クリエイターが集結するエリアにオフィスを構えるIoT特化型アクセラレータ
アジア圏で弊社が注目するスタートアップ市場である香港。今回は、IoTに特化したアクセラレータとして知名度も高い、Brincをご紹介します。
オフィスを構えるのは、香港島にあるPMQというクリエイターが集まる施設。共用エリアには日系クリエイターのものと思われる作品やグッズが飾られており、親近感がわきました。
Brincのオフィスは、細長いテラスのようなコワーキングエリアに沿うように、窓張りの部屋が並ぶ開放的な施設でした。Brincのスタッフ用の部屋があり、その奥に、Brincの力を借りながら開発に没頭する企業のプライベートルームが並んでいます。リゾートを思わせる空間が印象的で、夏場はテラスに出て作業をするメンバーも多いそうです(ちょっと熱そうですが・・・。)。
当日は、Head of Programを務める Hilary Szymujko氏にお話を伺いました。
Hilary氏は英国のアクセラレータプログラムseedcampの投資マネージャーから香港のBtoBアクセラレータプログラムblueprintの責任者を経て、2015年秋にBrincにジョイン。弊社とHilary氏は代表の木村と2015年夏に台湾で開催されたAPEC Accelerator Network Summit 2015で同じパネルで登壇して以来、懇意にしています。
全ての参加企業に最適なプログラムを
アクセラレータプログラムの期間は原則4カ月、Brincは数パーセントのエクイティを取得するあたりは一般的なアクセラレータと同じです。
ただ、Brincが他と異なることは、都度採用型でかつプログラムをカスタマイズしている点です。
通常スタートアップがアクセラレータプログラムへの参加を検討する場合、期限までに申し込みを行い数10社~数100社の間で行われる選考に勝ち抜き、「バッチ」の一員として参加する形式です。
「Brincが提供する一番大きなバリューは、在籍メンバーに対する教育プログラムなのです」と語ったHilary氏。よって、申し込みは都度受付を行い、Founderやメンバーとしっかり向き合って選考を行います。そして教育プログラムは各チームに対してフルカスタマイズして提供するそうです。
オンラインコミュニティを有効活用
読者の皆さま想像されるアクセラレータプログラムでは、提供されるコワーキングスペースに入り、教育プログラムを受けたりメンターの方々とディスカッションしたり、その後、数か月間の成果をDemo Dayという場で投資家をはじめとした方々へピッチする、といったものではないでしょうか。
Brincでは一般的な型にとらわれず、今世の中にある様々なリモートワーク用のコラボレーションツールを駆使してオンラインコミュニティを作っており、IoTの各バリューチェーンに必要なメンター陣も世界各国から選抜。登録チームは、現在香港やアジアだけでなくヨーロッパ、北米、フィリピン等に点在していることには驚きました。リモートワークという働き方は昨今国内でも浸透しつつありますが、それをフル活用しているところが印象的でした。
現在Brincでは17個のポートフォリオを手掛けており、そのうち4つは生産・販売を開始しています。例えば、SoundBrenner は、ミュージシャン向けに開発されたウェアラブルのメトロノーム。楽器を演奏しない方には馴染みがないかもしれませんが、ミュージシャンにとっては必須アイテムです。現在
アメリカで200以上のギターショップで販売されているそうです。
PillDrillは、高齢者向けのお薬管理デバイス。薬を時間通りに摂取したか忘れて可能性もある高齢者もこれがあれば安心です。こちらは、アメリカ大手薬局チェーンのCVSで発売されています。
他にも、Kiddoは、子供の健康情報を取得し親がわが子の健康管理を行えるウェアラブル端末など、多種多様なIoT端末が色々なところで生産されBrincを経由して世に発信されています。
IoTならではの取り組みも充実
IoT端末の開発では、ハードウェアの製造が必須であることは言うまでもありませんが、実際にご自身で部品を調達するとしたらイメージがわくでしょうか。IoTでは試作フェースを終えて量産化フェーズにたくさんのハードルがありますが、Brincはその支援も行っています。
Brincでは、香港という立地を生かして、世界各国からの参加者とともに中国・深圳へチャイナツアーを行っています。本ツアーでは、現地の起業家やスタートアップ界隈の方々と交流・情報交換を行うだけでなく、製造工場で調達を行う際の契約交渉のお作法など、より実践的な内容にも突っ込んでいるそうです。ここで工場とのネットワークや調達の流れを構築できれば、完成したプロトタイプを量産する時にも活用できそうです。日本企業に対しても、弊社とも連携してこのチャイナツアーのアレンジを行っています。
Brincは今後も世界各国からの素晴らしいアイディアを募集
「今後も積極的にポートフォリオを増やしていきたい」と語るHilary氏。現在はIoTに特化しているが、今後AR/VRといった領域にも幅を広げていく可能性もあるそうです。また前述の通り、積極的にオンラインコミュニティーを推進しているBrincでは地域・国籍は問わないため、日本からの参加ももちろん大歓迎とのことです。
ご興味のある方は、是非弊社までお問い合わせください。
Written by N.