【事例】北米フードテック企業へ短期間で踏み込んだアプローチを実現 ー天野エンザイム

 addlight journal 編集部

1899年に配置売薬業として創業、1948年に酵素の製造を開始してからは酵素のスペシャリストとして、事業を展開してきた天野エンザイム株式会社(以下、天野エンザイム)。

同社は「World No.1 Speciality Enzyme Producer」を目指しグローバルに事業を展開しており、海外に4つの販売拠点と2つの製造拠点を持ち、売上の輸出比率は60%以上を占める。

アドライトは、直近日欧米サステイナビリティ領域スタートアップと国内事業会社の事業共創に注力しており、個社別の支援として天野エンザイムの北米拠点であるAmano Enzyme U.S.A.に対し、北米営業開拓実務支援を実施。急成長を遂げているフードテック市場での新たな市場開拓を実現するべく、フードテックスタートアップ企業へのアプローチの支援を行った。

今回はAmano Enzyme U.S.A. の代表取締役 西松氏、同社でTechnical Salesを担当する古川氏にプロジェクトについてお話を伺った。

会社紹介:天野エンザイム株式会社

天野エンザイム株式会社は、「無から有を創れ」という理念のもと、酵素を活用した医薬用、食品・工業用、診断薬用酵素剤の製造ならびに販売や医薬品、動物用医薬品、飼料添加物の製造ならびに販売の事業を展開。

フードテックの潮流の中、スタートアップとの協業が課題に

ーー事業内容を教えてください。

西松氏:Amano Enzyme U.S.A.は天野エンザイムの100%子会社であり、アメリカのイリノイ州に本社を構えております。1981年に創業して以来、40年以上アメリカで事業を展開しており、日本の天野エンザイムで製造された酵素を北米、中南米の方にディストリビューションしています。

酵素事業では食品加工で使われる加工助剤の販売や消化酵素の販売を展開しており、事業の半分以上は食品加工に関わるため、食品業界に多くのクライアントを抱えております。

アメリカ イリノイ州にあるAmano Enzyme U.S.A.のオフィス

ーー本取り組みでは弊社より北米のフードテック企業の開拓支援を行いました。取り組みに至る背景・課題について教えてください。

古川氏:我々は酵素を事業の中心としているため、酵素を食品分野にどう活用していくかの技術的な部分が重要で、Amano Enzyme U.S.A.でも現地のトレンドに合致した酵素アプリケーションの開発に取り組んでおります。

そんな中、数年前からフードテックの潮流があって、プラントベース(植物肉や植物乳など)の分野が市場も大きくなっており、我々も2017年ごろから注力をしておりました。

成果も出てきていたのですが、一方で本当に新しい技術というのはスタートアップから出てくるという現状も認識しており、スタートアップといかに協業するかが重要でした。ただ、今までそういったスタートアップとビジネスを進めていく経験に乏しかったため、どうアプローチをすればよいかという課題を抱えることになりました。

そんな中で、今回プロジェクトをご担当いただいた熊谷さんとの以前からのご縁を通し、2021年9月にアドライト社のイベントに登壇する機会がありました。フードテックのスタートアップに対してネットワークがある熊谷さんから「北米のスタートアップと取り組みませんか」という提案をいただきました。そこから何度かお打ち合わせし、年明けからプロジェクトが始まりました。

西松氏:ITと食品業界が融合してフードテックという言葉がでてきて、アメリカではインポッシブルバーガーのように、これまでの食品業界では出てこなかった画期的な技術が出始めました。食品業界が変わろうとしている動きの中で、なかなかフードテックのスタートアップにアプローチするリソースを割くことができていませんでした。

熊谷さんのフードテックへのネットワークやアプローチ力と、技術的な知識をもつ古川とでフードテック市場を短期間で把握して、今後どういった動向になるかを見極めたいというのも目的の一つでした。

ーースタートアップとの協業が課題になっていたとのことでしたが、スタートアップと協業する意義についてどうお考えでしょうか。

古川氏:先ほども述べた通り、食品業界では、技術シーズはスタートアップから出てくることがよくあります。スタートアップが先に技術を作り、大企業がその技術を買収したり、技術移転します。商用化する時には、大企業が事業を引き継いでいくというのが業界的にも多いパターンだと思います。

弊社は酵素メーカーなので、世界にない新しい酵素を作るということはもちろん自社で行います。一方でその酵素をどのように使っていくかに関しては世界の動向や食品関連のトレンドを見ながら進めていっております。我々の酵素技術をスタートアップに活用してもらったり、逆に我々もスタートアップから学んだり双方向でできることはないかと考えておりました。

北米のフードテックスタートアップを中心に短期間で多数のアプローチに成功

ーー今回のプロジェクトについて具体的にはどのように進められましたか。

古川氏:最初は熊谷さんのもつコネクションを活かしていわゆるロングリストやショートリストの作成を実施いただきました。これまでも自社で断片的にスタートアップへアプローチしたことはあるのですが、網羅的にアプローチするのは今回が初めてでした。
実際のアプローチでは、我々の技術を活かしやすい分野、弊社の酵素と相性の良いプラントベースのスタートアップに絞った形でアプローチし、熊谷さんの方で精査しながら必要に応じて私も同席させていただきました。

実際の商談では熊谷さんにファシリテートいただきながらスタートアップとやりとりし、その中で興味をもってくれたところには協業に向けた継続的な議論を続けております。

ーー商談に至ったスタートアップの印象について教えてください。

古川氏:個人的に感じた、既存クライアントとの大きな違いはスピード感で、スタートアップは1事業にフォーカスしている分、自社の製品の成長に繋がるかどうかでジャッジしている印象でした。
これまでやりとりしてきた食品会社だと、多少やっていることがズレていても話は聞いてくれますが、スタートアップだと「これちょっと違うな」となるとそこで終わりみたいな(笑)

ただ、逆をいうと、我々の酵素がスタートアップ企業のやりたいことに合致したときは話が早く、「すぐにサンプルが欲しい」とか「すぐに評価したい」とスピーディに進んでいきました。

ーー弊社の支援内容についてもご印象をお聞かせください。

古川氏:普通のコンサルティングにお願いすると、ターゲットリストを作成するところまでが支援内容のことが多いと思いますが、今回アドライトさんから頂いた支援は、リスト作成から最初のアプローチ、商談の確約をとってくるところまでを支援いただいて、さらに商談まで同席いただいたりと、熊谷さんが本当に天野エンザイムの営業マンの一人として活動して頂いた印象です。

引き合わせてくれる方々も創業者や経営陣の方々が多く、しっかりと踏み込んだところにリーチができるのは非常に良い点でした。

また、熊谷さんの馬力がすごかったのが私は特に印象的で、昼夜問わずアポイントをとってきてくれました。ピークの時は、週に5〜6回ぐらい熊谷さんと電話したり、連絡も非常に密にとりながらやらせていただいたことは感謝しています。

西松氏:今回お願いした期間が3ヶ月と非常に短い期間で集中してお願いしました。既存の事業や戦略にも営業リソースを割り当てないといけない中で、将来性はあるものの、事業としてまだ成功するか確実性がないフードテックにあまりリソースを割けないという事情もありました。

そんな中で、今回熊谷さんのお力をお借りして、アメリカ全体のフードテックの概要や感触が把握できるようなこともしていただきながら、今後弊社のターゲットとなるような企業もセレクトいただくなど、通常なら半年以上かかることを3ヶ月で実施頂いたことは非常に満足しています。

ーー定量面や定性面での成果についてお聞かせください。

古川氏:多くのスタートアップ企業が私たちの酵素に興味を持っていただき、評価が進んでいます。実際に採用されるまではサンプルを出してから1年、長いところだと2〜3年かけて評価を行なっていただく形になるため、これからどのような結果になるかは楽しみにしています。

フードテックという我々も足を踏みこめていなかった領域で、熊谷さんと一緒に活動する中で徐々に若い起業家さんたちの中で弊社のプレゼンスが高まってきているなというのは活動の中で感じたことです。

西松氏:これまではフードテックスタートアップの皆さんの中で、酵素という選択肢がなかったのではないかと思います。それが今回の取り組みを通じて、酵素をご紹介していく中で、スタートアップのネットワークの中に酵素という選択肢を認知することができたのは長い目で見て有効な取り組みになったと評価しています。

今後は酵素を生み出す発酵技術にも注目

ーー今回のアプローチを通して、フードテックの将来はどのように感じられましたか。

西松氏:1つの流れとしては日本でも言われているSDGsのように、環境に対する配慮がフードテックの後押しになるのではないかと考えています。

例えば、お肉を別のものから作るという発想はアメリカではあまりありませんでしたが、インポッシブルバーガーのような代替肉が生まれてきているということからも、環境によいものであればこれまで使われてこなかった技術、例えば遺伝子組み換え技術なんかもアメリカでは意外と受け入れられやすい環境になってきていると感じます。

ただ、一方でプラントベースの代替肉市場は頭打ち傾向が出ているというデータなどもありますので、我々としては培養肉などの方向性も検討しています。酵素は培養で作りますので、培養の領域に行けばいくほど、ますます我々の事業領域に近くなってくるのではないかと考えています。

ーー今後の御社の展望について教えてください。

古川氏:我々は最初の説明で「天野エンザイムという酵素メーカーです」と説明をすることが多いのですが、酵素を作れるということは発酵の技術をもった会社だということを理解し、そちらの方に興味を持ってくれるスタートアップの方々も多くいます。

西松氏:先ほど申した通り、培養の領域については弊社の技術がお役に立つことがあるのではないかと考えております。培養の領域も含む、幅広いフードテックのテーマの中で、本当に我々の事業に合うものを深掘りしていくのが今後のステップだと考えています。