自動運転技術をめぐる各社の動きと開発状況 (1/2)

前回記事で紹介したプレーヤーの新たな動き

前回こちらの記事にて日系メーカー各社の、自動運転技術の実用化に向けた動きをご紹介しました。今回はその記事の冒頭でも触れたFord、BMW、そしてそのBMWと提携していたIntelといったプレーヤーに関して新たな動きをご紹介します。

Ford社

2021年にレベル5での完全自動運転を達成すると発表していたFord社は、レーダー技術関連企業や、画像認識技術関連企業を買収していたことが報じられていましたが、今年2月10日には、いよいよ自動運転記述の核心部とも言えるAI技術の確保のために、自動運転ベンチャー「アルゴAI」を約10億ドルで買収しました。

出典: 日本経済新聞:フォード、自動運転のAIベンチャーに1130億円投資

正確には、アルゴAI社とのジョイント・ベンチャーの設立という形をとっているようです。

TechCrunch上の記事では、このジョイント・ベンチャーについて以下のように掲載されています。

“The goal is to completely outfit Ford vehicles with self-driving technology. Interestingly, this isn’t a case of a large company simply hiring talent but the creation of an entirely separate company with an independent equity structure.” –Tech Crunch 20170218

「(ジョイント・ベンチャーの)目的はフォード社の自動車への自動運転技術の搭載を完了させることです。興味深いことに、これは巨大企業による単なる人材雇用の事例ではなく、完全に独立した資本形態のもとでの完全独立子会社設立の事例です。」

2015-2016年の売上高では世界第6位に位置するFord社ですが、時価総額では米国テスラ・モーターズに追い抜かれたこともあり、なんとしても自動運転技術の分野で確固たる地位を築こうとする意志が伺えますね。

ちなみに、以下の記事にもある通り、Ford社では今年5月にはそのテスラ・モーターズに時価総額で抜かれたことを受けて、CEOの交代劇も起こっています。

また、2017年6月15日の日本経済新聞の報道によれば、フォードは、自動運転の実用化に向けて必要となる公道でのデータ収集を、ゲームで用いられるような仮想データも活用して行う方針で進めているといいます。走行中に人が飛び出してくるような危険な場面のシミュレーションは、そうした仮想データをAIに学習させるなど、最先端技術を駆使していくことで、開発を加速させていくとのことです。

米国Intelと長安汽車

前回の記事では、独BMW社と米国Intel社が自動運転技術の実現に向けて提携したことを報じましたが、今度はそのIntelが中国の自動車大手である上海汽車と提携をしたようです。

インテルは自動運転技術の開発に向けた情報処理プラットフォームであるIntel Goを提供しており、長安汽車はそのIntel Goを利用した自動運転技術の開発に取り組みたい意向であるようです。

“Chang’an will explore intelligent driving technologies based on Intel’s GOTM self-driving development platform. Technologies including environmental perception, precise GPS and route planning will be tested through Intel’s platform.”

「長安汽車は、インテルの持つ自動運転技術開発プラットフォームである、GOに基づいた自動運転技術開発を模索する。長安汽車の開発する同技術は、環境認識機能や、緻密なGPS機能、ルート・プランニング機能を含んでいて、インテルのプラットフォーム上にてテストが行われる」

–China daily 2017/04/21

出典: Chang’an partners with Intel

Intel Goは自動運転技術の実用化に伴って必要になる膨大な量の演算処理に対処すべく開発が進められるIntel社の自動運転技術プラットフォームの名称で、BMW社もそのプラットフォーム上での自動運転技術の開発を進めていました。

“Intel GO Automotive Development Platforms

As driving becomes more automated, the vehicle must be able to visualize the road ahead, evaluate countless possible scenarios, and choose the best sequence of actions. It must process millions of data points every second and quickly respond to a constantly changing environment. This requires a tremendous amount of both parallel and sequential computing.”

「運転の自動化がさらに進展していくにつれ、自動車は前面道路の情報の可視化、想定される無数のシナリオのシミュレーション、最適な行動選択等が求められることになる。それは、数秒間で数百万ものデータを処理することであり、絶えず変化する環境に即座に対応することが求められることを意味する。つまり、膨大な量の並列処理での計算かつ連続した計算能力が求められることを意味している。」

出典: Intel GO Automotive Solutions

中国の自動車メーカーも多く参戦してきている自動車開発競争ですが、エコカー開発に3,000億円を投じるなど、長安汽車は世界10強入りに向けて、その投資の動きをますます加速させています。また、これは個人的な見解になりますが、国有企業でもある長安汽車は政策面での優遇を受けやすいため、各種規制の整備との連動が重要になってくる自動運転技術の開発においては、そういった要素が有利に働くことも考えられます。

BMW社

画像解析技術を持つイスラエルのMobileye社、米国のIntel社と提携して自動運転技術の開発を行っていたBMW社ですが、そのラスベガスでの公道実験の様子が公開されています。今年に入ってから、自動運転技術開発に向けたそのグループに英国のDelphi Automotiveも参画していて、既にSAEレベル3での自動運転(ドライバーのバックアップのもとで、システムによって走行状況の監視が行われる状態)が一般道を含む公道で可能であるレベルまで完成しているようです。以下の記事では、BMW社の自動運転システムの今後の展開について触れられています。

“Delphi will act as an integrator of the driverless technology, making sure the system the group develops can reach multiple auto manufacturers quickly. Other carmakers are expected to sign on to use the platform in the coming weeks, said Richard Rau, a BMW director of product development.”

「Delphiは、グループで開発するシステムが確実に、あらゆる自動車メーカーに素早く届くようにするために、無人走行技術のインテグレーターのように機能することになります。他の自動車メーカーは、そのプラットフォームを使用するための契約を、来る数週間のうちに結ぶことが期待されています。と、BMWの製品開発担当者の一人は言います。」

同グループが開発する自動運転技術は、他の自動車メーカーの車両にも取り付けが可能になっていて、Intel社やMobileye社、Delhi Automotive社はもちろん、BMW社もまた、自動運転技術のプラットフォームを確立してしまおうという意図を持っているようです。また、その動きは予想されていたよりも、かなり早いように感じますね。

出典: TechCrunch – BMW, Intel and Mobileye bring Delphi in on their self-driving platform

このように、Ford、BMW、Intelの3社は全て他社との技術提携のもとで自動運転技術の開発を進めていることが分かります。とりわけ、Ford社がジョイント・ベンチャーを設立し、完全に独立させた上での自動運転技術開発に踏み切ったことは興味深いですね。こうした外部資源の積極的な活用を各社が進めていることで、自動運転技術の開発競争はますます加速していることが伺えます。