中国大手電機メーカー「KONKA(康佳集団)」と親会社のOCTグループが手掛けるインキュベーションサービス「Konka Star」は深センの南山区に拠点を構える。視察を通じて見えてきたものとは。
ユニークな製品を次々と開発
まずはKONKAについて触れておきたい。同社は1980年、海外企業とのジョイントベンチャーとして始まった。家電メーカーとして40年近い歴史を持つ同社の主力製品はテレビだ。昨年、セリエA・インテルのオーナー企業でもある家電小売の「SUNING」とパートナー提携を結び、サッカーボールがくっきりと映るLEDテレビを提供したことでも知られる。
ショールームを案内してもらうと、とにかく目に付くのが多彩なディスプレイ群。有機ELや8K、暗い場面でも鮮明に映るタイプなど技術を駆使し、利用シーンに合わせたディスプレイを展開していることがうかがえた。
ユニークなところでは、メイク時に肌の状態を計測してくれる鏡型のディスプレイ付き卓上冷蔵庫(写真左)や、顔や脈拍などから健康状態をわずか1分程度で計測する(写真右)というものがあった。スマートスピーカーのデモでは、テレビと連携し音楽やビデオの再生や、加湿器の操作がなされていた(中国語のみ対応)。
ハードウェアスタートアップが多数在籍するアクセラレータ
ショールームを後にし、いよいよKonka Starのフロアへ。
Konka Starの内部は少し複雑な作りになっている。ガラス張りの部屋があったかと思えば、大きく開放的なフロアをパーテーションで仕切ったり、デスクの配置で各チームが分かれていたりと、かなりオープンな印象を受けた。
フロア中に様々なプロダクトが展示されているのは、興味を持った訪問者とダイレクトかつ即座にコミュニケーションが図れるようにするためだ。実際、あちらこちらで製品やサービスについて話し合う姿が見受けられた。このスピード感や距離感により、商談に結びつくケースもあるという。
スマートキーを開発しているチームにデモを行っていただいた。スマートフォンやパスワード、顔認証を使っての施錠・解錠(Face IDのようなもの)で、画面に顔が映ったとほぼ同時に認証されるほど認識にかかる時間はタイトだった。施錠・解錠の仕方は組み合わせての設定も可能だという。ほかにもスマートパーキングシステム、監視システム、電気や水道といったインフラシステムの制御に関するサービスを開発しており、AIを用いて異常な動作を察知しアラートを遠隔で出すこともできるそうだ。
スタートアップをグローバルに開拓
Konka Starは「起業家の生態系を作り、起業家の心の中で聖なる場所になる」をビジョンに掲げ、イノベーションベース(孵化)、投資、ベンチャーメディア、グローバリゼーションの実現、イノベーションクラウドセンターの五味一体をワンストップで提供している。
2018年には特別基金が共同で建設され、20億元のマザーファンドを設立。地方自治体と協力して投資やメディア、スペース、サプライチェーン、カスタム生産などの産業インキュベーションサービスをオールラウンドで展開。ユニコーンの孵化やエコロジーの作成をしていく予定だ。
アメリカだけでもサンディエゴ、シカゴの三か所に展開。ヨーロッパではロンドンやSlush発祥のヘルシンキに進出している。今後3年以内にパリやイスラエルといったスタートアップ熱の高い地域へ展開し、グローバルな電子業界のリソースを相互接続したいという目標を掲げている。
KONKAに限らず中国ではスタートアップ支援に力を入れている電機メーカーは少なくない。三洋電機の白物家電部門を買収したHaierや、同じく液晶パネルを製造する三洋電機のメキシコ工場やヒューレットパッカードの子会社を買収したTCL、PCメーカーでおなじみのLenovoなどが挙げられる。
また、Hisenseも国内外に多数のR&D拠点を設け、各研究機関との連携を行うほか、イスラエルのIoTインキュベーターに協力する形で新技術やオープンイノベーションへの参与度を高めている。
KONKAは中国の国内市場において既に存在感を持っている企業だといえる。しかし、ある程度の国内シェアを持ちながら新たな可能性を探り続けるという姿勢は国内外の競合にとってかなりの脅威となる。歩みを止めない姿勢こそが中国企業の共通点であり、成長のためのエネルギーに繋がっているのかもしれない。
活躍の場を中国国内から徐々に世界へと広げつつある中国企業。このまま成長を続ければ彼らが更に大きな変化を迎えるのはそう遠くはないだろう。