台湾スタートアップ近況(appworks 13th demoday )

 addlight journal 編集部

こんにちは。今回は台湾発のアクセラレーターであるAppWorks(之初创投)の取り組みと、その第13回目となったプログラムの様子をご紹介します。2016年11月8日に台北市内のHNBK International Convention Center(华南银行国际会议中心)にて同プログラムのDemo dayが開催されました。参加チームは全27チームで、その国籍は台湾、香港、米国、日本と多様であり、分野もAI、IoTといった最新分野から、流通、メディア、教育分野など非常に多岐に渡っています。

APPWorksは2009年に立ち上げられ、2010年からそのアクセラレーション・プログラムを開始しています。4か月に渡る各プログラムは半年ごとに参加チームを募っており、メンターには弁護士などの専門家の他、e-commerceサイトの創業者なども加わっているようです。

プログラムの内容としては、24時間開放されている信義地区のオフィスにおいて、毎週月曜日に進捗状況などを確認する会議を開催、火曜日にはデータの分析法や広告などに関する講義を行い、水曜日には講演会を実施。また、毎週金曜日にはゲストを招いた飲み会も開催されるようです。とても楽しそうですね。さらに毎月一回、過去のプログラムに参加していた卒業チームを招いて参加チームと交流、参加チームの課題のクリアのために必要なあらゆる機会を提供してくれています。

プログラムの開始から4か月目には、1000人近い投資家や各業界の代表、メディアを招いて、いよいよDemo dayが開催されます。

AppWorks HP

それでは、第13回目のプログラム参加チームをご紹介します。

1.ShopBack

台湾、シンガポールから、マレーシア、インドネシア、フィリピンといった地域で展開するキャッシュバックサービス。成果報酬型。

2.CreationCell

「VAGO」という荷物用真空パックの販売。主に旅行者をターゲットにする。電池で駆動できるため、電源がなくても使用可能。サイズも非常にコンパクトで携帯性に優れた製品になっている。日本のクラウドファンディングサイトでも発売中。

3.Ztore

香港において、食料雑貨の即日配達を専門にしたサービス。取り扱いは食料品からキッチン雑貨に至るまで多様で、時間指定での配達を受けることができる。

4.好食 HOJIA

飲食店と学校をつなぐための仲介サービス。学生や教職員は学校内での場所を指定するだけで、デリバリーサービスを受けられる。学生がまとめて校内に食事を発注できる。

5・EventXtra

イベント開催を総合的にマネージメントするためのサービスで、参加者管理を主な機能として、イベント後の簡単なフィードバックや、次のイベントの告知等も可能。

6.FRNCi

個人旅行者に対して、自身の興味・言語・そのほか行程上の必要性などに応じて現地の人と友達になることのできるサービスを提供。現地の人と一緒でなければできないような日常体験も可能にし、旅行を唯一無二のものにしてくれる。

7.MARK

ビジネスパーソン向けのタイムマネージメントツール「MARK Calendar」の提供。言語学習できるチャットボットを備え、スケジューリングをサポートしてくれる。香港出身のチーム。

 

8.Lawsnote

法律を専門にした検索エンジン。現在は台湾国内のみを対象にしている。

9.29th Century

E-Commerceの運営者に向け、必要に応じてデータ分析の専門的アドバイスを提供するサービス。各データはアクセスしやすい形でクラウド上に保管される。

10.Colorgy

学生向けに、時間割およびその他の行事を管理するためのアプリケーションの提供。台湾の全校の授業をおさえていて、学生はキーワードを入力するだけで時間割が参照できるようになる。また、空き時間に参加可能な活動を教えてくれる機能もついている。

11.WHATSQUARE

アジアにおいて、衣類・生活用品販売業者が会話を通した販売を行うことを可能にしているサービス。ショップ向けに、2言語に同時対応したチャットボットを提供する。チャットボットの形式は選択式。

 

12.BetweenGos 

台湾の女性が仕事と家庭を両立することを容易にするための情報プラットフォーム。コラム形式で様々な人物が紹介されている。

13.Soul Hackers Labs

売上の分析。表情や言葉遣いから感情分析を行えるツールの提供

14.Amabie

アメリカ系アジア人の女性チームによるAsianビューティーに絞った、ユーザー同士のレビューサイト。質問も投稿できる他、購入したい場合はバイヤーのサイトと値段を比較可能な形で紹介してくれる。このサイト経由で化粧品の販売も行っている。英語がとても堪能なチームでした。

15.VROOM 公式サイトなし

レーシングドライバーのための、VRを利用したヴァーチャルリアリティでの訓練ツールを提供。これにより、安全にサーキット上での走行を練習できる。実際に乗らせてもらいましたが、酔うような感覚がありました。

16.Goaway 公式サイトなし

自転車で旅行する際に、その経路を記録し仲間と共有できるツールの提供。ライフログのようなUX/UIとなっています。

17.加洲陽光  (2016/11/17 現在閲覧不可)

北米やヨーロッパの食品輸入代理店。チョコレートや果物など様々な食品を扱い、百貨店やスーパーのみならず野球チームとも契約している。

18.Movier 

映画の口コミサイト。そのユーザー数の多さが最大の武器で、Appを普及させることでさらにユーザー数を拡大させていくことを狙っている

19.Mobzii

子供がアプリ上で遊びながら学習するためのAppの開発・提供。例えば身の回りにある色をコピーしてそれをアプリ上に反映できるデバイスなどを備え、子供のクリエイティビティを育てることに主眼を置いている。ハードウェアプロダクトもローンチしている。

20.守寫字

ユーザーがオリジナルのフォントを作成でき、それをネット上のあらゆるサービスにおいて使用できるようにするサービス。フォントを専門に作成しているクリエイターも多数登録されていて、ユーザーは好きな字体を使用することもできる。

21.Wota Inc.

カスタマーごとに特別に設計されたハイエンドなバトラー兼コンシェルジュサービスが受けられる。内容としては、旅行から日常での移動、買い物まで多岐に渡り、ヘや高級車での移動、ヨットやレースカーでのレジャーなどラグジュアリーなものが多い。ベータ版リリース済とのことでした。

22.Trid Kingdom

小中学生向けに、国内外でのイノベーション及び起業に関する授業を提供。さらに、学校カリキュラムに入り込んで、長期的にメンタリングしていくサービスも提供している。創造的な製品設計から、製造過程、そしてマークティングに至るまで具体的なステップで生じうる課題について、子供達が協力して問題解決にあたる能力を伸ばすプログラム内容。米国シリコンバレーのカリキュラムを使っている。

23.Peer 

台湾における不登校児童や自殺などの社会問題を背景に、学生の交友関係を改善するために登場したソーシャルイノベーションサービス。学生の交友状態や、各学生の性格的特性などを正確に把握するためのツールを提供。30分ほどで完了するアンケートとその分析用アプリが主なツール。いじめ対策などに使えるサービス。

24.Travel Moment

バックパッカーの為の旅の情報サイトで、5分以内にあらゆる質問の答えが受けられるほか、バディを探すこともできる。

25.DT42

すべてのデバイスがAIを利用できるようにするためのシステム開発。例えば、人間の行動を認識・学習し、そこから行動を予測する機能など。具体的な製品としては、人の目の代わりとなって、視覚障碍者に道路状況を逐次伝えるシステムや、人の動きを監視しながら照明のオン/オフをコントロールするシステムなどが設計されている。香港のAIに特化したアクセラレーターzeroth.aiにも入っている技術者中心のチームで、技術力には定評あり。

 

26.Butbeautiful

生活の中のあらゆるデザインが、新しい時代に適応していくように見直していくという社命のもと、IoTの可能性を探っていくことをテーマに掲げている。具体的製品としてはIoTよるフロアに埋め込める体重計などを提供している。計測という意識的動作を行わなくても、体重測定が自然と行われるような製品コンセプト。

27.SMISSION

空港からホテルまでの荷物の輸送を代行するサービス。現在は台北、バンコク、広州、アモイ、深圳でサービスを展開していて、料金は一律380NTD/1 luggage (2016年11月17日のレートで1300円ほど)現在はこのチームのメンバーが運んでいるそうです。

最後に、AppWorksが2016年より開始しているAppWorks Schoolについてご紹介します。AppWorks Schoolは未来のIT人材を育てること理念に掲げ、満20歳以上で台湾に居住している人を対象に全13週間の日程で開催されています。その目的は、AppWorksのアクセラレーション・プログラムに参加したスタートアップをはじめ、それ以外のIT企業にも、専門的な知識を持った優秀な人材を供給することにあるようです。プログラムの期間中は毎週月曜日から金曜日、9:00-18:00に教室で授業が行われ、それ以外の時間で課題をこなします。1週間の学習時間が75時間と設定されているので、授業時間以外に最低でも30時間の学習が必要ということになります。スケジュールはそれなりにハードなようですが、何よりも特徴的なのが、プログラムへの参加費が無料であるという点です。授業料はAppWorksが全額負担し、将来的に人材紹介料とう形で企業に負担してもらうというスキームのようです。

AppWorks School

このように、アクセラレーション・プログラムだけでなく、人材育成にも力を注ぐAppWorks。今後どのようなスタートアップが誕生してくるのか、その活動に注目していきたいですね。
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