Fintech領域スタートアップ育成プログラム「FinTech Innovation Lab」

 addlight journal 編集部

こんにちは。コンサルティングファームaccenture社が世界的に展開するFintech領域のスタートアップ育成プログラム「FinTech Innovation Lab」。2010年からはじまったこの取組は、現在はニューヨーク、ロンドン及び香港の世界3拠点で展開されており、香港はAPECエリアの拠点として、去年から育成プログラムを開始しています。

FinTech Innovation Lab

ご存じのとおり、FinTechといってもその領域は多岐にわたり、このプログラムでも ビッグデータやアナリティクス、モバイル、決済、リスクマネージメント、セキュリティ、コンプライアンス、ソーシャルメディア、ITインフラ、代替通貨を対象にしているとのこと。

プログラムは香港を拠点に12週間にわたり、いわゆるエクイティを取得するシードアクセラレータの枠組みとは少し異なるようです。参加チームはアクセンチュアのコンサルタントもからメンタリングを受けられるようで、コンサルタントとアントレプレナーは相反するようにも思いますが、FinTech領域においては金融機関との連携というもの大きなテーマであることから、その言語や文脈の通訳としては機能するのかもしれません。合わせて、パートナー金融機関として、HSBCやChina CITIC Bank、Standard Chartered、UBS、メリルリンチ、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーなどが参加しており、こういった金融機関やその役職の方々と接点を持てるというのが参加の大きな魅力のように感じます。

さて、このFinTech Innovation LabのAPECエリアの2015年のdemo dayが、来週11月4日(水)に香港で開催され、ご招待頂きました。本日は、その参加チームについて簡単に紹介させて頂きます。


まずは今年参加の7チームの紹介です。

―2015年 FinTech Innovation Lab(APECエリア) 参加チーム―

Bitspark:ビットコイン及びブロックチェーンの技術を使って送金できる新興国向けスタートアップ。新興国間の送金などが手数料安くできそうです。香港を拠点にアジアに展開している。

BondIT:機械学習の技術を使って、自動で投資ポートフォリオの管理や最適化を行えるSaaS型サービスを提供するイスラエルのスタートアップ。メインは資産管理などを行う運用担当者などプロフェッショナル向け。

Ironfly Technologies:二人の化学者によって設立された香港を拠点にするスタートアップ。神経科学の技術などを応用してリアルタイムに資産データの分析・管理を行うツールを提供している。

Moroku:携帯ゲームを使って老後の資産運用のためのファイナンスリテラシーを向上させるサービスを提供するシドニーのスタートアップ。銀行向けにオンラインバンキングサービスを開発するためのサポートツールも提供。

Sparro:既存の銀行のインフラをそのまま使って、国際間送金を安価に行うことができるサービスを提供するオーストラリアのスタートアップ。運営元が現金との交換を保障する仮装通貨Rippleのプロトコルを活用している。

Sybenetix:ロンドンをベースに、ヘッジファンドやファンドマネージャー向けに企業行動分析のサービスを提供している。今回はアジア地域への事業拡大のため本プログラムに参加しているとのこと。

Uniken:インド発の金融機関向け情報セキュリティーのスタートアップ。REL-IDと呼ばれる、企業と従業員間や、企業とエンドユーザ間の信用できるデジタルプラットフォームを提供する。


ちなみに、APECエリアの昨年の参加チームは、下記8チームです。ご参考までに。

―2014年 FinTech Innovation Lab(APECエリア) 参加チーム―

Advanced Merchant Payments (AMP):イギリスや香港やフィリピンの銀行や金融機関が新興国の中小企業に対して、保証のない短期融資を安価かつ効率的に行うことをサポートする香港発のスタートアップ。

AtCipher.com:データを暗号化してクラウド上に保管する、香港発の情報セキュリティのスタートアップ。クライアント側で暗号化されてクラウドサーバに送信される仕組みのようです。

Beijing Wecash Wonder Technology Co. Ltd. :中国の約6億人のモバイルユーザのモバイルデータを分析することにより、中国人のユーザーの与信チェックを15分で行うことができるモバイルアプリケーションを提供。

Finsuite:ローンの申請に必要な事業と財務の分析を効率的に行うソリューションを提供するメルボルン発のスタートアップ。企業間の関係性を分析するモバイルプラットフォームと、財務資料などをスキャンして分析する文字認識サービスがある。

I Think Security Ltd.:企業データの流出や盗難を防止するサーバーセキュリティサービスを提供するオンタリオ州のスタートアップ。主に富裕層の個人を対象にした金融機関向けのサービスのようです。

iDGate:金融機関向けに、金融機関に代わってオンライン個人認証のプッシュ通知をモバイルに配信するサービスを提供する台北発のスタートアップ。セキュリティデバイスやSMSによる認証よりも安価に個人認証 を行うことができる。

Jocata:洗練されたKYC(個人認証のための手続き)とAML(マネーロンダリング防止)の機能をオンプレミスまたはプライベートクラウドで提供するインドのスタートアップ。
QxBranch:量子コンピューターを使って金融機関向けのポートフォリオ最適化や株式市場分析やリスクモデリング分析などを行う、未来に先駆けたサービスを展開するスタートアップ。香港をはじめ世界各国に拠点を持つ。


APECエリアでは昨年と合わせてこれまでの参加チームで計28.5M USDの資金調達に成功したとのことですので、まだこれから成長してゆくチーム達と思われます。いくつかオーストラリアのチームがあり、この国のスタートアップはfintech領域が得意のようです(日本にもいくつかありますね)。日本チームが参加していないのは残念ですが、これからの展開が楽しみです。