大学発ベンチャーの圧倒的成長に必要な3つのポイント

Tadaaki Kimura  Tadaaki Kimura

監査法人でベンチャーのIPO支援を経験後、起業してから10年がたとうとしています。日々、大手企業と国内外ベンチャーとのイノベーション支援や事業のインキュベーションをさせていただくなか、ベンチャーの圧倒的成長には大手企業との連携が必要であることを肌身で感じています。

ちょうど先日、早稲田大学・ロバート J. シルマン ホールで行われたJASVE 日本ベンチャー学会の制度委員会にて「オープンイノベーション・エコシステムの構築~大企業とベンチャー企業の関係」というテーマでお話しする機会をいただいたこともあり、大学発ベンチャーに焦点をあて考察したいと思います。

会場だった早稲田大学・ロバート J. シルマン ホールは、同博士の寄付金により2002年設立。海外のベンチャー支援やインキュベーション機能、理工系分野の研究開発推進、海外との産学連携体制の拠点づくりを目指している。

会場の早稲田大学・ロバート J. シルマン ホールは、同博士の寄付金により2002年設立。海外のベンチャー支援やインキュベーション機能、理工系分野の研究開発推進、海外との産学連携体制の拠点づくりを目指している。

大学発ベンチャーは収益好調も、年間新設数は50-70社程度

みずほ総合研究所 調査本部が2016年に発表した資料によると、2005年度を境に年間の大学発ベンチャー新規設立数は50-70社/年に落ち込み、2014年度の時点で累計2,500社程度にとどまっています。ただし、収益面は好調で、2015年度の単年黒字ベンチャーは全体の55.6%と過去最高を記録しています。

上場している大学発ベンチャーは2014年時点で47社。上場や、収益増加の大学発ベンチャーが増えている一方、新設数が少ない背景には、

・大学に技術シーズを市場ニーズにマッチングさせる人材が不足
・大学の研究者に事業の立ち上げに必要なネットワークが少ない
・事業化に挑戦する研究等を支援するリスクマネーが不足
・販路開拓や収益確保が難しい

が課題といわれています。

ベンチャーの圧倒的成長に欠かせない3つのポイント

この状況を打破すべく、政府はベンチャーキャピタルへの出資や「ベンチャーチャレンジ2020」を展開。ベンチャー・エコシステムの知の拠点として大学を位置づけ、産学連携やひいてはグローバル展開を見据えています。仕組みが整うのはありがたいことではありますが、ベンチャー企業の圧倒的成長には、「大手企業との連携」「数字のコミットメント」「長期的視点」の3つを意識した事業戦略が必要と考えます。

1)大手企業との連携
ベンチャー企業にない一番大きなもののひとつは「信用」です。手がけているものに価値があったとしてもマーケットがすぐ飛びつかないのは、実績ないと判断しづらいという点が否めません。とくに企業相手のビジネスの世界は保守的な実績主義なのです。

これはベンチャー企業のPRやIRにも共通しています。ベンチャー企業単独で展開しても外部や株式市場から信じてもらえないことが多く、中でも本業と離れた飛び地のPRやIRはまったく相手にされません。

では、ベンチャー企業が言うことを信じてもらうにはどうすればよいか。答えは簡単です。信用されている大手企業を巻き込むことです。一番良いのは大手企業の口から発表してもらうことですが、大手企業と連携しているという事実だけで信用度は格段に上がり、期待値の土壌がよりよい形で醸成されます。

大手企業と連携のオープンイノベーションという形をとることで、与信や信頼面で担保してもらえるだけでなく、足りないリソースを補完しながら事業展開できるという意味において、ベンチャー企業側にとってもこの手を選ばない方法はないと考えます。

2)数字のコミットメント
ベンチャー企業はとくに定量的にも定性的にも約束を守り、信用を積み重ねていくことが大事です。例えば上場後であれば外部に公表している「対外予算」や「中期経営計画」がそれにあたります。これらを確実にクリアし上回っていくことが、外部のステークホルダーや株式市場から信任を得られる確実な道といえます。

3)一貫性のある長期的視点
とはいえ、世の中にないものを生み出そうとするベンチャー企業にリスクや小さな失敗はつきものです。明確な長期目標を共有した上で期待値を醸成し、マイルストーンの積み上げをひとつひとつ示していく必要があります。短期的な視点に制約されずに仲間を巻き込んでいくと、資本市場を活用したファイナンスを含む大きな事業を展開することが可能になります。

Teslaを先行していた、幻の大学発・電気自動車ベンチャー

上記を覆すようですが、技術は優れており、大手企業とのオープンイノベーションを取り入れたものの、事業化まで至らなかったケースもあります。

2008年創業の株式会社SIM-Driveは、「インホイールモーター」という電気自動車に関する最先端の技術を活用した、新進気鋭の慶應義塾大学発ベンチャーです。電気自動車で有名な米国Tesla社よりも先駆けて会社が立ち上がり、世界中がこの技術の事業化に関心を寄せていました。

株式会社アドライト 代表取締役・木村忠昭

株式会社アドライト 代表取締役・木村忠昭

私は設立時の社外役員として、同じくこの技術に期待を寄せる上場企業や大学を株主やステークホルダーに迎え、たくさんのメディア取材とともに華々しく船出しました。

その後、ビジネスモデルの構築から事業立ち上げまで関与し、大学に帰属するライセンスの活用を含む国内外の企業との契約交渉・締結を社内メンバーと共に実行。何十社もの大手企業とのオープンイノベーションにより、この技術を活用した電気自動車の試作車を何台も世に出していきました。

加えて、社内の発明審査会議の一員として知財マネジメントにも深く関与し、大学発の技術やノウハウを活かしたイノベーション創造に向けて積極的に支援を行っていました。

そこへ量産のハードルが立ち塞がります。試作車の製作とは比べ物にならない莫大な資金とリソースが必要になり、結局行き着くことができませんでした。

大学発に限らず、ベンチャーは時間が最も大切なリソース。長くは生きていけない生き物です。そこをブリッジするリスクマネーや社内外でチャレンジする人材のネットワーク、ひいては本丸でのオープンイノベーションの仕組みが必要で、日本企業の自前主義も時にはイノベーションの阻害要因になることを身をもって体感しました。

グローバルでの展開がイノベーションを加速

このような経験もあり、創業した株式会社アドライトでは、グローバルな連携を通じてよりインパクトのあるイノベーション創造を実現するエコシステムがつくれないか模索している最中です。

最近訪問したマレーシアでは、大学卒業後、半数が起業しているといいます。2020年先進国入りを目指す「Vision2020」実現のために、政府主導でスタートアップのエコシステムを構築。多民族国家で英語が話せる人口も多いことを生かし、グローバルから人を呼び寄せASEANでの事業展開を奨励しています。

大卒の約半数が起業!マレーシアのスタートアップを支える人々

大企業とスタートアップの協業にはマインドセットを変えることが必要

日本は良くも悪くも国内にマーケットがあるため、海外展開が遅れがちです。大学発シーズやベンチャー等、ステージも色々組み合わせることでイノベーションを起こし、事業が大きくなっていく必要性を感じています。

私たちはオープンイノベーションという文脈のもと、大手企業様向けにベンチャー企業のアレンジから事業化に至るまで並走して支援することをミッションに掲げています。事業自体もインキュベーションし、ワンストップで実現性の高い支援を目指しています。
新規事業の創出やアクセラレートプログラムを検討されている方はお気軽にご相談ください。