アグリフードテックのヨーロッパ最新動向。今日の課題と最新ソリューションとは

 addlight journal 編集部

2022年6月28日、弊社アドライトは日欧米スタートアップとのサステイナブル領域における事業共創プログラム「SUITz(スーツ)」連動企画として、世界の培養肉スタートアップ等を紹介する「Food-Tech Webinar Summer 2022」を開催。

ゲストに欧州屈指のアグリフードテックアクセラレータープログラムの代表格であるStartLife(オランダ)のLin Zhu氏、連続細胞培養技術開発で注目されるCellRev(英国)のCCO・Chris Green氏を迎えた。

本記事では、日本初登壇となる2社の講演の様子をお伝えする。Lin Zhu氏からはStartLifeの紹介とヨーロッパのアグリフードテックの最新動向を、Chris Green氏からは細胞培養肉に革命を起こす同社についてそれぞれ語っていただいた。

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オランダ発アクセラレーター StartLifeとは

(StartLife Investor Relations Manager, Lin Zhu氏)

StartLifeは、オランダ発のagrifoodtechのアクセラレータープログラムだ。ミッションは、持続可能な食糧システムを形成するアグリフードテクノロジーのスタートアップを加速させることである。

10年前に大学の研究部門として立ち上がり、そこから国際的なアクセラレーターとなった。すでにサポートしてきたスタートアップは400社以上、これまでの資金調達額は3億2000万ユーロにもなり、パートナーの企業は35社にも及ぶ。

資金調達のうち、1億4000万ユーロが昨年獲得したもので、パートナーも昨年だけで10社増えている。「この1年で投資も、パートナーも拡大しており、新しく新興のスタートアップを支援する環境ができてきています」とLin Zhu氏は語る。

StartLifeのエコシステムには、スタートアップ、リサーチャー、オランダ政府、大企業や投資家など、多種多様なプレイヤーがいる。

たくさんのグローバル企業とのコラボレーション経験があり、ヨーロッパの会社だけではなく、アジアの会社ともパートナーにいる。投資家もオランダ国内だけでなく、ヨーロッパや他の国からも集まっている。

StartLifeの主な活動目的はスタートアップをサポートすることだ。アクセラレータープログラムだけでなく、メンタリングプログラムなど様々なプログラムがあり、大きなフードテックのサミットなども行っている。

ヨーロッパのアグリフードテックの最新動向

ヨーロッパの資金調達状況についてはコロナの影響があるものの、2020年から2021年にかけて3倍近く伸びている。上流では肉類やタンパク質など、イノベーティブフードに取り組んでいる企業への投資が集まっている。下流では特にe-groceryへの投資が増加している。

また、ステージ別に分析すると、アーリーステージへの投資が伸びているとLin Zhu氏は語る。投資先は主に、「Cultivated」「Fermentation」「Plant-based」などが伸びている。

国別でみるとどうか。最も投資額が多いのはドイツで、e-grocery分野のFlink社とGorillas社の2社が牽引している。ただ、ディールの数では英国が圧倒的に多い。
また、オランダは小さな国だが注目すべき国だとLin Zhu氏はいう。ヨーロッパ全体の投資額の10%を占めており、2020年からかなり伸びている。オランダは技術にフォーカスをした国で、30%近くは上流のスタートアップ企業になる。また、アーリーステージの企業がほとんどで、これからさらなる成長が期待できる。

細胞培養肉だけにフォーカスしても、2020年から2021年にかけて世界全体で投資額が3倍になっている。国別の取引額を見ると、アメリカが細胞培養肉の中心的な市場になっている。ヨーロッパは取引数は全体で2番目に多いものの、投資額はアメリカに比べて10分の1程度に留まっている。つまり、アメリカや中東に比べてまだ投資が集まっていない状況であり、まだまだ可能性を秘めている市場だとLin Zhu氏は説明する。

また、ヨーロッパの取引のうち3分の1をオランダが占めており、そのうちの40%はMeatable社が占めている。この流れに対し、オランダ政府も6000万ユーロの投資で支援をしており、この分野でオランダがリードしていけるという。

「ヨーロッパにはまだシードの非常に初期の段階にある企業が多くあり、まだレーダーに引っかかっていないような小さな会社も多いです。そのため、今後もっと多くの資金調達が行われ、ヨーロッパから大きな企業が出てくると思います」と講演を締め括った。

バイオプロセスに革新を。英国発スタートアップCellRev社とは

(CellRev CCO・Chris Green氏)

CellRev社は、2019年にニューカッスル大学からスピンアウトしたバイオテクノロジー企業だ。実際に細胞培養肉を作る企業ではないが、革新的なバイオプロセスを開発している。

シードラウンドでは、香港の投資家をはじめ多くの投資を集めており、その資金をもとに拡大を続けている。2023年にはシリーズAを予定している。

なぜ、バイオプロセス技術を開発しているのか。背景には世界的な人口増加と、それに伴う食糧難がある。2050年には100億人に増加すると言われている人口だが、既存の食システムではその需要に対して追いついていない。国連によると、すでに6億9000万人が栄養のある食にありつけていないが、2030年にはさらに8億4000万人まで増える試算となっている。そして、私たちの住んでいる土地の半分が食の生産に利用しないといけなくなる。

「培養肉は富裕層だけが楽しむプレミア製品ではなく、食の貧困を救うものでなくてはなりません」とChris Green氏。持続可能で公平な食のシステムを作ることが大切だと語った。

細胞増殖の課題を解決する独自の「連続付着性細胞培養技術」で差別化する

2013年にMosa Meat社が最初の培養肉バーガーの製造に成功、当時は一般消費者が購入するのは難しい値段だったが、労力を費やせば培養肉製造ができることが証明された。

では、どのようなプロセスを経て培養肉は製造されるか。まずは検査をして動物生体から細胞を取り出し、細胞から不要なものを取り除いていく。そうして得た細胞から細胞株を確立していく。細胞は突然変異を起こすこともあるため、遺伝子的な特性を維持し、一貫性を保つことが重要になる。次にここで得た細胞株をインプットとして、バイオリアクターに入れ、増殖、分化という2つのプロセスを経ていく。様々な種類の細胞があり、それらを複製していくことで新しい製品が作れる。最終的にできる製品にはバーガーのように構造化されていないものもあれば、ステーキのように構造化されているものもある。そのような製品の製造ではスキャフォールドやバイオプリンティングなど別の技術が使われる。

「これらのプロセスは新しい方法でかなりの労力がかかる。ここ5年ほどで大きな進歩がみられたが、適切な種類の細胞を適切な条件で十分に増殖させることができないでいる。CellRev社もこの一連のプロセスの中で、特に増殖に関わる部分にユニークな技術を持って関わっていきたい」とChris Green氏は語る。

CellRev社はなぜ増殖の部分に注目するのか。それは既存のやり方では培養肉の需要に対して全く供給が追いつかないためだとChris Green氏は指摘する。マッキンゼー社が2021年に発表したブログによると、2030年までに250億ドルの培養肉市場に到達するためには、年間150万トンの培養肉が必要とされているが、現状は製造するための設備が全く追いついていない。バーガー1つを作るにも290億個の細胞が必要であり、既存のやり方ではコストがかかりすぎるため、このままでは市場流通がままならないという。

これらを解決するためのソリューションを提供できるのがCellRevの差別化技術という。具体的には「連続付着性細胞培養技術」というもので、特許も取得している独自の細胞剥離プロセスと、特別に設計されたバイオプロセスにより差別化を実現している。

このソリューションは産業を成り立たせるために非常に重要な技術になり、大きなメリットをもたらすという。従来の方法からCAPEX(資本的支出)は57%に抑えられ、細胞を3倍増殖することができ、ランニングコストを大幅に下げることができる。冒頭に紹介した生産にかかる土地も予測されているものより、3分の1程度に抑えることもでき、サステナブルなソリューションになるとChris Green氏は語った。

取材を終えて

ヨーロッパではドイツやイギリスなどを筆頭に、培養肉開発に投資が集まっている状況である。特にMosaMeat社を輩出したオランダでは政府がスタートアップに積極的に支援を行っていることもあり、小国ながらこの分野では存在感を示している。やはり、世界的なスタートアップ企業を生み出すには、企業と投資家だけではなく、政府や研究機関なども含めたエコシステムの形成が重要になる。この点は日本も見習いたい。

また細胞培養肉の開発はいかにスケールしていくかが課題であることが今回のイベントでも語られた。ご紹介したCellRev社を始め、課題解決に向けた技術革新はスタートアップを中心にこれからもどんどん発展していくだろう。弊社ではSUITz」の活動をはじめ、このような欧米スタートアップの動向をこれからも紹介していきたい。

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