【イベントレポート】Leaper’s meetup in UMEDA:CO2資源化技術の新規事業を辿る

 addlight journal 編集部

企業内で新規事業を推進する「イントレプレナー」にとって、既存の組織文化やビジネスモデルの枠を超えた新たな価値創造への挑戦は、時として孤独な戦いとなりがちである。しかし、同じ志を持つ者同士が企業や業界の垣根を越えて集い、共通の課題を共有し、知見を交換する場があるとしたらどうだろうか。

そんな貴重な機会を提供するネットワーキングイベント「Leaper’s meetup in UMEDA 」が大阪・梅田で開催されました。

東京で開催されてきたLeaper’s meetupの大阪初開催となった今回は、大企業の新規事業担当者を中心に、多様な挑戦者が集まりました。

イベントのテーマはGX(グリーントランスフォーメーション)。ゲストには、CO2資源化技術「メタコル」の事業化に取り組む、関西イノベーションセンターの環境チームリーダー 馬場将人氏を迎え、研究開発から事業化までのリアルな経験が共有されました。

大企業の新規事業担当者なら誰もが一度は感じる葛藤について、会場では率直な議論が交わされました。今回はその対話から見えた内容をレポートします。


「CO2を減らす」ではなく「価値をつくる」から始める

セッション前半では、馬場氏からCO2資源化技術「メタコル」の開発事例が紹介されました。

メタコルは、CO2と鉄を化学反応させることで新たな素材を生み出す世界初の技術です。日本国内には使い道のない鉄とCO2が大量に存在しており、それらを資源として循環させることを目指しています。

【metacol™ WEBサイト】https://metacol.net/ 

環境技術というと、どうしても「CO2削減」が主目的になりがちです。しかし馬場氏は、事業を広げるためにより重要なことがあると語ります。

東急不動産とのプロジェクトでは、ゴルフ場の間伐材由来CO2を活用したゴルフティーを開発。また三重県度会町では、学校教室内のCO2とリサイクルプラスチックを活用した母子手帳カバーを製作し、「環境省 プラスマ・アワード2026 分ける・戻す部門」での金賞受賞に貢献しました。

どちらの事例も、CO2削減を前面に押し出したものではありません。ゴルフ用品としての魅力や地域資源活用という価値が先にあり、その結果として環境価値が生まれています。

GX事業を考えるうえで、「環境価値をどう売るか」ではなく、「顧客価値の結果として環境価値を生む」という視点の重要性が改めて共有されました。


新規事業担当者を苦しめる「求心力」

後半の議論では、多くの参加者が共通して抱える悩みが話題となりました。

それが、大企業特有の「求心力」です。

新規事業は本来、未知の市場や顧客に向き合う活動です。しかし実際には、既存事業との関係性ばかりが問われる場面が少なくありません。

「自社の強みを活かせ」
「既存事業とのシナジーはあるのか」
「なぜ自社がやる必要があるのか」

しかし、それが強くなりすぎると市場よりも社内説明が優先されてしまいます。

参加者からは、自動車関連技術を農業分野へ展開しようとしたものの、既存事業との関連性ばかりが議論され、本来向き合うべき顧客課題を見失ってしまった事例も共有されました。

馬場氏は、自社のアセットだけを見ていても新しい市場は見えてこないと指摘します。社内の意見だけで判断せず、まずは業界の当事者や顧客に会いに行くことが大切だと語ります。

新規事業担当者に必要なのは、社内の論理と市場の論理を行き来する視点なのかもしれません。


外部プレイヤーを味方にするという選択

そのための実践として語られたのが、外部との連携です。

馬場氏は技術の事業化にあたり、大学や自治体、製造パートナー、PR会社など数多くの外部プレイヤーと協働してきました。

限られた社内リソースだけでは実現できないことも、外部とのネットワークによって前進させることができます。

また、社外の専門家と対話することで、自社では気づけない市場の視点も得られます。

だからといって社内の助言を否定するのではなく、専門領域については専門家の知見を積極的に借りる姿勢こそが、不確実性の高い新規事業では重要になるという共通認識が生まれていました。


孤独と孤立は違う

交流会では、起業を予定している参加者や、大企業で新規事業に挑戦している参加者から率直な悩みも共有されました。

共通していたのは、「挑戦する人は孤独だ」という感覚です。

新規事業には正解がありません。最後は自分で判断しなければならず、その意味では起業家もイントレプレナーも孤独です。

一方で、孤立する必要はありません。

今回のイベントでは、失敗談も含めて本音で語り合う場面が多く見られました。ターゲット理解の不足による事業撤退の経験や、顧客インタビューの進め方を見直した話など、成功事例だけではないリアルな対話が続きました。

だからこそ参加者同士の共感も深まり、「自分だけではなかった」と感じられる時間になっていたように思います。

おわりに

今回の「Leaper’s meetup in UMEDA」を通じて見えてきたのは、新規事業の難しさそのものではありませんでした。

むしろ、既存事業の求心力が強い環境の中でも、外部との接点を持ち続け、自分なりの軸を失わずに挑戦を続ける人たちの姿でした。

共通しているのは、顧客価値に向き合い続けること。そして一人で抱え込まず、挑戦者同士がつながることではないでしょうか。

大阪で新たに始まったLeaper’s Meetupが、そんな挑戦者たちの拠点として育っていくことを期待しています。

 

<登壇者プロフィール> 

馬場 将人 氏 

出向先) 

一般社団法人関西イノベーションセンターチームリーダー(環境) 
 
出向元) 

住友電気工業株式会社 博士(理学)  

アドバンストマテリアル研究所 機能材料研究部 主席 

 筑波大学を卒業後、出向元である住友電気工業株式会社に入社。 

新領域技術研究所、研究開発本部に着任後、アドバンストマテリアル研究所にて、主席研究員として環境・エネルギー分野の研究開発に従事。 

 2025年4月からCO2ビジネスの事業化のため一般社団法人関西イノベーションセンター(MUIC Kansai)に出向中。 

特にバイオマス燃料や植物の光合成研究、温室効果ガス削減技術の創造に強みを持つ。