イノベーション大都市・深センの成長戦略

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

中国有数の経済特区の1つである広東省深セン。近年の目覚ましい成長から米国・シリコンバレーとも対比され、「中国のシリコンバレー」、「ハードウェアのシリコンバレー」などとも呼ばれる。上海、北京に次ぐ中国第3の都市としての期待も高く、中国都市競争力ランキングの総合経済競争力部門では2014年から首位の座に立っている(それまでは13年連続で香港が首位を守っていた)。

2017年の深センのGDPは約37兆円。成長率は前年比8.8%と驚くべきスピードで、香港の域内総生産を一兆円以上も上回った。深センのGDPが香港を抜いたのは史上初。さらに中国第3の都市と言われ続けてきた広州も同年に押さえつけ、経済規模でも正真正銘中国第3の都市となった。

物価の高騰や競争の激化といった懸念を指摘されているものの、今年5月に発表されたスタートアップに適した世界の都市ランキングでは中国国内トップとなる15位にランクイン。経済特区に指定された1980年からの年平均成長率は20%を超えるともされる。こうした急速な成長はどのような戦略で支えられているのかを追った。

中国を牽引する大都市圏を目指す珠江デルタ

前海政策展示庁内の展示より

前海政策展示庁内の展示より

珠江デルタと呼ばれる地域の一角を成す深センは、香港やマカオと中国を繋ぐ重要な役割を担っている。現在、香港と広州を結ぶ高速鉄道や、香港国際空港と深セン国際空港をつなぐ高速鉄道などの建設が計画されており、珠江デルタのアクセスは利便性が大幅に向上することが予想される。

こうした流れの中、中国・香港・マカオの各政府がお互いに連携し、珠江デルタ全域の経済活動の活性化を図る動きが見られるようになってきた。例えば、2018年度初めの旧経済特区と非特区の間に設けられていた境界線を撤廃するという発表がある。以前は本土の住民が特区に入る際には通行証の所持が必要とされていたが、2008年に通行証制度が廃止。2010年には経済特区が深セン市内全土へ拡大した。周辺住民の一体化を促進することが狙いということもあり、広州市と深セン市で協力してこの課題に取り組んでいくようだ。また、廃止後は香港やマカオとの関係性を強化していくと発表している。

深センの重要開発地区―前海

深セン市西部の前海地区は深センに続く成長を狙った重要拠点として位置付けられている。前海地区にある前海政策展示庁では2020年を完成目標とした都市計画について展示が行われている。近代的な外装の建物を入ると珠江デルタの歴史や政策、2020年の都市完成予想ジオラマなどが展示されていた。

前海の都市計画は深セン、そして珠江デルタ全体の発展を見据えたものとなっている。

前海の都市計画は深セン、そして珠江デルタ全体の発展を見据えたものとなっている。

前海が持つ優位性は大きく分けて2つある。1つ目は特定のサービス事業者や前海に登録されている物流事業者の税制優遇制度、イノベーション創造を促進する仕組み等、制度面の優位性を持つこと。2つ目は環境面の優位性だ。近隣都市を結ぶ交通機関の発達、世界有数のグローバル都市香港と地理的に近い、前述のGDPの高さやFORTUNE 500企業が数多くオフィスを構えるのように、珠江デルタの中国本土の中で最も経済活動が盛んな地域に位置する。


これらを踏まえると、前海は4つの顔を持つエリアと言える。現代サービス産業のためのイノベーションエリア、現代サービス発展のための産業集積エリア、中国本土と香港を繋ぐ実験エリア、そして珠江デルタをリードするエリアだ。

念入りに計画されたスマートシティ構想

都市そのものは近未来的な構造となっている。前海の中を22個のユニットに分け、オフィス空間や居住空間、エンターテインメント空間を備え付けるという具合に、移動時間を抑えたコンパクトシティを設計中だ。開発は1つ1つのユニットごとに進められる。ヒートアイランド現象に対しての対策も組み込まれている。開発が進み高層建築物が密集することを考慮し、換気通路を確保することで発生を抑えるというもの。他にも水の再利用や、リサイクルシステム等環境に優しい都市にする予定だという。

さらに、今年4月、日本発のクリエイティブテクノロジー集団・チームラボとチームラボアーキテクツが、深センの中洲集団有限公司と共同で、総合施設「C Future City」に「Crystal Forest Square」を建設するという発表があった。コンセプトは連続する「パーソナル、空間、象徴的立体物」。日本人としても楽しみなエリアとなりつつある。

一方で、シェアサイクルの投棄状況を目の当たりにしたり、交通機関ではライドシェアアプリ「DiDi」が機能せず、配車まで1時間を要するという体験もあった。まだまだパーフェクトな街とは言いがたが、それをカバーするだけのエネルギーが深センにはある。

おまけ

もし、深センに訪れたら、ぜひ足を運んで欲しい場所がある。カフェ「Teabank Shenzhen」だ。五角形をモチーフにした洗練された店内はオープンライブラリが併設。至るところでくつろぎながら本が読めるようになっている。2Fのライブラリスペースを抜けるとレストランが広がり、ここでも本が置かれている。

カフェスペースのおすすめは、フルーツをミキサーにかけ、お茶を合わせたフルーツティー(写真参照:商品名不明)。甘すぎず薄すぎず、さっぱりした飲み心地。冷たい喉越しで潤される。深センはとにかく暑い。湿気も80%前後を記録する(滞在していた5月末で35度、湿度は22時過ぎでも74%だった)。Teabankでの時間は安らぎをもたらしてくれることだろう。

住所:深セン市南山区海天一路15号 软件产业基地5栋A座 邮编:518054