まちづくりGXとは-都市システムを変える脱炭素戦略-

 addlight journal 編集部

近年、「まちづくりGX」という考え方が注目されています。これは、国土交通省が都市政策の一環として推進する取り組みであり、太陽光発電やEVなどの個別技術の導入だけでなく、緑地やエネルギー、都市計画など都市全体の構造を見直すことで、脱炭素と持続可能な都市の実現を目指すものです。

その背景には、都市が世界の温室効果ガス排出量の約7割、エネルギー需要の6割以上を占めるとされる現状があります。日本が掲げる2030年度までの温室効果ガス46%削減(2013年度比)と2050年カーボンニュートラルの実現には、都市そのものの脱炭素化が不可欠です。こうした認識のもと、国土交通省は、都市における脱炭素化と都市の価値向上を両立する「まちづくりGX」を推進しています。


1. まちづくりGXとは何か

まちづくりGXとは、都市における緑地の「質」と「量」の確保・向上と、エネルギーの面的利用(地域単位でエネルギーを効率的に融通・活用する仕組み)を柱として、都市全体の脱炭素化を進める都市政策です。

国土交通省は、その目的として主に次の3つを掲げています。

  • 気候変動への対応:CO₂吸収源の確保、エネルギー利用の効率化、ヒートアイランド対策
  • 生物多様性の確保:都市の中に生き物の生息・生育環境を確保すること
  • Well-beingの向上:健康増進や快適な生活環境、子育て環境など暮らしの質の向上

この考え方を制度面から支えるのが、2024年5月に成立し、同年11月に施行された「都市緑地法等の一部を改正する法律」です。この法改正により、都市における緑地の保全・創出を促進する制度が拡充されるとともに、自治体や民間事業者による良質な緑地の確保・管理を後押しする仕組みが整備されました。


2. まちづくりGXが向き合う課題

第一に、気候変動への適応です。

豪雨や猛暑などの自然災害が激甚化する中、都市の構造は中長期的にCO₂排出量だけでなく、防災・減災機能にも大きな影響を与えます。都市緑地はCO₂吸収源であるだけでなく、雨水の浸透促進や暑熱環境の緩和などの機能を持つ「グリーンインフラ」として、防災・減災にも重要な役割を果たします。

第二に、民間投資を促進する仕組みづくりです。

従来、緑地整備は収益性を示しにくく、民間投資が進みにくい分野とされてきました。そこで国土交通省は、2024年11月から「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」を運用しています。この制度では、気候変動への対応、生物多様性の確保、Well-beingの向上などに貢献する良質な緑地の確保を国土交通大臣が認定し、その価値を「見える化」することで、民間投資の促進を図っています。

第三に、多様な主体の連携です。

まちづくりGXは、行政だけで実現できるものではありません。自治体、民間企業、金融機関、地域住民など、多様な主体が連携しながら都市の将来像を描き、都市計画、エネルギー、環境政策を一体的に進めていくことが求められます。


3. 具体的な取り組みと直面するハードル

国土交通省は、まちづくりGXの実現に向け、制度整備と普及啓発の両面から施策を展開しています。

主な取り組みは以下のとおりです。

  • 都市緑地法等の改正(2024年):都市における緑地の保全・創出を促進する制度を拡充
  • 優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG):民間事業者による良質な緑地確保を認定し、民間投資を促進
  • 脱炭素都市づくり大賞:国土交通省と環境省が2023年度に創設。優れた脱炭素型都市開発を表彰し、国内外へ発信
  • シンポジウム・セミナー:産学官が連携し、自治体や企業による先進事例を共有

一方で、課題もあります。

緑地整備は短期的な経済効果が見えにくく、エネルギーの面的利用も街区単位で複数の事業者や行政の調整が必要です。また、都市計画、環境、エネルギー、金融など複数分野を横断するため、関係者が共通のビジョンを持ち、継続的に連携できる体制づくりが重要になります。


4. 今後の課題と展望

まちづくりGXが今後さらに定着していくためには、緑地の「量」だけでなく、「質」をどのように評価するかが重要になります。例えば、生物多様性の向上や暑熱対策への効果、地域住民のWell-beingへの貢献などを客観的に評価する手法については、今後さらに充実が期待されます。

都市の脱炭素化は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた重要な政策課題です。まちづくりGXでは、制度を整備するだけでなく、それを自治体や民間企業による現場での実践につなげていくことが重要になります。制度設計と地域での実装が連携することで、脱炭素、防災、生物多様性、Well-beingを同時に実現する持続可能な都市づくりが期待されています。


参考資料


イベント紹介

脱炭素・ネットゼロのための共創プラットフォーム「SUITz(スーツ)」を運営する株式会社アドライト(本社:東京都千代田区、代表取締役:木村 忠昭 以下、アドライト)は、官・学・民・スタートアップとの連携を通じてGX実証・事業化の起点をつくる共創の場「GX Alliance by SUITz」を毎月開催しています。


第6回となる本イベントのテーマは、「まちづくりGX ー都市システムの変革が拓くサステナブルな社会ー」 。

人口減少、老朽化する都市インフラ、激甚化する自然災害など、都市が抱える課題は複雑化し、従来の分野ごとの取り組みだけでは解決できない時代を迎えています。

今求められているのは、都市計画、交通、エネルギー、建築、防災といった分野を横断して都市の価値を高める「まちづくりGX」という視点です。しかし、その実現には行政だけでなく、大企業、スタートアップ、金融機関など、多様な主体が連携し、新たな都市システムを共創することが不可欠です。

国の政策を踏まえながら、先進事例や最新技術を通じて、これからのまちづくりGXの方向性を議論します。持続可能な都市の実現と、新たな事業・共創機会の創出に向けて、次の一歩につながる出会いと知見を提供します。

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