アドライト流、新規事業コンサル ~品質機能展開を応用する10のプロセス~

 addlight journal 編集部

前回は、品質機能展開のフレームワークとその概要についてご紹介させて頂きました。今回は、そのより具体的な手法として、我々が実際に大企業の事業開発プロジェクトに関するコンサルティングにおいて行っている品質機能展開の応用事例についてお伝えしたいと思います。

新規事業開発における、品質機能展開の応用事例

例えば大企業における新規の事業開発プロジェクトにおいて我々が品質機能展開を応用した支援を行う場合について、具体的には、以下の10のステップで進める方法があります。

1.顧客の要求品質(顧客ニーズ)の洗い出し
横軸にはマーケットインの視点で、顧客の要求品質すなわちニーズ(顧客の解決したい課題)を細分化したものを網羅的にブレイクダウンして記入していきます。ここで、特に今までにないサービス等の場合には、要求品質を「網羅的に」抽出することが難しい場合もあるのですが、そのような場合には一定のペルソナによる仮定を置いて進めることになります。その際に、要求品質の洗い出しのためにチームメンバーでワークショップを行い、ブレインストーミングで課題を抽出することも有効です。

2.要求品質の優先順位設定
1のプロセスで網羅的に抽出した要求品質に優先順位を設定します。例えば1から9までのスコアで要求品質の各項目を全て評価した上で、全体を100%とした要求品質の相対値を求めていきます。このスコアが高いと、顧客がその要求品質に求める期待(重要度)が高いことを表します。

3.サービスの機能の洗い出し
縦軸には、プロダクトアウトの視点で、そのサービスが持つ機能を細分化して網羅的に記入していきます。その際に、すでに実装されている機能と合わせて、今後実装予定の機能も加えておくと、将来の機能についての示唆も得られるため効果的です。

4.機能の開発優先度設定
3のプロセスで網羅的に抽出した機能にについて、それらの開発に対するプロジェクト内での優先度を設定します。例えば1から9までのスコアで機能の各項目を全て評価した上で、全体を100%とした開発優先度の相対値を求めていきます。このスコアが高いと、そのプロジェクトがその機能に対して認識する重要度が高いことを表します。

5.要求品質に対応する機能をプロット
ここで、要求品質を横軸、機能を縦軸としたマトリックス表を作成し、現時点において該当する要求品質に該当する機能をプロットしていきます。その際に、各項目の要求品質に対しその機能がどの程度対応しているか、◎○△で重み付けをして入力すると、よりきめ細かく要求品質と機能との関係をつかむことができます。なお、サンプル図の品質機能展開表ではランダムにプロットしています。

6.品質重要度の算出
5のプロセスでプロットした対応関係(◎○△)を横軸で集計して品質重要度の算出をしていきます。その際に、例えば◎は5スコア、○は3スコア、△は1スコアなどと重み付けを反映するように集計します。この品質重要度のスコアが高いと、各要求品質に対応する現時点の機能が充実していることを表します。そして、その品質重要度の全体を100%とした品質重要度の相対値を求めていきます。

7.品質重要度ギャップの算出
以上のプロセスを踏まえ、このプロセスでは、横軸のマーケットインの観点から品質重要度ギャップを算出します。これは、各要求品質の項目の「品質重要度(相対値)-(要求品質)優先順位(相対値)」の式で算出し、この値がプラスの場合には品質重要度(相対値)が優先順位(相対値)よりも高い、すなわち各要求品質に対応する機能が顧客の求める各要求品質の優先順位を上回っており、対応する機能が顧客を満足させていることを示します。逆にこの値がマイナスの場合には品質重要度(相対値)が優先順位(相対値)よりも低い、すなわち各要求品質に対応する機能が顧客の求める各要求品質の優先順位を下回っており、対応する機能が顧客を満足させていないことを示します。その際に、これらはあくまで各項目間の相対評価の結果であることに留意する必要があります。

8.サービス重要度の算出
次に5のプロセスでプロットした対応関係(◎○△)を縦軸で集計してサービス重要度の算出をしていきます。その際に、例えば◎は5スコア、○は3スコア、△は1スコアなどと重み付けを反映するように集計するようにします。このサービス重要度によって、各機能が現時点の要求品質をどの程度満たしているか定量的に把握することができます。そして、その品質重要度の全体を100%とした品質重要度の相対値を求めていきます。

9.サービス重要度ギャップの算出
このプロセスでは、縦軸のプロダクトアウトの観点からサービス重要度ギャップを算出します。これは、各要求品質の項目の「開発優先度(相対値)-サービス重要度(相対値)」の式で算出し、この値がプラスの場合には開発優先度(相対値)がサービス重要度(相対値)よりも高い、すなわちその機能を開発するために認識する優先度がその機能にて満たすべき顧客ニーズの重要度を上回っており、顧客の期待に応えるために十分な重要性をもってその機能の開発が進められていることを示します。逆にこの値がマイナスの場合には開発優先度(相対値)がサービス重要度(相対値)よりも低い、すなわちその機能を開発するために認識する優先度がその機能にて満たすべき顧客ニーズの重要度を下回っており、顧客の期待に応えるために十分な重要性をもってその機能の開発が進められていないことを示します。その際に、こちらも品質重要度ギャップと同様に、あくまで各項目間の相対評価の結果であることに留意する必要があります。

10.事業開発活動へのフィードバック
最後に、完成した品質機能展開表を俯瞰し、プロジェクトメンバー間でこの情報を共有した上で今後の事業開発活動への示唆を話し合うことができます。例えば、品質重要度ギャップが大きくマイナスに出ている項目においては、顧客ニーズの優先順位と比較して、サービスの関連度合いが低いため、サービスを見直しこの顧客ニーズを満たすような機能追加が必要である、であったり、サービス重要度ギャップが大きくマイナスに出ている項目については、顧客ニーズとの関連性が強いが機能の開発優先度が低いため、この機能における開発優先度を上げて事業開発活動をすすめるべきである、など色々な示唆を得ることができます。
この活動は、あくまで特定のプロジェクトを大局的に俯瞰し、全体の中で相対的に満たされていない顧客ニーズや、全体の中で相対的に開発を見直し注力すべき機能を抽出し、改めて事業開発活動を見直すために有効です。これをふまえ、項目ごとにより個別具体的な事業開発活動の改善に役立てることができます。



これはあくまで我々が個別に品質機能展開のフレームワークを応用している一例にしかすぎないため、個別のケースへの応用方法などにつきましては、お問い合わせ頂ければと思います。

以上、前回と合わせて、事業開発プロジェクトについての品質機能展開についてお伝えさせて頂きました。次回も引き続き、色々な角度からプロジェクトをテーマにご説明します。