたようだ。このイベントをきっかけに新しい取り組みが生まれるかもしれない。

お知らせ

11/21(木)16-19時、東京21cクラブ(新丸ビル10F)にて「Mirai Salon #14 成功を引き寄せるCVC戦略」を開催します。ゲストに、アメリカ、EU、日本等のスタートアップに積極的に出資するソニー、スタートアップながらCVC(SVC)としてマネーフォワード、今年10月にJFE エンジニアリングに買収されたAIスタートアップのAnyTechを迎え、各社の立場でCVCを語っていただきます。
とくにソニーは投資スタンス(事業シナジー含む)や海外と日本で投資基準や投資を受け入れる体制に違いはあるのか、出資先スタートアップへどんなアドバイスを施しているのかなど発表いただく予定です。

<登壇者>

  • Sony Innovation Fund (ソニー株式会社) イノベーションファンド室
    シニアインベストメントマネジャー 北川 純 氏
  • 株式会社マネーフォワード 取締役執行役員/マネーフォワードシンカ株式会社 代表取締役
    金坂 直哉 氏
  • Anytech 代表取締役
    島本 佳紀 氏