Tokyo Startup Dating 9th Edition パネルディスカッション―先輩起業家に聞くビジネスをスケール/ブレイクスルーさせるポイント<前編>

 addlight journal 編集部

今回も2017年8月3日に東京・半蔵門のLIFULL Tableにて行われたTokyo Startup Dating 9th Editionについてのレポートをお届けします。

9th Editionでは恒例となっているピッチコンテストの前に「先輩起業家に聞くビジネスをスケール/ブレイクスルーさせるポイント」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。このパネルディスカッションには弊社アドライト代表の木村もモデレーターとして参加し、株式会社LIFULL(旧・株式会社ネクスト)を設立し、代表取締役社長を務める井上高志氏、セブン・ドリーマーズ・ラボトリーズ株式会社で代表取締役社長を務める阪根信一氏、そして株式会社ベーシックで代表取締役社長を務める秋山勝氏のお三方に先輩起業家としてご登壇いただきました。


不動産住宅情報サイトLIFULL HOME’sでおなじみのLIFULL井上社長は会社を設立するまで”長”という名のつく役職とは無縁だったといいます。学生の頃も委員会の委員長はもちろん班長すら経験した記憶がないとのこと。起業のきっかけは彼女にフラれたということがきっかけで奮起し、実際に起業に至ったということです。今後のビジョンとしては不動産業界を変えること、さらには他領域でも、世の中をより良くするビジネスを展開し、世界平和につなげていくことです。

セブンドリーマーズの阪根社長は、セブンドリーマーズを世の中にないものを作り出す技術集団だとして、無呼吸症候群の方向けの鼻腔挿入チューブ洗濯物折り畳みロボットを簡単にご紹介いただきました。研究開発型のベンチャーということで苦しい時期こそあれど、それさえ超えればソニーやアップルのような起業へ成長する可能性があるとのこと。(ちなみにセブンドリーマーズは源流となっているスーパーレジン工業株式会社時代から大阪万博太陽の塔やはやぶさのような人工衛星の製作も手掛けるなど幅広く「世の中にないもの」を作り出しています)

株式会社ベーシック秋山社長は、ベーシックを負の状態を無くすあるいは±0にする問題解決集団だといいます。主に中小企業を中心に手掛けるIT系のマーケティング会社というのが一般的な説明になりますが、その枠に収まらないようなマーケティングも行います。その最たる例として挙げていたのが讃岐うどんなどの日本食事業を海外に進出させるというもので、シンガポールやインドネシアをはじめとしたアジア諸国への進出を手助けしました。

先輩起業家をお招きしてのパネルディスカッション

木村(アドライト):ブレイクスルーをテーマに、3名の方に事業を行う中でブレイクスルーになったポイントを順番にお伺いしていければと思います。井上さんいかがでしょうか?

井上社長(LIFULL):かっこよく言ってしまうと「まだブレイクスルーできてねえなあ俺」っていう感じ・・・?

木村:ターニングポイントだったり節目になったポイントとかってどうですか?

井上社長:ターニングポイントはいくつかありますね。まずは楽天さんから出資された時。当時は社員13名~14名くらいで、評価額10億円で2億円出資してもらった。これは大きかったのではないかと。あとは2011年に課金モデルを変えた時ですね。従来の掲載課金モデルから問い合わせなんかがあった時に課金されるトランザクション課金に変えて、物件の価格などに合わせて価格を変えるという方式にしてみて。ただこれは業界からの逆風も大きくて、シミュレーションと同じようにうまくシナリオ通りに動いたのはポイントだったと思います。

松下幸之助もそうだったんじゃないかなって思う

木村:ありがとうございます。阪根さんどうですか?

阪根社長:そうですね、ブレイクスルーというか奇跡的に切り抜けた話はたくさんあるんですけども、洗濯物という非常に柔軟なものを扱うということですね。洗濯物をつまみあげ、画像認識でAIが・・・ってやっていくんですが、実は洗濯物をどこかに持って行ってたたむという行為よりもたたむ行為に入るまでの洗濯物をつまむという段階の方が難しくてですね、これが世界中のどこにもできないと。そこでいろいろ試したんですが、最終的には別の技術をある若い技術者のアイデアで使った結果うまく乗り越えることができまして。なので会社を推進するという意味での差別化ポイントをしっかり持っていればブレイクスルーは必ず起きるのではないかと思います。

井上社長:あの無呼吸症候群の方を治すやつとかすごくいいと思うんです。あとすごいゴルフシャフト、一番高いのいくらでしたっけ?

阪根社長:1,200万円ですね(会場爆笑)

井上社長:いや1,200万のシャフトって誰が買うんだよー!って思ったんですけど売れたことあるんですか?

阪根社長:1,200万のはまだですね(笑)

井上社長:で、さらには洗濯物を折り畳む機械を作ってらっしゃいますよね?最初聞いた時ギャグなんじゃないかと思って。でもよくよく考えたら松下幸之助もそうだったんじゃないかなって思うんですね。女性が家事に追われてるの変えちゃおうって洗濯機作って冷蔵庫作って・・・そういう思いとかってあるんですよね?

阪根社長:それはもうもちろんです!自分がやりたいのは世の中にないもの作って、イノベーション起こして・・・ってことで。要はニーズがあって、こんなものがあればいいなあってものがあって、こんなことがあれば絶対売れるはずだ!っていうものがあって、それでほかに世の中、世界中で誰もやってなければ、絶対それ組めば儲かるわけじゃないですか。というシンプルなコンセプトでやってます。

会場:分野は絞らない?

阪根社長:それはもうもちろんですね。分野を絞ればテーマがちゃんと選べないし、テーマが選べないとイノベーションって絶対起こらないと思うんですね。なんで得意分野だとかで絞ってしまうとテーマが決まらないんですね。そういうのは気にせずにテーマは決めるようにしています。

2ヵ月活動が遅れていたら相手にしてくれなかったかもしれない

木村:秋山さんいかがでしょうか。今まで、それから現在もいろいろな事業をされていると思うのですが。

秋山社長:そうですねえ、僕の場合はすごくベタなんですが、まあなにかの参考になればということで。結局はやっぱタイミングなのかなあと創業の時の一番最初のサービスが引っ越しの一括見積だったんですが、それが2004年で当時は黎明期でした。弊社がそのサービスをリリースしたときにはすでに先行企業1社いて、さらには自分の後ろにも1ヵ月ごとに2社つづいて、結局4社が1ヵ月ごとにサービスリリースすることになって。で、ここでうちは2社目だったので、いろんな企業の方がお話を聞いてくれたんですが、仮に2ヵ月僕の活動が遅れていたら企業の方ももう4社目はいいよねってなってたと思うんです。さらにアート引越センターさんが引っ越しの一括見積はやらないと言っていたところ、なぜかうちだけやってくれることになったんですね。1社だけやろうかというとこでうちを選んでくれてそこは本当にブレイクスルーでしたね。大手引越し会社さんは横並びの考えを持っていて、他がやっているのかっていうことを聞いてくるんです。結局1日20件程度だった問い合わせが急に500件に増えたりして、ここは大きなブレイクスルーだと思いますね。

井上社長:そういえばリクルート時代の話を思い出しましたけど、結局その業界のトップ企業、トップリーダーがやるっていうとみんなついてくるんですよね。「あ、○○さんやるの?じゃあうちも」みたいな。これよく使ってた営業手法でこれはたぶんどの業界でも通用すると思います。

木村:1件目の、一番最初の事例を作るのはすごく難しいのではないかと思うのですが、その点についてなにか工夫されていることなどありますか?

井上社長:「ここなら契約がとれそうだな」というところではなく、「ここから絶対契約をとりたい」と思えるトップの企業からとろうとするというのはありますね。

後編に続く…

最後に


いかがでしたでしょうか。
パネルディスカッション後編では採用面でどういったことを気を付けるべきかということについて焦点をあてていきます。

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