海洋が切り拓くGX -政策・産業・地域が交差するブルーエコノミーの戦略的価値-

 addlight journal 編集部

GX国家戦略における海洋の位置づけ

日本におけるGX(グリーントランスフォーメーション)は、単なる温室効果ガスの削減にとどまらず、「エネルギーの安定供給」「経済成長」「産業競争力の強化」を同時に実現する国家戦略として位置付けられています。資源エネルギー庁が示しているように、GXは排出削減と経済成長の両立を目指す構造転換であり、その実現には新たなフロンティアの開拓が不可欠です。

その中で、海洋は再生可能エネルギー、炭素吸収、資源循環といった多面的な価値を内包する領域として注目を集めています。四方を海に囲まれ、広大な排他的経済水域を有する日本にとって、海洋は未活用の成長資源であり、GXの成否を左右する戦略的領域といえます。政府もGX推進戦略の中で再生可能エネルギーの主力電源化を掲げており、海洋空間の活用はその中核的なテーマとして位置付けられています。このように、海洋は単なる自然環境ではなく、「国家の競争力を左右する経済空間」として再定義されつつあります。

出典:内閣府総合海洋政策推進事務局提出資料

洋上風力を軸とした制度設計と産業化

海洋GXの中心に位置するのが洋上風力発電です。環境省・経済産業省・国土交通省が共同で推進する政策において、洋上風力は「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札」として明確に位置付けられています。

日本政府は、2030年までに10GW、2040年までに最大45GWという導入目標を掲げ、領海にとどまらず排他的経済水域への展開も視野に入れています。その制度的基盤となるのが再エネ海域利用法であり、国土交通省と経済産業省が連携し、海域の利用ルール整備や事業者選定の透明化を進めています。この制度により、従来不透明であった海域利用のプロセスが可視化され、民間投資を呼び込む環境が整備されつつあります。一方で環境省は、環境影響評価やモニタリングの枠組みを整備し、「環境配慮」と「導入拡大」の両立を図っています。すなわち、日本の海洋GXは単なる技術導入ではなく、制度設計と産業政策が一体となって推進されている点に特徴があります。

出典:shiryo1-2.pdf


ブルーカーボンと水産分野が担う吸収価値

さらに重要なのが、海洋が持つ「吸収源」としての価値です。GXは排出削減に加えて、炭素の吸収・除去までを含む概念へと拡張しています。

その中で海洋は、地球最大の炭素吸収源として重要な役割を担っています。環境省が推進するネイチャーポジティブの考え方においても、海洋環境の保全と活用は不可分であり、藻場や干潟といったブルーカーボン生態系の再生は、気候変動対策と生物多様性保全を同時に実現する手段として注目されています。また、水産庁が所管する漁業・海洋資源管理とも密接に関係しており、藻場の再生や海域管理の高度化は、水産資源の回復とカーボンクレジット創出の両立という新たな経済価値を生み出しつつあります。これにより、従来の一次産業としての水産業は、単なる食料供給にとどまらず、GXの担い手としての役割を担う可能性を広げています。

出典:我が国における ブルーカーボン取組事例集


地域共創と海洋GXエコシステムの形成

そして、海洋GXの本質は「地域との共生」と「産業横断的な価値創出」にあります。洋上風力の導入においても、環境省が強調しているように、地域との共生を前提とした取り組みが不可欠です。漁業者や沿岸地域との調整、港湾インフラの整備、サプライチェーンの構築など、国土交通省や経済産業省が関与する領域は多岐にわたります。また、海洋データの活用やデジタル技術の導入により、海洋空間の可視化と高度利用が進み、スタートアップや異業種企業の参入も加速しています。こうした動きは、単なるエネルギー政策にとどまらず、「海洋×GX×地域経済」という新たな産業エコシステムを形成しつつあります。今後、日本が海洋GXを本格的に推進していくためには、制度・技術・地域を横断した統合的な戦略が求められます。海洋というフロンティアをいかに社会実装へと結びつけるかが、日本のGXの未来を大きく左右するといえるでしょう。


イベント紹介

GX Allianceは、デジタルプラットフォーム「SUITz(スーツ)」を通じ、1社・1業界では解けない課題に対し、産・官・スタートアップが連携して実装を加速するプラットフォームです。講義・ピッチ・ネットワーキングを組み合わせた設計で、大企業・スタートアップ・官公庁・自治体を接続し、協創の場を毎月提供しています。

4回目となるGX Allianceは、「海洋が秘めるGX-次世代を切り開く地域の実装-」です。

メインスピーカーに高知大学 次世代地域創造センター 准教授 岡村 健志氏をお招きし、姿を消した四万十のスジアオノリを、最新技術で再び産業へと蘇らせる「しまんと海藻エコイノベーション共創拠点」の挑戦を解説。海藻を起点に「資源・経済・人材」が循環し、地域と未来を再生させるための産学官連携の仕組みについてお話しします。

ぜひ、皆様のご参加をお待ちしております。

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