カーボンニュートラルやESGの最新トレンド!COP28報告とこれからの潮流

 addlight journal 編集部

現在、1.5℃目標と2050年のネットゼロを目指して、世界中で待ったなしの取り組みが進められている。その中でも重要な役割を果たすのが、年に一度、気候変動枠組条約の参加国が世界中から集まって行われる「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」だ。その第28回目となるCOP28が、昨年の2023年11月30日〜12月12日にアラブ首長国連邦ドバイで開催された。

弊社主催のSUITzウェビナーでは、昨年末に開催されたCOP28に全会期参加されたアスエク代表の市川氏を迎え、前半は市川氏によるCOP28の全体概要と主要な3つのテーマ(AI、カーボンクレジット、食料システム)が企業活動に与える影響について講演いただいた。

本記事では、SUITzウェビナーで語られた内容のサマリーと、弊社が現在取り組んでいるSUITz Tokyoの進捗についてご紹介したい。

SUITz TOKYOのご紹介

まずは弊社が進める「SUITz」の取り組みについて、進捗をご紹介する。

SUITzとは

アドライトが主催するSUITzとは、ネットゼロ社会を目指すため、弊社アドライトが運営する事業共創のプラットフォームである。マッチングや事業開発支援、GX、マーケティング支援を通じて、クライメートテックの事業共創を支援する。欧米を中心に多数のVCと連携しており、クライメートテックに取り組む欧米のスタートアップとのコネクションも深い。

「カーボンリサイクル」「エナジートランジション」「アグリテック」の大きく3つの領域をカバーしており、テーマごとの有識者をお招きしてウェビナーを開催したり、国内外のスタートアップによるピッチイベントなども開催している。

過去のSUITzウェビナーの様子は以下の記事も参照いただきたい。

SUITz TOKYOとは

東京都と弊社アドライトが協力して進めるSUITz TOKYOは、スタートアップの増加とグローバル市場への進出を支援するアクセラレーションプログラムである。このプログラムは、Climate Tech分野に特化し、革新的なアイデアを持つ企業の成長と発展を促進することを目的としており、国内外の取り組みから成り立っている。

SUITz TOKYO Outbound Acceleration Program

こちらは海外展開を志す東京拠点のクライメートテック・スタートアップに対して、同分野に強みを持つグローバルVCとのマッチングの機会を提供し、資金調達を支援するプログラムである。プログラムの第1期に採択する国内スタートアップ企業10社と、パートナーVC7社が決定している。

詳細については、こちらのプレスリリースを参照いただきたい。

SUITz TOKYO Inbound Acceleration Program

こちらは東京での事業展開を志す海外拠点のクライメートテック・スタートアップに対して、同分野で事業を展開する東京拠点の企業との事業共創を支援するプログラムである。プログラムの第1期に採択する海外スタートアップ企業15社と、パートナー事業会社6社が決定している。

詳細については、こちらのプレスリリースを参照いただきたい。

ウェビナー:COP28報告とこれからの潮流

ここからはウェビナーの様子を紹介する。登壇者であるアスエク代表の市川氏からはCOP28の全体の様子と交渉以外のテーマとして注目されたAI、カーボンプリント、食料システムについて語られた。

COP28の概要

COP28は、中東では初となるアラブ首長国連邦のドバイで開催され、2年前に同地で開かれたドバイ万博の跡地が会場となった。日本からのアクセスの良さ、整ったビジネスインフラ、治安の安定性などから、日本企業の参加数はCOP史上最多となった。会場は、国連が管理する交渉エリア「ブルーゾーン」と、一般もアクセス可能な「グリーンゾーン」に分かれており、万博跡地というロケーションを生かし様々なセッションやイベントが行われた。

気候変動だけでなく、健康や平和といった多岐にわたるテーマが議論され、環境問題と社会的課題の密接な関連性が浮き彫りになった。企業への影響としては、1.5℃目標の堅持と途上国の声の高まりに留意する必要性が挙げられる。各国・企業は、パリ協定の目標達成に向けて、短期的な行動を起こすことが求められている。

日本のスタートアップもCOP28に多数参加

メイン会場とは少し離れた場所にイノベーションゾーンが設けられ、水素、サステナビリティ、ファイナンス、アグリフードなどのテーマを中心に、スタートアップとの交流が活発に行われた。日本からも多くのスタートアップがグリーンゾーンに出展し、中東や欧米の企業との具体的な商談が進められた。特にアラブ首長国連邦では、脱炭素系のスタートアップを積極的に誘致する姿勢が見られ、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスが広がっている。

注目の「AI」「カーボンプリント」「食糧システム」

COP28では、AI、カーボンクレジット、食料システムが注目を集めた

AIが気候変動の課題解決に果たす役割について、GoogleとMicrosoftのチーフサステナビリティオフィサーの対談では、AIによる意思決定支援の重要性が強調される一方で、一次データの量と質の確保が課題として浮上した。また、AIの活用に伴うデータセンターの電力消費増加への懸念に対しては、両社ともクリーンエネルギーの利用を約束し、積極的な対応姿勢を示した。

カーボンクレジットは現在、世界的に大きな転換点を迎えている。COP28では、多くの有識者や政府関係者から、カーボンクレジットの品質、つまり「ハイインテグリティー(High Integrity)」の重要性が指摘された。ハイインテグリティーなクレジットとは、現在のカーボンクレジット市場における課題を解決し、モニタリング、レポーティング、検証のプロセスを確実に実行することで、温室効果ガスの吸収量を明確に示せるクレジットを指す。今後、カーボンクレジット市場のルール形成において、このハイインテグリティーの概念が重要な役割を果たすと予想される。

食料システムについては、気候変動との関連だけでなく、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)の観点からも議論が行われた。プラネタリーバウンダリーとは、人間活動が地球システムの安定性に及ぼす影響の限界点を示す概念であり、気候変動以外にも、生物多様性の損失、土地利用の変化、淡水の利用など、複数の項目が含まれる。食料システムの転換には、気候変動への対策に加え、これらの地球の限界を考慮に入れた総合的なアプローチが必要とされている。

COP28のまとめ

COP28を通じて明らかになったのは、1.5℃目標の達成に向けて、より野心的な温室効果ガス削減目標の設定と、それに伴う炭素税やカーボンプライシングの導入が求められるということである。日本企業にとっては、現在の化石燃料に依存したインフラを、いかに速やかに転換できるかが課題となる。また、先進国と途上国の間で温暖化対策の温度差が存在することを認識し、グローバルな視点を持ちつつ、日本独自の戦略を立てていく必要がある。

エキスパートの視点から見るCOP28における環境トレンドレポート

弊社アドライトでは、COP28について本記事で紹介したウェビナーの内容に加え、より詳細の内容をまとめたレポートの販売を行っている。

レポートではCOPの起源や定義から振り返り、直近3回のCOPのテーマからトレンドを紐解く。そして、COP28での議論内容や参加スタートアップの動向をつぶさに見ていく。気候変動に関する業界のエキスパートがまとめた約30Pにおよぶレポートとなっている。本レポートは、COP28を通じて見えてきた環境ビジネスの最新動向を把握する上で欠かせない一冊となるだろう。

詳細はこちらの案内ページも参照いただきたい。

まとめ

COP28は、気候変動対策において、産業や社会全体の変革が求められている現状を浮き彫りにした。企業には、AIやカーボンクレジット、食料システムといった重要テーマについて理解を深め、短期的な行動変容を促進していくことが期待される。同時に、日本政府には、国際的な潮流を踏まえた上で、日本のポテンシャルを最大限に活かせる環境政策の推進が求められる。COP29、COP30と続く一連の会議を通じて、日本がグローバルな脱炭素化をリードする存在となることを期待したい。