巨大市場が抱える課題を発見する。空間ビジネスでのアイデア創出とは。

 addlight journal 編集部

2022年11月24日、弊社アドライトはアイディエーションCamp #2を開催。

本イベントシリーズは、毎月起業家やイントレプレナーをゲストに迎え、製品やサービスの開発の裏側にある思考プロセスに迫ることで、ゼロイチ思考のヒントを得ることを目的としている。

第2回は、倉庫シェアリングサービス「souco」を先駆けに、14兆円の物流市場に挑む株式会社souco 代表取締役 中原 久根人 氏、オフィスをはじめとした商業用不動産DXを目指し「estie pro」および「estie」を提供する株式会社estie 代表取締役 平井 瑛 氏の2名の起業家をゲストに迎えた。

本記事では、登壇者2名による事業紹介の様子をお届けする。

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株式会社soucoの紹介 -倉庫シェアリングビジネス『souco』

soucoが持つフレームワークとは

株式会社soucoは、「物流に、合理的協調と創造的競争を。」をビジョンに、データベース化が進んでいない物流領域で新しいビジネスモデルの構築に挑戦するベンチャー企業だ。

同社は社名の通り、倉庫というドメインで事業を展開している。また、倉庫を契機に14兆円規模の物流市場にも挑戦している。物流は統廃合が進んでおらず、旧財閥系企業などがグループ内で取引するという商慣習も残っているため、横の連携がうまく取れていない。結果、多くのリソースが囲い込まれており、全体として最適化されていない。例えば、トラック不足は深刻な問題と言われているが、実は40%しか稼働していないという現実がある。また、倉庫も20%はずっと空いた状態が続いていると言われており、リソースが逼迫されていると言われている一方、片や稼働せず遊休になっているものがあるという非合理な状態が続いている。この状況を変えるべく、soucoは活動している。

創業のきっかけは、前職不動産スタートアップに勤務していた際に、不動産業界では進んでいたDX化が倉庫業界では進んでいないことを知ったことがきっかけだったという。これまでは倉庫の情報がデータベース化されておらず、どこに倉庫があるかも分からない状態だった。また、調査で荷物を短期間で預けたいというニーズが高まっていることも分かった。倉庫の市場は大きく、ニーズがあるのにも関わらず、プレイヤーがいない。ここで不動産業界で培ったスキルや経験を生かせるのではないかというのが、起業へと繋がった。

課題解決へのアイデア創出

具体的にはどのような課題に着目したのか。まず注目したのは「貨物量の変動」という課題だ。日本は四季があり、季節要因によって貨物量が変化する。例えば、アパレルだと同じ点数であっても、Tシャツが、ダウンジャケットに変わると体積が4倍とか5倍になることもある。品数が一緒でも、容積が変動してしまうということもあれば、飲料のように季節によって出荷量が変わる(一般的には飲料水は夏に消費量が多い)ものもある。

また、貨物量の変動に対して、利用した分だけ費用がかかる従量制で契約することを顧客は求めるが、契約条件のギャップにも課題がある。基本的には、非常に長い期間、広い空間を借りないといけないというのが業界の常識であり、短期間だけ利用したいというニーズがあっても、そのタイミングで空いていて、短期の契約ができる倉庫を探すのは至難の業だ。

貨物量の変動とそれに合わせた契約条件という2つの課題を解消するサービスが必要になるが、同社では情報集約化しプラットフォームを提供することによって解決しようとしている。現在では1,500(※2022年6月時点)拠点を超える倉庫が登録されていて、今後も登録数を増やしていく。

soucoと2024年問題

同社の提供するsoucoは、ただプラットフォームを提供するだけでなく、シンプルなサービスパッケージにすることで、荷物を預けたい顧客はシンプルなプランを選択し、従量課金で利用することができるようになっている。

同社のサービスは、季節変動等に合わせた利用を目指して作られていたが、現在ではさらに活用が広がっており、危機的な状況になっている労働問題の解決も期待されている。背景には物流業界が直面する2024年問題という問題がある。これは労働規制が変更になることで、トラックドライバーの働ける時間が大幅に減少してしまうことで、これまでの長距離輸送ができなくなる問題だ。具体的にはこれまで大阪-東京間を1人のドライバーで運べたのが、2024年以降は途中で中継をする必要が出てくる。その中継地点に倉庫を持っていない企業に対して、倉庫を変動的に必要なタイミングで提供することで、2024年問題へのソリューションを提供し始めている。
その他にも、売れ残った在庫をその場で保存ができず、産地に戻すという輸送の無駄があったが、その場で補完できる倉庫を提供することで、輸送を大幅に削減するといった成果も出ている。

このように、倉庫のネットワークを活用して、物流ネットワークそのものを見直していくことによって、物流全体の効率性を上げていくことができる。従来は巨大なセンターを持ちながら、そこをハブとして出荷していくハブアンドスポーク型の物流が一般的だったが、今後はメッシュ型のネットワーク化が進んで、インターネットのように最適な倉庫から1番最短距離を通じて、ものが届く世界が実現できる。その中で、倉庫の情報を大量に持っているsoucoは大きな役割を果たすと中原氏は締め括った。

株式会社estieの紹介 -商業用不動産データ分析基盤『estie pro』

estieが持つフレームワークとは

株式会社estieは、「産業の真価を、さらに拓く。」をミッションに、商業用不動産市場のDXを目指すベンチャー企業だ。

代表の平井氏は新卒から不動産業界に携わっており、特に海外投資の仕事を長く経験してきた。その中で、自分自身がユーザーとして利用してきたアメリカのサービスと日本のサービスにギャップを感じ、創業した経緯がある。同社は不動産の中でも特にオフィスなどを中心とした商業用不動産のドメインにフォーカスし、テクノロジーの力で業界のインフラとなるサービスを開発・提供している。

2020年4月、パンデミックの発生により1回目の緊急事態宣言が発令され、以降急速にテレワークへの移行が進んだことはオフィス業界にとって大きな衝撃だった。オフィス縮小などが進み、空室が増えていく中で、本格的にデータ活用をして、業界全体として効率的に事業を進めていく必要があるという危機感が形成されてきた。

しかしながら、これまではデータが会社や部署ごとに分断されており、各社がそれぞれのデータベースで管理していたり、個人がエクセルやメモなどを活用しながらアナログに管理をしている状態だった。業界におけるオフィスデータをソフトウェアで繋いで、データベースとして扱えるようにしようというのが同社が挑戦している事業である。

データを統合し、オフィスリーシング業務を最適化することで、保有・管理物件のパフォーマンス向上を目指している。例えば、空室期間や募集期間の短縮や営業人員の最適化、計画的な資産の入れ替えも可能になる。

estie proとは

同社が具体的に提供しているサービスは「estie pro」というデータベースサービスである。これまで日本ではオフィスの情報を網羅したデータベースがなかった。平井氏は前職東京に勤務しながら、アメリカの不動産テックのサービスを活用して賃料などの詳細データを手に入れることができるのにも関わらず、日本では隣のビルの賃料すら分からないという状態であった。これらの課題に対し、建物の情報、空室の坪数や賃料などの情報を不動産に提供している。

シンプルなデータベースではあるが、競合物件の特定やポジショニング分析、競合物件の募集状況の定点観測、エリアマーケット分析など、活用は多岐に渡る。また、個別物件の情報だけではなく、それを束ねた時のマクロ主況がどう動いているのかなどもボタン1つで報告資料を作成することができる。

「estie pro」は、多くの不動産デベロッパーや大手の不動産運用会社、日本の不動産に投資をしている外資系ファンドや機関投資家などに活用が進んでおり、サブスクリプション型のビジネスで売上は順調に推移している。

お二人の事業紹介のあとは、参加者でワークショップが行われた。ワークショップではお二人の講演をヒントにフレームワーク等を活用しながら事業アイデアをグループワークでディスカッションを行い、それぞれの意見を交わした。

取材を終えて

今回のイベントでは空間ビジネスというテーマで事業を展開する2社にポイントをお伺いしながらアイディエーションの理解を深めていった。
不動産や物流は巨大な市場があり、まだまだ解決できていないペインも多い。また、コロナの影響が大きく、業界として急激な変化が求められている。変化の過程にチャンスがある。

株式会社アドライトでは、アイディエーションを含む新規事業の立ち上げに関する、制度設計、人材育成、伴走支援の新規事業化支援総合プログラム「イントレプレナーズ」を展開している。詳細は以下サービスページも参照されたい。
https://www.addlight.co.jp/intrapreneurz/

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