【事例】社内ベンチャーを経て初の分社化。想いを形にするための事業計画―株式会社ポーラ・オルビスホールディングス

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

1929年の創業以来、業界のパイオニアとして様々な化粧品を製造・販売してきた株式会社ポーラ。同社を擁する株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス(以下ポーラ・オルビス ホールディングス)では2017年度から社内ベンチャー制度を採用し、新規事業の立ち上げや新ブランドの設立といった取り組みを積極的に展開。二期目にして株式会社encycloが設立されることとなりました。

社内ベンチャー制度を経て株式会社encycloを立ち上げた水田さんと齋藤さん、そしてポーラ・オルビス ホールディングスの総合企画室の課長を務める廣川さんの3名にお話を伺いました。

会社紹介:株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス

ポーラ・オルビスグループでは、「感受性のスイッチを全開にする」という理念のもと、化粧品を中心とした「美と健康」に関わる事業を展開しています。

1929年創業の(株)ポーラ、通信販売と店舗販売を展開するオルビス(株)を中心に、多様なブランドと多角化された販売チャネルによって、 より多くのお客さまにご満足いただけるよう事業を拡大しています。

数多くの社内公募から承認を勝ち取り新規事業の立ち上げへ

社内ベンチャーで新しく会社を立ち上げたお2人にお伺いします。現在はどのような事業を展開されているのですか?

水田さん:現在、私たちはがん経験者向けのビューティー事業を展開しています。この事業を始めようと思ったのは私自身が2012年に子宮頸がんを罹患したことがきっかけです。子宮がんなどの婦人科がんや乳がんの後遺症として、脚や腕が病的にむくんでしまう「リンパ浮腫」という症状があります。一度発症すると完治が難しいと言われていて、治療のためには、圧迫力の高い弾性ストッキングやスリーブを着用する必要があります。

そのストッキングは機能的ではあるものの、ファッションやビューティーという視点ではあまりフォーカスがされていないと感じ、ショックを受けました。自分の経験を活かして、病や後遺症など、思いがけないことと向き合う人たちにも”ビューティー”を楽しんでもらいたい想いでこの事業を始めました。

現在は第一弾としてリンパ浮腫の方に向けて、「ケアと美しさを両立した」医療用弾性ストッキングの開発・販売を始めたところです。

➖➖今回社内ベンチャー制度を経ての創業となったと伺っていますが、数多くの案がある中でどのような経緯でお2人の事業が選ばれたのでしょうか。

廣川さん:一度の社内ベンチャー制度で50案ほど集まります。その中からまずは取締役が10案ほどに絞ります。社会的意義のある事業も多く集まり、その点では彼女らのアイデアは一次審査から非常に評価が高かったですね。二次審査では外部の方にも関わってもらったのですが、事業そのものの社会的意義だけでなく彼女たちのビジネスプランや熱意に関しても申し分なく、結果、二次審査も通過という形になりました。

➖➖第三期となる今期は初の分社化として会社を設立されたということですが、その理由を教えていただけますか?

廣川さん:水田・齋藤のやりたいビジネスは困った方々に寄り添っていくというビジネス。取締役会としてもそれを後ろからバックアップするような形の事業にして欲しいという要望がありました。その後もスキームを総合企画室で色々と考えたのですが、資金面も踏まえて総合的にサポートしていく形であれば分社化が最善の選択肢だろうと考え、新会社を設立する運びになりました。

未経験分野であった0→1の立ち上げのため、アドライトにサポートを依頼

➖➖今回アドライトは最終選考の少し前から入らせていただきましたが、弊社選んでいただいた理由をお聞かせいただけますでしょうか(ポーラ・オルビスHD社に対し、新規事業計画の策定を支援。取締役会でのプロジェクトの承認を得るための伴走型のコンサルティングを提供)

廣川さん:0→1をやれる人材が社内に多くなく、知見が少なかったため、元々外部のコンサルタントに依頼をしようと考えていました。

前回の社内ベンチャー制度の時もコンサルティングを利用していたのですが、伴走という形ではありませんでした。今回の場合はスピード感ときめ細やかさを重視して、伴走型でサポートしてくれるコンサルタントを探すことにしたのです。

その中で3社ほど検討したのですが、アドライトさんはスタートアップに特化されているだけでなく、社内ベンチャー制度という大企業型の制度の中で支援するという姿勢が前面に出ていたので、求めていたコンサルタント像にまさにぴったりだと感じてお願いしようと決めました。

➖➖それではプロジェクトについてお伺いします。私たちも最終的な取締役会の承認を得るための経営計画のブラッシュアップといったところからサポートに入らせて頂きましたが、特にどんなところを期待されていましたか?

廣川さん:水田も齋藤も現業を抱えながら「新規事業を自ら行う」ことが初めてだったので、経験のない2人をプロの力で導いてもらう点に期待をしていました。やはり私たちのような内部の人間が指導するよりも外部のプロに指導してもらう方がずっと説得力もあるので。どこまで寄り添っていただけるかと思っていたのですが、アドライトさんは感動を覚えるほど期待以上にサポートしてくださって、とても感謝しています。

事業への想いを尊重しながらもビジネスへ落とし込み、第一プロダクトの開発を支援

➖➖水田さん、齋藤さんにお尋ねしたいのですが、アドライトのサポートを実際に受けながらプロジェクトを進めてきての感想を教えてください。

齋藤さん:現業をしながらプロジェクトを進めなければいけない中でどのように有効的に時間を使うかが課題でした。その中でアドライトさんは週に1度必ず定例会を実施してくれたので、兼業での新規事業立ち上げがスタックせず助かりました。これまでアドライトさんが蓄積されてきた新規事業の立ち上げに関する知見を活かしてターニングポイントに沿って何をしていけばいいかを明確にリードしてくれたので時間も管理しやすくなりました。

水田さん:自分のビジネスプランって自分にとっては唯一無二で、「人生これにかけるんだ」という気持ちで取り組んでしまうので、本を読んで事業の立ち上げ方を勉強しても自分の想いをビジネスモデルとして具現化することを難しく感じていました。ですが、アドライトさんは私の話を遮ることなく、想いを吐き出すまで聞いてくださったのがとても印象的でした。そのうえで、方向性の提案から足りていない部分の客観的な指摘までを一貫して行ってくれたことがすごく助かりました。原動力となる想いを潰さないようにしながらビジネスを正しい方向へ導いてくれて、ビジネス面だけでなく、人間力の高さにもとても助けていただきました。

➖➖ありがとうございます。様々なサポートを受けて努力を重ねた結果、無事に取締役会でも承認を得られたとのことでしたが、その後はどのような流れで事業を展開されていきましたか?

水田さん:承認を得た後、取締役会の次の日には2人とも辞令が出て、2020年の年初から専業で事業をやらせてもらえることになりました。

齋藤さん:事務局が事業化を承認されてもされなくても我々二人の立場が不安定にならないように陰ながら動いていてくれていたんです。

廣川さん:元々は企画が通ったら総合企画室に異動というパターンが通常で、当時は2017年のベンチャー制度で採用されたメンバーがいました。そこでまずはスタンダードに動かしていこうということで、異動して専業でスタートさせることにしました。

水田さん:異動して専業でやらせてもらえるのはとてもありがたかったのですが、実際に専業でやるとなると、今までと違ったプレッシャーも生まれて、「さあ、何からやろう」って(笑)。

齋藤さん:そこでもう一度計画を作ろうとなったのですが、アドライトさんにアドバイスを頂いた資料を活用して0から整理しました。その中で水田がやりたかった「リンパ浮腫」のストッキングの開発を難しそうだけどチャレンジしようと決めました。

水田さん:その後は実際に「リンパ浮腫」を患っている方と医療従事者へのインタビューに注力しました。インタビューを続けながら仮説と検証を繰り返し、事業計画を書き直すということを続けていました。

事業を通して潜在的な美容の課題を解決していきたい

➖➖社内の新規事業から分社化までの経緯を教えてください。

廣川さん:2019年12月頃の取締役会の時に事業化の形態についての検討指示が出ていたのですが、1月2月頃に新会社の話が持ち上がり、3月の取締役会で会社を作らせてくださいと提案しました。

水田さん:それから5月7日に登記をしたのですが、それは私が8年前にがんを告知された日なんです。

当時は人生がどん底に落ちた日だと感じていたのですが、この事業を始めるきっかけになった日として上書きをしようという思いを込めて選びました。コロナの真っ只中で自宅にいながらの登記だったので「本当に登記されたんだよね?」って齋藤さんに連絡したことも(笑)。

廣川さん:事務局としても社内ベンチャーで採用したメンバーを総合企画室に全員異動させることには限界を感じていた部分でもあったので、この分社化の動きは今後の選択肢に使えるかもしれないという思いもありましたね。

➖➖5月に会社を作られて12月にサービスをローンチするとのことですが、それまでの商品開発はいかがでしたか(取材:2020年11月)

水田さん:2月くらいに「リンパ浮腫」の方のためのビューティープロダクトを作ると決めて、まずはストッキングの開発を検討しました。私は化粧品の商品開発はしていたのですが、医療用のストッキングを作るとなると、どこにどうアプローチすればいいのかさっぱりわからず、製造メーカー様の開拓にも時間がかかりました。

それからはたまたまいいメーカー様と繋がることができて、コロナ渦ということもあってZoomなどを使って何度もやりとりをさせていただいて、半年ほどで商品を発売できるまで辿り着きました。

➖➖ちょうどコロナの真っ只中に立ち上げが重なり苦労されることも多かったのではないでしょうか。

水田さん:大変なことももちろんありましたが、おかげでオンラインで何十人もの方にインタビューができて、関東だけでなく地方に住まれている方の声も聞くことができたというのは大きくプラスになったのではないかと感じています。

齋藤さん:地方の方の中には医療体制が整っていない影響で「リンパ浮腫」に気づくのが遅れて悪化させてしまった方もいて、東京と地方の医療格差があることも知ることができました。もし東京だけの話を聞いていたら偏ったビジネスになっていたかもしれないと思うと、より実情に合ったビジネスを作るための大きなきっかけになりました。

➖➖最後に事業の展望についてお聞かせいただけますか。

廣川さん:事務局としての展望は、社会的に意義が高い事業を生み出しながらも、将来的にグループの柱になれるようなブランドを社内ベンチャーとして創出していきたいですね。

水田さん:まずは「リンパ浮腫」の方がビューティーやおしゃれを諦めることなく自分らしく過ごせるようにストッキングの販売から始めたのですが、多くの方のお話を聞くうちに様々な困りごとや希望があることがわかってきました。今後はレッグウェアに限らずいろいろな商材をラインナップしていきたいと考えています。私はリンパ浮腫の当事者なので自分がこんな物があればよかったと感じていた商品の開発をしていますが、他にも解決されていない課題もたくさんあると思うので、まだまだ眠っているビューティーのニーズを解決していきたいと思っています。

アドライト株式会社