フィンランドから起業しやすい都市が選ばれたワケ

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

Rovio(ゲームAngry Birds製造)、Supercell(ゲームClash of Clans製造)、SUUNTO(精密機器メーカー)、POLAR(ウェアラブル端末)Linux オペレーティングシステム、MaaSの共通点、それはフィンランド発の企業や技術ということだ。

フィンランドは2018年度の『起業しやすい都市ランキング』で首都ヘルシンキが二位に選ばれたことで注目を浴びているホットな国だ。なぜ上位にランクインしたのか、今回はその秘密を探っていく。

起業家祭典「Slush」とノキア買収

フィンランドは、今でこそ世界で最も人口に対するデジタル・スタートアップの数が多い国だが、かつては起業に対して「大企業に入れなかった落ちこぼれが行うこと」というイメージが蔓延っていた。大手企業でキャリアを積むことが一般的で、起業のロールモデルが存在しなかったためだ。そのためスタートアップの立ち上げを考える若者はあまりいなかったという。

優秀な大学生はみな起業国内最大の企業・ノキアへ就職を希望していた。ノキアが同国の経済成長率の25%を担うなど同国の経済体制は大企業に依存していたため、危機感を抱く国民もいたという。(Fika)

周りに楽しそうに起業している人がいないから、スタートアップについて知ろうと思わない。だったら、活き活きとスタートアップに取り組む起業家のコミュニティを作ろう──。フィンランドの学生らはそんな思いを抱えてスタートアップイベント「Slush」を始めたという。開始当初2008年の参加者はたった300人だったが、現在参加者はおよそ60倍以上の2万人へと膨れ上がり、今や世界で二番目に大きなスタートアップイベントへと成長した(Finland as a startup hub)。

フィンランドにスタートアップの風を吹かせたのはSlushだけではない。ノキアもこの変革に一役買っている。Appleの台頭後業績が悪化し、2013年にMicrosoftに買収されたノキアは、過去10年でおよそ一万人の従業員を解雇した(Tech World)。

ただし、ノキアやMicrosift、そして政府は失業者対策として彼らに手厚い支援を行った。例えば、ノキアはBridge programを打ち出し、失業者たちに再就職先探しや新規分野の職業訓練、起業希望の人への資金提供最大2万5千ユーロ(約320万円)を支給(BBC)。一方、Microsoftは起業を使用とする元社員らにコーチング、講義、設備品、職場スペース、最大一人6万ユーロ(700万円)の手当を提供した。

結果、元社員らは次々と起業し、およそ1万社以上のスタートアップを立ち上げたという(ZDNet)。一見最悪とも思えたNokiaの解雇だが、解雇により優秀で国際経験豊かな人材がフィンランドの労働市場に溢れ、結果的にフィンランドにスタートアップブームを巻き起こすことになった。
Slushによるコミュニティ形成やノキア、政府、Microsoftによるスタートアップ支援がこの国のスタートアップ勃興の基盤にあることは間違いないだろう。

海外企業にとっても魅力的な都市・フィンランド

フィンランドがホットスポットになった理由は、Slushや元ノキア社員達へのスタートアップ支援だけではない。同国は海外企業、投資家、企業家にとっても魅力的だからだ。

フィンランド政府は国内企業と同様に海外企業にも補助金や公的支援を与えている。

  • 失業者で仕事を探している
  • 失業者ではないが一定期間収入を得る教育や国内企業で雇用された後、起業予定
  • 副業で起業していてそちらを本職にする予定。

に当てはまれば、毎月最大700ユーロ(約84,000円)の起業手当が受給可能となっている。希望者は無料で起業プログラムの受講もできる(TE-palvelut)。

また、法人税も20%と他のヨーロッパ諸国(フランス34%、日本29%)に比べて安く、人材面でもR&Dのホットスポットであるフィンランドには優秀な人材が多い。

  • ソフトウェアエンジニア5万人
  • ユーザビリティデザイナー1万人
  • ユーザー経験を持つデザイナー2万人
  • マーケティングプロフェッショナル1万5千人、
  • 製品開発者22万人

のように、数多くのスタートアップに必要不可欠な人材を保持している。

さらに、30歳以下のフィンランド人の90%が英語を話すということもあり、海外企業に対しても非常に優しい環境が整っている。実際、2017年度だけでも新たに180社の海外スタートアップがフィンランドで誕生している(Invest in Finland)。

投資分野でも注目を浴びており、2017年度では国内外の投資家やベンチャーキャピタルがおよそ3億4,900万ユーロ(およそ450億円)を同国スタートアップに投資した(Business insider) 。フィンランドのスタートアップ熱は国内だけでなく国外からの影響も大きいと言える。

このように過去の逆境を乗り越え、フィンランドは成長し続けている。世界初の5G対応のネットワークの導入を行うなど(TECHABLE)次々とイノベーションを発信する同国の勢いはとどまることを知らない。

お知らせ

来たる2018/7/31(火)、FINOLA(東京・大手町)にて「Trend Note Camp #16 フィンランドスタートアップ最前線」を行います。

人口550万人の小国・フィンランド。2014年、絶対的存在だったノキアがマイクロソフトに買収後、1万人超えがリストラの憂き目に合うも、起業家転身を決意させることに。フィンランド発・ヨーロッパ最大の起業家祭典「Slush」は毎年2万人を動員し、有名スタートアップを輩出。首都ヘルシンキは起業しやすい街2位に選ばれるなど、世界から注目を集めています。
当日は、フィンランドの起業支援や大学と連携したオープンイノベーション事例、注目すべきスタートアップ等ご紹介します。
※本イベントは日本語にて進行します。

<こんな方におすすめ!>
・フィンランドに進出したいスタートアップの方
・オープンイノベーションを推進している方
・投資対象の企業をお探しの方
・起業家コミュニティの構築をお考えの方
・起業支援に取り組んでいる方