会計システム導入前になすべき4つのこと

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

はじめに

本コラム(前編・後編)では、会計システムの刷新を予定している皆さまに向けて、会計システムを刷新する前になすべき4つの事項について述べていきます。皆さまの環境においては、現在何かしらの会計ソフトを使っている、またはクラウドサービスを使っているなどさまざまかと思います。そのような中、何から手をつけようか悩まれている方、あるいは既にプロジェクトを立ち上げられた方も、本コラムを参考に今後のプロジェクトを円滑に進めていただけたら幸いです。

会計システム導入前になすべきこと

会計システムを導入する前になすべきことは以下の4点です。

(1)プロジェクトを立ち上げ、コンセプトを決める
(2)自社の状況を整理する
(3)要求事項をとりまとめる
(4)要求に見合う製品・サービスを選定評価する

前編では、(1)と(2)に焦点をあてて解説します。(3)と(4)については後編をお読みください。

それでは、上記4点について、順番にみていきましょう。

(1)プロジェクトを立ち上げ、コンセプトを決める

第一ステップとして、会計システム刷新のためのプロジェクトを立ち上げます。プロジェクトを構成する要素として、体制をはじめ、マスタスケジュール、会議体、プロジェクト管理方法など複数あります。ここで大切なのは、プロジェクトの幹となる“コンセプト”です。プロジェクトのコンセプトには下記を含みます。

1.プロジェクトの背景
2.プロジェクトの目的
3.プロジェクトの優先事項(QCD)

会計システムの刷新を検討されているからには、何かしらの背景があると考えられます。例えば、ハードウェアの老朽化、機能が現行業務にフィットしていない、システム運用が負担になっている、などの主たる問題を背景にして、プロジェクトが立ち上がります。

プロジェクトを立ち上げる際に重要なのは、これら自社が抱える問題背景を、プロジェクトの目的に一直線でつなげることです。総花的にプロジェクトの目的を提起するのではなく、ハードウェア刷新、機能適合、運用負担減など的をしぼったプロジェクトの目的を提起することが重要です。例えば、「システム運用の負担を軽減するため、ブラウザーで利用できるプライベートクラウド型の会計システムを導入する」などです。さらに、プロジェクトを進めるうえでの優先事項について、プロジェクトの意思決定者や責任者と認識をあわせておくことが重要です。

ここで、プロジェクトの優先事項は、QCDの観点で議論すると進めやすくなります。すなわち、Q(品質)、C(コスト)、D(スケジュール)のいずれをプロジェクトで優先するのか、ということです。QCDは基本的にトレードオフの関係にあります。Qを優先して限りなく自社の要求事項にフィットさせようとすれば、Cが増加あるいはDが長期化します。プロジェクトで優先するのは、Q、C、Dのいずれであるかを合意します。この合意ができていれば、プロジェクト中に「経費の配賦処理に自社独自の基準をアドオンするか否か」「ハードウェアのスペックを松竹梅プランのいずれにするか」などの意思決定において、判断基準が明確になります。

(2)自社の状況を整理する

第二ステップは、自社の状況を整理することです。自社の状況として、現状のシステム構成、現状の経理業務の流れ、および現状抱える問題点を整理することが重要です。これらに加えて、自社の良いところは何か、システム刷新後に失ってはならないことは何か、を整理しておくことをおすすめします。システム刷新となると問題点にばかり目が向きがちですが、自社の良いところを議論しておくことで、刷新後に「今までできていたことができなくなってしまった」という問題を回避することができます。例えば、手形およびファクタリングの管理が現場業務にフィットしている(よって、次期システムにも同レベルを求めたい)、経費入力は社員に分散入力してもらうことが習慣付いている(よって、次期システムでも分散入力を実現したい)などです。

システムの刷新によって、課題解決のみならず、自社の良いところを失わないようにしたいものです。

(3)要求事項をとりまとめる

第三ステップでは、次期会計システムに求める仕様、すなわち要求事項をとりまとめます。とりまとめた要求事項を提案依頼書としてシステム提供会社に提示し、見積もりを含む提案を依頼する流れになります。ここでは、要求事項がいかに自社の“要望”を表現しきれているかが鍵になります。

それでは、要求事項のとりまとめ方をみてみましょう。

1.業務の流れを整理する
2.各業務においてシステム支援の方向性を決める
3.機能要求をとりまとめる
4.機能要求以外の要求事項をとりまとめる

はじめに、経理よりも上流の業務の流れについて整理します。例えば、営業部門や物流部門における販売業務の流れ、および購買部門における購買業務の流れ、製造部門における生産業務の流れなどから整理し、その後経理における会計業務の流れを整理します。

次に、各業務の流れにおいて、システムで支援する方向性を決めます。例えば、経理業務のひとつ“入金消込業務”について、システムで自動化させることで業務負荷を軽減する、といった方向性です。自動化のロジックについては、3.の機能要求で整理しますので、ここでは、方向性だけを明確にします。

そして、方向性が決まった後は、具体的にシステムに求める機能を箇条書きレベルで書き出します。その際、各機能の制約事項や、想定するユーザー(債務担当者、債権担当者ほか)、使用する頻度、など補足情報を記載します。例えば、先ほどの“入金消込業務”における機能要求は「納品書番号をキーにして自動消込ができる」で、制約事項は「納品書番号が入金時に通知されない得意先が一部存在し、その場合は未消込一覧として表示できる」のように記載します。

最後に、機能要求以外の要求事項、すなわち非機能要求をとりまとめます。会計システムとインターフェースが必要なシステムから発生する要求事項や、可用性、システム運用(バックアップやデータ保管、障害対応方法、サービスデスクの有無など)などについて整理します。

上記をとりまとめた結果は、提案依頼書として文書化します。提案依頼書を用いて、システム提供会社から提案をもらうことで、次のようなメリットを享受できます。

1.自社の“要望”を整理できる
2.各社に統一された要求事項を提示できる
3.製品提供会社から具体的かつ精緻な提案と見積もりをもらえる
4.提案の評価にかかる時間と疲労を低減できる

では、提案依頼書がまとまったところで、最終ステップをみてみましょう。

(4)要求に見合う製品・サービスを選定評価する

第四ステップでは、提案依頼書から得られた提案および見積もりをもとに、要求事項に見合う製品を選定評価します。要求に見合うかどうかは、評価シートを用いて選定すると良いでしょう。評価シートには主に、ヒト・モノ・カネの3要素で評価基準を設けます。ヒトとは、システム提供をいただく会社の実績や、導入に携わるメンバーの信頼性などです。モノとは、製品あるいはサービス自体の適合性です。(3)の入金消込の事例でいえば、「自動消込ができる」ことが評価につながります。カネは、見積もりのことです。

なお、提案依頼書を送付する相手先には、複数の形態があります。スクラッチで開発してもらうためのパートナー、クラウドで購入するためのパートナー、パッケージで導入してもらうためのパートナーなどです。

最近では、会計システムの製品・サービス化が進んでいることから、スクラッチで開発することが少なくなってきています。しかし、特殊な要件が存在する場合にはその選択肢もあります。
次に、自社でインフラを運用する体制が十分に整っていない場合には、クラウドで購入することが有効です。そして、インターフェースが多い、あるいはインフラを自社で運用できる体制がある場合などには、パッケージで導入することが有効です。

提案依頼書の送付先が決定した後は、なるべく提案に時間を多くとってもらい、かつ提案依頼書の説明を丁寧にすることが望まれます。よって、送付先はあまり多くならないようにし、各社と密にコミュニケーションが取れる範囲に絞ることをおすすめします。

最後に、ヒト・モノ・カネの3要素が最も優れたシステム提供会社ならびに製品を選定します。

こまでが、会計システム導入前になすべきことの4要素に関する説明でしたが、いかがでしたでしょうか。システム導入前の選定評価において、いかに深く検討できるかが、システム導入の成否を担っているといえますので、本コラムがその一助になれば幸いです。