弊社アドライトでは、10年に渡り大手企業様の新規事業開発支援・伴走支援をしてきた知見ノウハウをベースにそのステップやプログラムを体系化し、実践型の次世代リーダー育成プログラム「INTRAPRENEURS DOJO」の提供を開始。連動イベントとして『事業を生み出す「次世代リーダー」育成の極意』と題して、オンラインセミナーを開催した。
同プログラムとの連動イベントは2回目で、初回は次世代リーダーについての学びを深める場となったが、今回も初回ゲストで登壇頂いた小杉俊哉氏をゲストに迎え、「次世代リーダー」についてさらなる理解へと繋がった。
本記事では、オンラインイベントの内容と、次世代リーダー育成プログラム「INTRAPRENEURS DOJO」の概要、チャレンジプログラムについて紹介したい。
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自発的に動き出す仕組みづくりと評価方法
まずは『事業を生み出す「次世代リーダー」育成の極意 ~自発的に動き出す仕組みづくりと評価方法~』と題して8月9日に行われたオンラインイベントの様子をご紹介する。ゲストに『起業家のように企業で働く』など、キャリアやリーダーシップに関する多数の人気著書を執筆する小杉 俊哉 氏(以下、小杉氏)を迎えた。
「知の深化」と「知の探索」 ~両利きの経営~
講演はまずイノベーションのポイントである「新結合」をどのように起こしていくのかという問いから始まった。イノベーション理論では、イノベーションとは全く0から立ち上がるのではなく、既存事業に対して異質の何かが結びつくことで生まれるという。
では、どのように新結合を起こすのか。ここで重要なのが「両利きの経営」という戦略だ。「両利きの経営」とは、既存事業を効率化していく「知の深化」と新しいものを見つけにいく「知の探索」の両方を同時に行なっていくことで、事業を安定継続しながら、新しいものに取り組んでいく経営戦略だ。
日本の課題を「両利きの経営」で説明すると、「知の深化」に偏重しており、「知の探索」を行なってこなかったことである。なぜ「知の探索」ができないかは明白で日本の大企業の多くが新卒一括採用を行い、単一価値観で育てているからだとと小杉氏は指摘する。社内を探索しているだけではイノベーションは起こらない。外に目を向けた活動ができる人材が重要である。
イノベーションには外部経験のある多様な人材が重要
イノベーションを起こしていくには新卒で育ててきて中のことしか知らない人材だけではなく、外の経験がある多様な人材を受け入れていく必要がある。ここにも、ダイバーシティの必要性が見てとれる。
では外の経験がある人間をどのように確保するのか。従来の中途採用以外にも、副業解禁や2枚目の名刺、レンタル移籍など今いる社員を外部で育てると言う発想もありえる。また、アルムナイと言われるOB、OGのネットワークを活用しビジネスに繋げたり、出戻りを受け入れることができる。出戻り組は社内のことも分かっていながら、社外の経験を積んでいる点で改革の担い手として最高の人材となりうる。
なお、変革に成功したトップがどのように経験を積んできたのかについては、小杉氏が共著者として名を連ねる『プロ経営者・CxOになる人の絶対法則』(クロスメディア・パブリッシング)で詳しく解説されているので参考にしていただきたい。
リーダーに求められるコンピテンシーとは
経営幹部早期識別に関する11の次元というものがある。ここには潜在能力が高い人材を平均的な人材と区別する特徴が書かれているが、潜在能力の高い人間にはどのような特徴があるか。
この特徴を紐解くと「学習」というキーワードが浮かび上がる。社会人になって学習をしていない人間が成長できるはずがない。学習の習慣がある人間だけが、その後リーダー人材として成長していく可能性があると小杉氏は語る。
自律型人材を増やすには組織のアーリーアダプターを狙う
小杉氏曰く、自律的に動くことができる人材は組織の中で約2%だという。組織を活性化するのに、重要なのはアーリーアダプターの層である。この層は自分達では動かないが、リーダーになれるような素質を持った人材が多く含まれおり、この人材をタレントマネジメントして、組織として意図して動かす仕組み作りができれば、あとのマジョリティはそれについてくる。
いかに、面白い仕事を与え続けるか、柔軟性に富んだワークスタイルや多様な社内外の人材との協働環境、競争力のある報酬の仕組み、継続的な学習の機会これらが必要になってくる。前述した通り、リーダーの素質がある人材は学習意欲が高く、彼らは成長を求めている。そんな彼らを日常業務に埋没させてはいけないと小杉氏はいう。
ちなみに、2%のエース人材がどのような思考を持っているのかについては、小杉氏著作の『2%のエース思考 ~あなたはいつまで「同期」の中に埋もれているのか?~』(ワニブックス)にて解説されているので参考にしてもらいたい。
アーリーアダプターを動かす仕組み ~デュアルシステム~
ここまでイノベーションを生み出すには、外にも果敢に飛び出し、自律的に物事を進めていけるリーダー人材を生み出すことの重要性を問うてきたが、具体的に何をすればいいのか。
小杉氏はデュアルシステムを一つの方法として提言する。デュアルシステムとは、人材が今与えられた仕事だけではなく、将来に向けた仕事にも取り組む場を設ける仕組みである。
ジョン P. コッターHBS名誉教授によると、業績好調な米企業は、大企業になってもこのデュアルシステムを採用している企業が多く、日本でもこの仕組みを取り入れて成功した例にSONYがある。
もう一つの具体的な仕組みは評価方法にOKRを組み込むことである。従来の評価方法で多く採用されているのはやらなければいけないことにフォーカスしたMBO(Management by Objectives)である。対してOKR(Objectives and Key Results)は会社のミッション・ビジョンへの貢献にフォーカスする。MBOが短期的な視点の評価なのに対し、OKRはより中長期を見据えた視点の評価になる。小杉氏はOKRを加点方式で取り入れることで、自発的に動く人材を評価していくことを提言した。
なお、リーダー人材育成の仕組み作りについては小杉氏著書の『リーダーのように組織で働く』(クロスメディア・パブリッシング)にも詳しく説明されているので参考にしていただきたい。
適切なタレントマネジメントとは
日本企業の人材評価に関しては、一般的に正規分布型が用いられることが多いが、実際には人材分布は2:6:2にはならない。
Googleピープルアナリティクスチームによると、極めて優秀な技術者は平均的な技術者の300倍の価値があると指摘する。つまり、正規分布ではなく、べき乗(パレート)分布なのである。組織作りを行う際は、こういった事実を意識しながら適切なタレントマネジメントをすることが重要である。
トークセッション・Q&A
イベントの後半では、弊社代表の木村とのトークセッションが繰り広げられ、次世代リーダーについての議論が深められた。
Q.次世代リーダーに求められる資質・スキルとは?
経験則からもわかるように、高学歴の人間が必ずしも成果を上げるわけではなく、継続的に学習できるかどうかが重要であると小杉氏はいう。学生時代までに身につけた知識やスキルで大きな差が出ることはほとんどなく、重要なのはその後の学習意欲にある。学習意欲があれば、必要な知識やスキルは後からでもついてくる。
Q.次世代リーダーとなりえる人材の資質・スキルはどのような方法で見極めるべきか?
例えば、研修に挑む態度を見れば、明らかに研修から何かを得ようとしている人材と、たかが研修と手を抜く人材がわかる。研修にしても、何にしても機会として捉えて、身につけようとすることができる人材が次世代リーダーになる資質である学習意欲を持った人材であると回答した。
Q.従業員が自走して「次世代リーダーに求められる資質・スキル」を身につけていく環境をどのような方法で構築すべきか?
講演でも紹介したデュアルシステムが一つの回答になると小杉氏。昔は自主的に行われていた時間外の自発的な労働も、昨今の働き方改革やガバナンスの強化で失われつつある。このような自発的な取り組みを発揮できる場を組織として用意してあげないといけない。
ガバナンスと自律的な動きのバランスをとるために、いくつかやらないことだけを決めておく。ポイントなのは制約条件を設けすぎず、最低限のルールを守ればあとは何をやってもいいという自由さだ。
Q.次世代リーダー育成・抜擢に成功している企業の特徴や事例は?
パレードの法則に従うと、一部のハイパフォーマーをいかに生み出すのかが重要であり、取り組みの一環として「エリート教育」に取り組んでいる企業なども多い。しかし、「エリート教育」といっても、かつての保守本流で徹底的に帝王学を叩き込むようなやり方ではなく、外部の経験を積ませたり、いきなり現場に行かせて育てるといった過酷な環境で育てるのがポイントだと小杉氏はいう。
Q.次世代リーダーとなり得る人材を社内に留めるために有効的な評価制度やインセンティブ制度とは?
給与など金銭的な報酬ではなく、おもしろい仕事を与えることが次世代リーダーになるような人材への報酬となり、社内に留まるインセンティブとなる。金銭的な報酬で惹きつけるのは、労働市場全体で見るといくらでも自社より給与水準の高い企業はあり、限界がある。いかに内発的動機にリーチできるかが大切であると小杉氏は語った。
次世代リーダー育成プログラム「INTRAPRENEURS DOJO」とは
「INTRAPRENEURS DOJO」とは、弊社の経験とノウハウをベースに開発した一社提供型のイノベーション人財育成兼新規ビジネス創出プログラムだ。イノベーションを起こす仕組みである「SHBDスパイラル」の導入し単一の新規事業活動の推進に留まることなく全社的なインパクトの最大化を図る。
本プログラムの特徴
本プログラムの特徴として、「受講者のレベルに応じたきめ細かな5つからなるプログラム構成」がある。
イノベーション⼈財をベーシック、チャレンジ、アドバンス、マスターの4クラスに定義し、マインドセットから、1つの事業を経営レベルでマネジメントできるよう、段階別に計5プログラム(アドバンスコースで技術系と企画系でコースを展開)で構成している。それぞれのクラスに必要なプログラムを最適な講師を中⼼に設計、提供する。
チャレンジコースについて
チャレンジコースでは、新規事業アイデアを発想できる「新規ビジネス挑戦者」を目指す人物像として定義したコースだ。習得できるスキルとして、共通スキルの「⾃信と感受性」に加えて、「デザイン思考⼒」「顧客理解力」「アイデア創出力」とベーシックプランで培ったマインドを土台に、より実践的なスキルやマインドを習得することができる。
既知の情報からトレンドを察知しどのように仮説を立てるのかから始まり、その仮説検証のための調査方法、調査結果からインサイトをどのように得るのかなど、ワークショップを通して学んでいく。また、得られたインサイトから課題を定義し、解決するためのアイデアを考え、課題解決に繋がるテーマを提案するところまでを6日間のプログラムを通じて身につけていく。
本プログラムの進め方をご紹介すると、例えば、顧客調査はンケート調査ではなく、インタビューなどを通じて行う定性調査に重きを置いている。これは、誰と対話するのかを決め、⾃⾝が取り組むテーマを広い視野で捉えるために、ターゲットとする顧客だけでなく、関連するステークホルダー全体を可視化することを目指すためだ。まずはイシューを発見するため、顧客の世界に没入することが重要である。
顧客調査で得た様々なデータは共有・集計・要約し、そこからインサイトを引き出す。ここではペルソナやカスタマージャーニーマップといったフレームワークを用いて、理解を深めていく。
そして、そこから得られたインサイトを元にアイデア創出を行う。このステップでは。顧客価値にフォーカスし、発散と収束のサイクルを回すことで、⼀つのアイデアに固執することなく、継続的な洗練・改善を実現していく。そのために、アイデア創出に関する各種フレームを学んだり、強制発想ワークショップを通して実践していく予定だ。
そして、プログラムの総括として、出来上がったアイデアスケッチの中からより個⼈の想い⼊れが強いアイデアを中⼼にテーマ提案書に落としこんでいく。
プログラムを通して体験することは、実際の新規事業創出のプログラムであり、実践的に学んでいくことで現場に戻った時に実際に使えるものとなっている。
本記事ではチャレンジコースについて紹介したが、こちらの記事ではベーシックプログラムについて紹介しているので参考にしていただきたい。
終わりに
本記事では、次世代リーダーの育成をテーマに、弊社の次世代リーダー育成プログラム「INTRAPRENEURS DOJO」のご紹介と、小杉 俊哉 氏をゲストに迎えたイベントの様子をご紹介した。
小杉氏の講演にもあったように、企業を牽引するのはパレードの法則のトップ数%であり、彼らをいかに惹きつけ、育てていくが事業運用でも、イノベーション創出でも重要になってくる。そのためには、彼らの持つ内発的な動機にいかに火をつけるかが組織制度や評価を考える上で大切だ。
そういった自発性を発揮する場として、外部の研修を利用することは一つの機会になる。弊社が提供する次世代リーダー育成プログラム「INTRAPRENEURS DOJO」がその一助になれば幸いである。
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