【イベントレポート】GXワイガヤ会議 -和歌山県のGXに関する現在地と将来に向けて-

 addlight journal 編集部

GXワイガヤ会議の趣旨

和歌山県が推進するGXビジネスモデル創出事業「G³Drive(ジーキューブドライブ)」の一環として、「GXワイガヤ会議 -和歌山県のGXに関する現在地と将来へ向けて-」が開催された。事例紹介・グループ意見交換・支援機関メニュー紹介・ネットワーキングのプログラムが展開された。

GXワイガヤ会議は、G³Driveの理念のもと、新たな価値創造と「知る・測る・減らす」という脱炭素の実践の両輪を回すことを軸に設計されている。アドライト山本氏からは、国家戦略である脱炭素経営の重要性とともに、中堅・中小企業がコスト・人材・効果測定の面で抱える課題が共有された。本会議の狙いは「一方的な情報提供」から脱し、リアルな場で課題認識を共有し、参加者が自社での活動の糸口を掴むことに置かれた。


事例紹介①:DAIWA SOUL ​〜大和金属工業の脱炭素経営〜​

1948年創業、売上28億円(2024年度)の金属製品メーカー・大和金属工業株式会社(福井県)の取り組みを、総務部課長の関坂氏が紹介した。

会社概要 1948年創業、間もなく創業80年を迎える大和金属工業は、売上28億円(2024年度)の金属製品メーカーだ。大阪に3工場、福井に3工場の計6工場を構え、金属プレス加工・金型提案を主軸としながら、近年はパワーコンディショナー筐体・蓄電池ユニット部品・EV充電スタンド筐体といった環境関連製品にも注力している。サプライチェーン上のTier1企業として全国の主要取引先へ製品を供給しており、高難度の絞り加工を得意とする。登壇者は総務部課長の関坂氏で、2020年から同社の脱炭素経営を実務面で牽引してきた。

環境に配慮したビジネスモデル 

同社は開発段階から環境配慮を組み込んでいる。高度なプレス技術とデザイン最適化により材料の浪費を抑えるほか、不純物混入により扱いが難しい再生材を自社技術で通常材料と同様に加工できる体制を整えている。物流面でも梱包サイズの最適化による積載効率向上で輸送回数を削減するなど、製造から物流までCO2削減を意識した取り組みを推進している。

脱炭素経営を強化する2つの理由 

①取引先から選ばれる企業であり続けるため、自社のユニークネスを脱炭素経営で発揮すること、②環境市場で事業を行うプレイヤーとして、環境への知見が製品の付加価値向上に直結するという使命感──この2点が根幹にある。

フェーズ1:脱炭素経営への踏み出し(コロナ禍) 

コロナ禍で事業が苦戦する中、経営陣のトップダウン判断で「こんな時だからこそ脱炭素経営に舵を取ろう」と決断。全工場の電力を再エネプランへ切り替え、RE100の中小企業版である「再エネ100宣言REアクション」に加入した。結果として電気料金は増となったが、Scope1・2のCO2排出量は0tへと削減。短期的なコスト増ではなく、将来の電力確保と企業価値向上を見据えた判断だと関坂氏は強調した。当初は担当者として知識もデータも不足した手探りのスタートだったが、「完璧な知識を持ってから始めるものではなく、関係者と対話しながら手を動かすことが重要だ」と実感したという。

フェーズ2:取引先との協業 

2022年、主要取引先との共同調査を機にCO2排出量を製品単位まで算定。脱炭素が取引先との「共通言語」となり、既存顧客への浸透・新規顧客への提案機会拡大・ステークホルダーとの関係強化につながることを実感した。

フェーズ3:自発的なアクションプランの策定 

福井銀行グループの伴走支援のもとCO2算定を精密化し、SBTi認定を取得。カーボンクレジットの購入によるオフセットも実践した。具体的な削減施策として、太陽光設備の導入、LED化、省エネ診断の活用などを補助金も活用しながら着実に積み上げた。

社内外への波及効果 

社外では産学官金の連携が加速し、企業間交流や行政・大学イベントへの登壇へと発展。社内では従業員のコスト意識が向上し「不使用品再利用ボックス」の自主運用が生まれるなど、組織文化の変容も起きている。採用面でも20〜40代の新規採用と平均勤続年数14年という定着率向上につながり、表彰などのポジティブな外部からの評価がブランディングに貢献している。

今後の展望 

現在はScope3のカテゴリー1から算定を開始しており、今後は一次データ取得により粒度を高め、他カテゴリーへも展開予定。また、自社が支援を受けてきたように、次はTier2企業や外注先にも脱炭素の動きを横展開していきたいと結んだ。「本日お話しした取り組みは決して特別なものではなく、中小企業でも一歩ずつ進められる。スモールスタートでも継続することで体制は必ず整う」というメッセージが、参加者への力強いエールとなった。


事例紹介②:地域ハブとしての『金融機関』 ​〜地域エコシステムの構築へ向けて〜

地域エコシステムの構築という理念 

2026年からスタートする新中期経営計画において、福井銀行グループが改めて重点化したのが「地域エコシステムの構築」だ。グループが仲介役(ハブ)となり、地域の企業・行政・県外企業をつなぎ、地域全体と共に歩む姿勢を理念として明文化した。取引の有無にかかわらず意図的に交流をつくり、つなぎ続けることで好循環が生まれるという確信が、大和金属工業や福井鋲螺との実践を通じて得られた学びだという。

きっかけとなった福井鋲螺との「寄り添い活動」 

取り組みのきっかけとなったのが、福井鋲螺とのサプライチェーン支援だ。同社はサプライヤーの現場に自ら赴き、要請ではなく寄り添いの姿勢で、相手のペースに合わせながら脱炭素の取り組みを共に進めた。省エネ診断機器を顧客企業が使用するという形で、見返りなく同じ目線で実践を積み上げたこの活動は、「対話を通じた寄り添い活動」として高く評価されている。この取り組みが環境省のESGファイナンスアワードで特別賞を受賞。金融機関と企業の連名申請という異例の形での受賞となった。岩堀氏は「受賞を喜ぶより、この取り組みをいかに普遍化しフレームワーク化して広げるかという危機感を覚えた」と述べ、来年度は経済産業省・環境省の補助事業も活用しながらモデル化を進める方針を示した。

大和金属工業との連携と広域へのつながり 

大和金属工業とはCO2の見える化を起点に、省エネ診断・SBTi認定・Jクレジット購入まで着実に伴走。現在はScope3算定を支援中であり、今後は同社が福井鋲螺のように旗振り役となってサプライチェーン全体へ取り組みを広げていけるよう、最後まで共に歩む考えだ。また、昨年10月の和歌山県庁との交流をきっかけに、福井県内企業と和歌山県内企業(化学・繊維・宇宙・金属など産業構造が近しい企業)との企業間交流が実現し、本日の場へとつながったことも紹介された。「つないで、つないで、つながって伝播していく」好事例だと岩堀氏は語った。


ワイガヤセッション

事例紹介の後、参加企業の方々同士による意見交換の場が設けられた。前半講義への感想にとどまらず、自社における脱炭素の取り組み状況や、経営・現場両面での課題がリアルに共有された。業種も規模も異なる企業が同じテーブルを囲み、立場を超えた率直な対話が生まれたことは、情報提供だけでは得られない本会議の特徴だ。「脱炭素」という共通言語が、地域の企業間に新たな連携の芽を育む場となった。


近畿経済産業局からのご案内

近畿経済産業局 矢野氏より、企業の脱炭素・省エネ推進を後押しする2つの支援メニューが紹介された。

① 省エネ補助金 現在導入している生産設備やボイラー、照明、ヒートポンプといったユーティリティ設備を、省エネタイプへ入れ替える際に活用できる補助金制度。企業のニーズに合わせた複数の類型が用意されており、一次公募が約1週間以内に開始予定。昨年度は計3回の公募が実施されており、今年度も同程度の募集回数が見込まれる。

② 省エネ診断・伴走支援 「何から手をつければよいかわからない」という企業向けに、省エネの専門家が現地を訪問し、エネルギーの使用状況をヒアリング・確認のうえ、コスト削減につながる改善提案を行う「省エネ診断」を提供。計測器を用いて電気・空気・熱の使用データを取得し、無駄を可視化する「IT診断」も選択可能。診断後に自社での取り組みが難しい場合は専門家と共に実行を進める「伴走支援」、または診断結果をもとに支援企業とのマッチングを図る「マッチングプラットフォーム」も活用できる。省エネ診断を受けることが補助金申請の足がかりにもなるため、まずは診断の検討を勧めたい、と締めくくられた。

東京海上日動火災保険株式会社からのご案内

東京海上日動火災保険株式会社の福田氏より、脱炭素経営支援サービス「スマートGXナビ」が紹介された。

GX支援に取り組む背景 気候変動が経済システム全体を脅かすリスクとなる中、日本政府も2050年カーボンニュートラルを明言し官民一体での移行を進めている。損害保険は気候変動が影響を及ぼす事業継続のリスクと密接に関わる業種であることから、東京海上グループは保険サービスの提供にとどまらず、お客様の脱炭素化と事業継続を支える役割を積極的に担うべく、GX支援に取り組んでいる。

東京海上スマートGX株式会社とスマートGXナビ 同グループのGX領域専門会社として2024年10月に設立された東京海上スマートGX株式会社が、支援サービス「スマートGXナビ」を提供している。CO2排出量の可視化から削減策の検討、約40社のパートナー企業と連携したソリューション導入、そして継続的なモニタリングまでをワンストップで支援する仕組みだ。

提供するソリューション LED照明・空調の更新、空調換気制御システムの導入、クリーン燃料システムの活用など、コスト削減から企業ブランド向上まで多岐にわたる施策を用意。初期費用がかからない導入プランも選択可能で、幅広いニーズに対応できる。

脱炭素をリスクであると同時にチャンスと捉え、保険の枠を超えた付加価値として企業価値向上に貢献したいと締めくくられた。


今後のG³Driveの事業展開

和歌山県の田村氏からは、来年度の4本柱が示された。

  1. GX関連産業集積に向けた調査等 (新規)
  2. 排出量見える化支援補助金 (継続)
  3. 地域の脱炭素化機運醸成支援 (継続)
  4. カーボンフットプリント算定支援(新規)

「グリーンは目的ではなく事業成長の手段」という姿勢のもと、補助金を初期コスト圧縮に活用しつつ最終的に自走する計画が求められること、そして県が技術の目利きからビジネスの出口設計まで共創していく方針が改めて強調された。異業種の参加者が「共通言語」で議論できる場の継続的な創出こそが、和歌山県のGX推進の核心にある。