はじめに
CVCとは?
CVCとは、事業会社が自己資金により作成したファンドのことであり、主に未上場の社外ベンチャー企業に対して戦略的な投資・経営ノウハウの伝授等の支援を行う組織である。Corporate Venture Caputal(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を略して、CVCと呼ばれる。
CVCは、単なる利益追求という目的だけでなく、自社の既存事業と出資先企業の親和性の高い事業とを掛け合わせることで、イノベーションを加速させるという役割も担う。オープンイノベーションを推進していく上での重要な手段としても注目を集めてきたCVCだが、関連知識に不安があり、担当者に任命されたが今後の運用方法に悩んでいる方は少ないはずだ。
本記事では悩めるCVC担当者にぜひ参考にして頂きたい、厳選された7冊の書籍をご紹介させて頂く。紹介する書籍の中から、ご自身にぴったりの一冊を見つけて頂いて、お悩み解決の一助となれたら幸いである。
CVCに限らずイノベーションへの解像度を上げる書籍
『オープンイノベーション担当者が最初に読む本 外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド』:まさしく最初に読むべき1冊
書籍リンク: https://www.kadokawa.co.jp/product/322312001005/
価格:1980円(税込)
出版社:KADOKAWA
発行日:2024年3月1日
『オープンイノベーション担当者が最初に読む本 外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド』は、経験の有無に関係なく企業のオープンイノベーション担当者は必ず読むべき一冊であり、CVCを始める前にまず理解すべき内容が詰まっている。
著者は、戦略策定者・現場担当者・仲介業者の立場からオープンイノベーション活動に携わってきた経験を持ち、研究・実務双方の面からオープンイノベーションのあり方を探求されている羽山友治だ。
本書の主な特徴として、
・日々の業務で使える実践的なノウハウを豊富に掲載している点
・経験や伝聞に留まらず、論文(海外のものも多数含む)や書籍などの文献を根拠に参照している点
・個別具体的な内容や汎用性のないもの、また仲介業者視点によるバイアスなどを排除している点
・理解が難しいイノベーション周りの語句の関係性を整理している点
・企業に対して、外部活用としてのオープンイノベーション実行チームを機能部門として持つことを提案している点
が挙げられる。
『両利きの経営(増補改訂版)』 :経営実務の世界でも話題になった1冊
書籍リンク:https://str.toyokeizai.net/books/9784492534519/
価格:3080円(税込)
出版社:東洋経済新報社
発行日:2022年6月24日
『両利きの経営(増補改訂版)』は、世界のイノベーション研究の最重要理論「両利きの経営」に関する初の体系的な解説書の増補改訂版である。前版は2019年2月に刊行され、経営実務の世界でも大きな話題となっていた。本書は、2021年9月に刊行された原書第2版の翻訳である。改訂にあたっては、第4章(企業文化)と第7章(イノベーションの3つの規律)などが追加されている。
両利きの経営は、イノベーションで既存事業を強化しつつ(深化)、従来とは異なる手腕が求められる新規事業を開拓し(探索)、変化に適応していくというものである。
本書では、この両利きの経営のコンセプトや実践のポイントを解説している。
CVCは、両利きの経営を達成するうえで重要な役割を果たすとされている。CVC運営から得ることができるものを、どのように企業に還元していくべきかを理解するために、本書は必携である。
ネットフリックス、アマゾン、富士フイルム、AGCなど、企業事例を豊富に収録していることが本書の特徴である。日本企業への示唆も多い。入山章栄氏(学術的な観点から)、冨山和彦氏(実務家の観点から)による「解説」を収録しているので、読者の理解度を高めることに寄与している。
先例から教訓を得たい方におすすめの書籍
『CVC コーポレートベンチャーキャピタル ーー グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略』 :ケーススタディ集のような章付き◎
書籍リンク:https://www.diamond.co.jp/book/9784478084212.html
価格:2420円(税込)
出版社:ダイヤモンド社
発行日:2017年10月5日
『VCコーポレートベンチャーキャピタル ーー グローバルビジネスを勝ち抜く新たな経営戦略』は、CVCについて網羅的に説明がなされている、まさにCVC担当者は必読の一冊である。
著者は、サンフランシスコとNY に拠点を持ち、シード・アーリーステージのソフトウエア・インターネット関連スタートアップ企業に出資するVC の共同代表であるアンドリュー・ロマンス(Andrew Romans)である。
インテル、グーグル、セールスフォースなど、世界的な大企業が次々と設立するCVCとはいかなるものなのかという定義づけから始まり、CVC先進国アメリカで最先端を走るキャピタリストたちがCVCの設立・運営から得た教訓についても記されている。
様々な企業のCVCへの取り組み例や背景が、ケーススタディー集のようにまとまっている章もあり、読者からも「大変参考になる」との声が多数上がっている。CVCの成功例・失敗例について多数掲載している書籍は希少なため、CVCの関連書籍のなかでも特に存在感がある一冊となっている。
スタートアップとの提携を考えている方向けの書籍
『
書籍リンク:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784883355570
価格:1980円(税込)
出版社:宣伝会議
発行日:2022年9月13日
『は、大企業がアライアンス(提携)・CVCを実践していくために必要な考え方について説明している。
著者の冨田氏は、経営コンサルタントとして数多くの企業の経営支援に携わるほか、実際にCVCファンドの運用を行い、投資活動を行ってきた。冨田氏は本書籍のなかで、「ほとんどの企業はなんらかの経営リソースが不足している状態といえます」と指摘しつつも、「それをアライアンスで補完することで、ビジネス構築ができます」と述べている。
アライアンス思考とは、他者(他社)と手を組み、ひとりでは成しえない大きな成果を出そうとする姿勢のことである。アライアンス思考のもと新規事業立ち上げの舵取りをしているビジネスリーダーが、CVCに着目することは自然の流れである。
スタートアップ企業との提携を考えている経営者や事業責任者には特に、CVCの設立から管理までのノウハウが掲載されている本書を手に取って頂きたい。
書籍リンク:https://www.shojihomu.co.jp/publishing/details?publish_id=5444&cd=3110&state=new_and_already
価格:4400円(税込)
出版社:商事法務
発行日:2024年6月5日
適切な契約・資本提携のあり方・知財戦略等について、各著者の専門性を活かしながら検討されている点が、本書籍の特徴である。
CVC実務担当者が知りたかったであろうポイントに網羅的に触れているため、大変お薦めできる一冊だ。Q&A形式で解説されている本書の構成がいかなるものなのかについて気になる方もいらっしゃると思うので、以下第1章の例を参考にして頂きたい。
第 1 章
事業会社によるスタートアップ投資の目的・意義
Q1 事業会社がスタートアップ投資を行うとどのようなメリットがあるのでしょうか。また、スタートアップ投資の目的や出資先スタートアップのステージに応じた留意点についても教えてください。(山本)
Q2 事業会社当社は初めてスタートアップ投資を行うのですが、そもそもスタートアップとはどういう存在なのでしょうか。(山本)
CVC実践に向けて読むべき書籍
『実践 CVC ー 戦略策定から設立・投資評価まで』 :日本のCVCの実態が分かる
書籍リンク:http://www.horei.com/book_978-4-86280-727-4.html
価格:1980円(税込)
出版社:総合法令出版
発行日:2020年2月7日
『は、CVCについて分かりやすく解説すると同時に、実践するためのテキストである。
著者は、先に上で取り上げた『
企業の新規事業立ち上げ担当・CVC担当を任されている方は、この書籍を読むことでCVCへの理解度を高めて頂きたい。
目次は以下の通りとなっている。
第1章 オープン・イノベーションによる新規事業の立ち上げ
第2章 CVCの基礎知識と設立のメリット
第3章 CVCの設立までの流れと設立形態
第4章 CVC投資の案件発掘と投資審査
第5章 投資後のフォローアップと協業の推進
付録1 CVC投資の最新手法 ディスカウント型コンバーティブル・ノート
付録2 各社のCVCに事例紹介
巻末特別対談 冨田 賢 × 林野 宏(クレディセゾン代表取締役会長CEO)
終わりに
以上の7冊が、CVC担当者に向けておすすめしたい厳選書籍である。各書籍はそれぞれ異なるアプローチでCVCの実践方法や実態について分析しているので、ご自身の目的に合わせてより適した一冊を選び出して欲しい。
また、最後に、アドライトが開催しているプログラムについて紹介させて頂く。
新規事業化支援総合プログラム「イントレプレナーズ」とは アドライトが提供する、事業会社向けの新規事業化の総合支援プログラムである。 戦略〜人財育成〜事業化をインキュベーションマネジメント支援、イノベーション人材育成支援、事業 開発伴走支援の3つのサービスで一気通貫して実行し、社内から継続的に事業が生み出され続ける体制構築を実現する。本記事にて紹介した書籍に加えて、こちらのプログラムについてもご活用して頂きたい。