【解説】「Mobike」ビジネスモデル:ビジネスモデル・キャンバス

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部
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新規参入が相次いでいる “ライドシェア”の中でも中国発の最大手「Mobike」を、ビジネスモデル・キャンバスのフレームを使って考察したいと思います。

ビジネスモデル・キャンバスとは?

ビジネスモデル・キャンバスは、Alexander Osterwalder氏とYves Pingneur氏の共著『BusinessModel Generation』内で書かれた、ビジネスモデルを9つの要素に分解することで戦略を見える化するフレームワーク。仮説をもってビジネスモデルの理解から設計、実行といったプロセスを学べるとあり、多くの企業で使われています。

<ビジネスモデル ・キャンバス9つの要素>

Mobikeについて

2015年12月、交通関係の記者だったHu Weiwei氏が北京で創業後、2016年4月より上海でサービスを開始。それからわずか1年強で導入都市は150を超え、日本は中国、シンガポール、イギリス、イタリアに続く5ヶ国目のサービス展開国となります。2017年6月にはTencent率いるシリーズEの調達ラウンドで6億ドルを調達し、創業からの累計調達額9億2,800万ドル以上に。2017年6月現在、1日の利用ピーク回数2,500万回、運用500万台、登録者1億人にものぼります。

「ちょっとそこまで」を安価で提供できる理由

爆発的な普及の背景に、利用料の安価が一役買っています。初回に限りデポジット299元(約5,080円)支払い後、レギュラー30分1元(約16円)をWeChat Payで決済します。その価格帯が実現できる背景を3つの視点で解説したいと思います。

「Mobike」中国展開時

「Mobike」中国展開時のビジネスモデル・キャンバス
  1. 4年間メンテナンスフリーの自転車を自社で開発・製造。「乗っていてかっこいい」も演出

    IoTスマートロック(SIM搭載)を実装し、30以上のデザインや技術特許を取得。パンクレスタイヤを採用し、4年間メンテナンスフリーを実現。車重25kgと、通常のミニベロの2倍はありますが、遠隔ロックや一般の自転車と互換性のない部品を使うことで盗難防止にもつなげています。デザイン性の高さにも定評があり、9月にはミラノファッションウイークに参加。プロダクトデザイナー・深澤直人氏によるコンセプトデザインも発表されるなど、乗っているのがかっこいいという軸でもブランディングを確立しつつあります。

  2. GPSとインセンティブ付与で「乗りたいときに乗れる」を実現

    手軽な移動を実現するには、移動したい時にすぐそばにあって欲しいもの。この状況を作り出すべく、自転車に内蔵されているGPSとSIMで利用状況を把握し配車につなげる以外に、「クレジットスコア」というシステムでユーザへポジティブな行動を誘引。新規でアカウントを作成するとスコア100が付与され、自転車の故障を報告したら+1、友人を招待し登録してもらえたら+2と加点。逆にルール違反の駐輪をしたら-20という具合にスコアリングされ、スコア80未満に陥ると30分あたり100元と、通常の100倍に利用料が上昇する等のペナルティが待ち受けています。

  3. 精度の高い最適配置

    自転車の利用が増えれば増えるほど、当然スケールメリットが出ます。交通量の予測精度が上がることで、AIで将来の渋滞などを高い精度で予測できるようになり、自転車の最適配置がより精度が高いものに。9月28日には配車サービス「首汽約車」との連携を発表し、Mobikeアプリでの配車も実現しています。

増えすぎて追いつかない自転車配車

一方で、課題も出ています。中国ではスマート自転車が増えすぎて道がふさがれる等社会問題化していることを受け、9月7日、北京市当局はシェア自転車各社に新規の車両投入を禁じると通達。路上に止められた自転車の整理も命じる等の対応を迫っています。他の都市でも同様の動きが広がっていますが、既に街中にあふれる自転車を統制するのは容易ではないようです。

中国版ビジネスモデルを進化させて新たな収益源を見つける可能性

現在、上記の問題解決に繋がるビジネスモデルを海外展開を通じて築こうとしているのではないか?と見られています。
日本展開を例に詳しく見ていきましょう。行政や民間企業をKey Partnerとしたところから推察されるビジネスモデルをまとめたのが下記になります。

「Mobike」日本展開時

「Mobike」日本展開時のビジネスモデル・キャンバス

日本では中国のモデルにない「駐輪場所の確保」というKey Activityがあります。それを行うために行政をKey Partnerとして選んでいるといえます。実際、札幌では地元のコンビニエンスストア(セイコーマート)、ドラックストア、お菓子メーカー(「白い恋人」で有名な「石屋製菓」)、不動産管理会社等と連携し設置場所を設けています。

今後、利用者が増えていくと、設置場所のオーナーにとっては新たな集客や売上につながる手段になる可能性があります。Key Resourcesから新たなCustomer Segmentsが誕生するのです。例えば、土地所有者に初期費用を出してもらって自転車と設備を投資商品として買ってもらう。代わりにスマート自転車の利用に応じて利回りが出るようにする。加えて、タイアップ企画などで売上に繋げて広告費を取る。このような新たな価値を生み出すことで、現在、設置・運用コストを担保している行政の負担をなくすといった手法も考えられます。

以上がビジネスモデル・キャンバスから考えられる、Mobikeの今後のビジネス展開への考察です。設置場所へどんな価値が提供できるのか?といった視点で展開が進むと地域の活性化にも繋がり、社会課題を解決する仕組みに成り得ると思います。