ヘルスケアビジネスで注目をされる起業家が持つ、社内起業(社内ベンチャー)の発想力の高め方

 addlight journal 編集部

2022年12月21日、弊社アドライトはアイディエーションCamp #3を開催。

本イベントシリーズは、毎月起業家やイントレプレナーをゲストに迎え、製品やサービスの開発の裏側にある思考プロセスに迫ることで、ゼロイチ思考のヒントを得ることを目的としている。

第3回は、ぷち社食サービス「オフィスおかん」や個人向け宅食サービス「おかずストック」を運営する株式会社OKAN 代表取締役 沢木 恵太 氏、国内外で累計会員数750万人以上の国内最大級のヘルスケアアプリ「あすけん」を提供する株式会社asken 取締役 天辰 次郎 氏の2名の起業家をゲストに迎えた。

本記事では、登壇者2名による事業紹介の様子をお届けする。

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株式会社OKANの紹介 -食事で働く人を支援する置き型社食『オフィスおかん』

株式会社OKANとは

株式会社OKANは、「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションステートメントに置き、仕事をあきらめなくて良い社会を目指し、法人向けサービスを展開するベンチャー企業だ。
同社は、働くことにコミットしているにも関わらず、働くことを諦めないといけない人たちがいる事象を解消するために事業を展開している。

事業展開の背景

背景には、日本の労働人口の減少とそれに伴う生産性の低下がある。周知の通り、日本の労働人口は減少しており、高齢化も世界の中で最も進んでいる。実際に有効求人倍率もコロナのタイミングで少しは落ち着いたものの、全体のトレンドとしては上昇しており、多くの企業で人が足りない状態が顕在化している。この状態が続くと、国の総生産は減少してしまうと沢木氏はいう。

改めて総生産を分解すると、3つの要素に分解することができる。一人当たりがどれだけ生産できるか、それに対してテクノロジーの力でどれだけ増幅ができるか、加えて頭数が係数となる。先述した通り、労働力人口は減少傾向であり、このトレンドを一企業が変えるのは難しい。真ん中のテクノロジーはDXが注目されていることから普及が進んでおり、生産性の向上に寄与している。

一人当たりの生産性向上を阻む壁 〜離職へのPull〜

3つの要素の中で、同社が注目しているのは一人当たりがどれだけ生産できるかだ。人間はロボットのように安定して生産ができるわけではなく、モチベーションに左右される。モチベーションを高め、仕事へのコミットメントを高めることが生産性に寄与するという。さらに、この中で同社が課題として着目しているのが「働くことにコミットしてるにも関わらず、働くことを諦めないといけない」事象についてだ。そこに社会としての大きなペインがあるという。

アメリカの学者が離職理由には大きく2つの傾向があるという議論を展開している。1つはモチベーションに紐づくもの、例えばやりがいや、理念への共感、仕事の内容などだ。もう1つはハイジーンファクターと呼ばれる仕事そのものとは関係ないもの、例えば、健康とか、家庭との両立とか、人間関係などが原因で離職するケースだ。

実は日本はこのハイジーンファクターでの離職が大多数であり、そのことが生産性に悪影響を及ぼしている。ハイジーンファクターはライフスタイルと密接に関係している。「働く人のライフスタイルを豊かにする」という同社のミッションステートメントには、このハイジーンファクターによる離職を減らしたいという思いが込められている。

OKANが考える解決策

ハイジーンファクターによる離職を減らすために、同社はどのような解決方法を考えているのか。
解決方法として、問題を可視化する診断、どういう取り組みを行っていくべきなのかという処方、そして、実際にそれを支援していくソリューションサービスを投薬する、このようにステップに分解して事業展開する必要があると沢木氏は語る。同社はこのステップごとに最適な事業を展開することを目指しながらも、現在は「ハタラクカルテ」 と「オフォスおかん」の2つの事業を運営している。(本講義ではオフィスおかんにフォーカスする)

オフィスおかんの実態と効果

オフィスおかんは真空包装されたお惣菜をオフィス内で置き販売するというサービスだ。
企業は福利厚生の一環としてシンプルな設備を設置するだけで管理栄養士が監修し厳しい添加物使用制限や産地制限のある健康的な食事を従業員に届けることができる。現在は300社、3000拠点以上に導入が進んでおり、社員は通常だと手に入らないような値段でそのサービスを利用できる。このサービスのアイデアとして特徴的なところが、企業側のペインと従業員側のペイン、それぞれをうまく組み合わせて解決している点だ。

企業からすると、人材不足が厳しい中、従業員の定着率を高めたり、健康経営の促進に繋げることができる。一方従業員からすると、健康的な食事を手軽にとることができ、健康面や家庭面と仕事との両立を実現するのに役立つ。

実際、サービスに価値を感じて導入する企業が増えている。特に、離職率が高かったり、シフト制によって生活習慣が保ちづらいブルーカラーやエッセンシャルワーカーなどを抱える職場での導入が多いという。現在は300社、3000拠点以上に導入が進んでおり、高い成長率で事業拡大している。

沢木氏が考える、ペインとの向き合い方

最後に、弊社代表木村から「マクロの視点とミクロの視点でペインを捉える際のポイントについて」質問があった。
沢木氏は「やっぱり会社としての大義はすごく重要で、大義があるから仲間もお金も集まるものと考えています。その観点ではマクロの視点というのは重視をしていましたし、マクロのwhyに対するhowやwhatの部分がミクロのwhyに繋がっていたりするので、その接続は重視しています」と答え、事業紹介パートを締め括った。

株式会社askenの紹介 -社内ベンチャーとして立ち上げたヘルスケアアプリ『あすけん』

株式会社askenとは

株式会社askenは、「ひとびとの明日を今日より健康にする」をミッションに、栄養学のさまざまな知識と知見とテクノロジーの力を掛け合わせることでそれぞれの心と状況に寄り添うアドバイスを誰もが得られ行動に移せる世界の実現を目指す株式会社グリーンハウス発のベンチャー企業である。

ヘルスケアアプリ 〜あすけん〜

あすけんは、食事を管理することができるヘルスケアアプリだ。食事をスマートフォンで記録すると、栄養計算がすぐに行われて、AI栄養士と呼ばれるキャラクターがアドバイスをくれる仕組みになっている。

初期BMI25以上のユーザーであれば、90日の利用で平均4.09kg体重が落ちるという効果を出している。また、痩せるだけではなく、適切な栄養素のコントロールが可能であり、食事のバランスを整えることができるので、健康に痩せることができるというのが特徴だ。

現在では国内有数のヘルスケアアプリである「あすけん」を開発、運営しており、急速な成長を遂げている同社であるが、「あすけん」が現在の形になるまで多くの失敗を経てきた。特に、初期のあすけんは事業の構想は、親会社のリソースありきの部分があったという。

DXに着目するも成果を上げられなかった初期

親会社であるグリーンハウスのメイン事業に社員食堂の運営があり、全国で2500ヶ所以上の店舗を運営している。また、2007年当時でも管理栄養士や栄養士が1800名以上在籍しており、対面指導を30年以上やってきたノウハウも持っていた。しかし、当時の対面指導はアンケートの結果から大体のアドバイスを返すか、栄養計算という大変労力のかかる作業をアナログに行い、かなりの時間をかけてアドバイスするかの選択肢しかなかった。これをITの力で解決する、管理栄養士のDXができればすごい事業ができるのではないかというのが初期の仮説であった。

そこで、社員食堂を利用する従業員に食事記録・アドバイス機能を提供することで、従業員の健康を支援するサービスとしてあすけんを展開したが、思わしい成果を上げることができなかった。当時はまだ「健康経営」などの概念もなく、企業が従業員の健康促進に責任を持つ、コストをかけるという発想がほとんどない状況だった。

コンシューマ領域のニーズとの出会い

コンシューマ向けに活路が開けた。「レコーディングダイエット」や「カロリー計算」などのブームがあり、コンシューマ領域で新たに発生したニーズにあすけんが合致した。そこで、当初の社員食堂を利用するユーザー(メタボ男性が主な想定ユーザーだった)というターゲットから健康的に痩せたいというユーザー(若い女性ユーザーが多い)へとターゲットが変わり、プロダクトもそこに合わせてピポットしていくことで、ターゲットとするエンドユーザーのペインを解決することができるサービスになった。
また、食生活改善がカバーできるペインの範囲は広く、例えば、妊娠時の食事管理等にも寄与している。妊娠中は生涯の中でも最も体に気持ちがいく期間でもあり、妊娠時にどんな栄養をとるかは赤ちゃんの成長にも影響すると言われている。しかしながら、どんな食事を取れば良いか具体的なアドバイスは少なく、みんな曖昧な情報をもとに工夫してきたのが現状だ。これらのペインに対しても、あすけんはマタニティモードという機能を利用することで妊娠期に栄養士が伴走してくれるような安心感を妊婦に提供している。

あすけんの今と広告事業

あすけんはエンドユーザーのペインに寄り添った機能やサービス設計が好評となり、現在では国内外合計で840万人が使う国内最大級のヘルスケアアプリとなった。

本年は日本サービス大賞優秀賞を受賞したり、Googleが主催するGoogle Play ベスト オブ 2022でユーザー投票部門、自己改善部門の2部門で大賞を受賞するなど、高い評価を受けている。

現在、メインとなる事業はサブスクリプション型のコンシューマ向けビジネスだが、広告事業も売上を伸ばしている。あすけんには市販食品の全データが入っている。これらを個人それぞれの栄養バランスを踏まえて、サジェストすることで高いコンバージョンを実現している。

最後に、弊社代表木村から「初期のリソースを起点とした事業からユーザーのペインを起点とした事業へピポットする際にどのような経緯を辿ったのか」質問があった。

天辰氏は「かっこよく戦略的に解決したと言いたいところですが、成り行きで解決できた部分が大きいです。ブームになる前に、カロリー計算やレコーディングダイエットというキーワードを買っていたのですが、結果的に積極的に狙っていなかったコンシューマ向けに火がついた。そこから分析をすると、初期の仮説でターゲットとしていたメタボ対策をしたい中年男性ではなく、10代、20代の女性が圧倒的に利用者として多かった。そこで、変化を捉えて、プロダクトをどんどんピポットしていったというのが実態です」と回答し、その後のワークショップへと繋げた。

ワークショップの総括

ワークショップではお二人の講演を受けて、改めて参加者でユーザーペインを考えて、それらを解決するアイデアを考える個人ワーク、グループワークが行われた。

ワークショップ等を通じて、沢木氏からは「改めてペインから考える重要性を実感できました。ワークを通じて、表面的なペインだけでなく、そのペインはなんで起きているのか深掘りすることで具体的なペインが見つかるということと、誰のペインなのかという解像度を上げることでサービスが変わっていくということの2つのポイントを再発見することができました」と語った。

天辰氏からは「健康という領域は誰しもが重視する課題なのにも関わらず、なかなか改善できていない領域です。それは個人によって何が刺さるかというポイントが違うためで、単一のサービスでどうこうできる領域ではないとつくづく感じます。それゆえに、あすけんでは解決できないペインがまだまだ存在するでしょうし、色々なチャンスがある領域でもあると思いますので、ぜひまたペインとかwhyから考えてアイデア出しができればと思います」と締め括った。

取材を終えて

今回のイベントではアイディエーションを軸に、ヘルスケア領域を題材として、アイデアの元となるwhyやペインを見つけることの重要性を説いてきた。

ゲストの天辰氏が最後に語ったように、ヘルスケア領域が扱うのは不変なテーマに関わらず、個々に抱えているペインが違うため、すぐに解決ができない領域である。それゆえにまだまだチャンスも多い。ユーザーの解像度を上げてペインを掘り下げれば、グローバルで成長することができる事業を生み出せる可能性を秘めている。

株式会社アドライトでは、アイディエーションを含む新規事業の立ち上げに関する、制度設計、人材育成、伴走支援の新規事業化支援総合プログラム「イントレプレナーズ」を展開している。

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