韓国・ソウルに「タルンイ」というシェアサイクルサービスがある。2015年秋、ソウル中心部に展開し、貸出台数2,000台からスタート。その後市民の声を受けてか、2年後には18,000台配備し、現在では明洞や東大門等にもエリアを広げ、20,000台規模にまで拡大。
Mobikeのように民間事業主が行っているサービスとは異なり、ソウル特別市による公共交通機関の利便性向上を見込んだ施策として外国人も利用できる。
貸出、返却ともに手軽で手間いらず
手続きはいたって簡単かつシンプル。ウェブサイトにある利用券購入ボタンをタップし、利用券区分を選択(1時間か2時間)。クレジットカード情報を入力すると、決済と同時に解錠に必要な8桁のナンバーが発行される。アプリをダウンロードする必要も個人情報を入力する必要もない。韓国語以外に、英語、中国語、日本語にも対応している。
1時間で1,000ウォン(約100円)と、日本で展開している各種シェアサイクルとさほど変わらない料金で利用できるのも嬉しい。
会員はQRコードでのレンタルも可能なようだが、MobikeのようにQRコードを撮影するだけでなく、その後暗証番号を入力する必要があるようだ。
自転車は電動ではないものの3段階の変速機付きで、思っていた以上に乗り心地は良かった。ただし、利用開始後にチェーンが外れる等メンテナンスが行き届いているとは言いづらいため、利用前によく確認する必要がある。
一時的に駐輪したい場合、前輪や支えとなるものに付属のチェーンを巻きつけ、緑色のロックをはめる。返却時は貸出時と同じようにラックに収納し、ロックプレートでロックすれば完了となる。ステーションに空きがない場合、ほかの自転車の補助ロックで返却したい自転車に差し込めば完了する。
利用の手軽さの裏で見えてきた課題
実際に利用してみていくつか気づいたことがある。まだまだ利便性が高いとは言えないということだ。第一にステーションが分散しすぎている。オフィスが建ち並ぶ江南区で試乗したところ、地下鉄2駅分にあたるおよそ2kmの過程で目的地までステーションを見つけられなかった。降車付近にステーションがなければ借りることを断念せざるを得ず、毎度地図で検索することになるのは面倒だ。
2つ目の理由は、街のつくりだ。試乗した江南区は坂が多く、幹線道路がぶつかる交差点を渡るには横断歩道のあるブロックまで移動しなくてはならない。
あくまで江南区という限定された地区で利用した感想のため、ソウル市内に当てはまるわけではない。実際、数百メートルおきにステーションが設置されている地区もある。
江南区でも公共のラックが多数見受けられたため、転用することで利便性は高まるのではないだろうか。また電動形式を導入することで、地形的障壁はある程度カバーできる。
現地でシェアサイクルの評価は高く、公共の交通機関と組み合わせて利用するというスタイルが一般的。ただステーションが限られていることや、時間選択の少なさといったことはやはり今後の課題といえる。
試乗を終えて
MobikeのようにQRコードを読み込むだけで利用できるほどまではいかずとも、登録の手間はMobike以上にかからない印象だ。番号発行システムは通信環境がいらないため、カフェのWi-Fiのみ利用するといった外国人観光客にとっても使い勝手がいい。タンルイの場合、ロックプレートでロックしないと返却扱いにならず、30分毎に超過料金が発生するため、乗り捨て問題にも発展しづらそうだ。
ソウルは年中交通渋滞に見舞われ、通勤時には地下鉄も日本並みに混雑を極める。こうしたシェアサイクルを有効活用することで、韓国での移動は格段にスムーズとなるだろう。その際、防寒対策は万全を期しておきたい。この時期のソウルは最高気温が5度以下、夜にはマイナス20度まで落ち込むこともある。2月初旬現在、筆者以外の自転車利用者に出会えなかったことを最後に付け加えておく。