【事例】サッポロが挑む、新しい価値を創出できるDX人財育成の取り組みとは ――サッポロホールディングス株式会社

 addlight journal 編集部

サッポログループでは「中期経営計画(2023〜26)」における事業戦略・財務戦略・サステナビリティを支える経営基盤として「DX」を重点活動の1つに位置付けている。その一環として、2022年から始動したDX・IT人財育成プログラムでは、2年間でDX・IT基幹人財900名の育成を実施。さらに、DXによる大胆な業務改革や新たなビジネスモデルの創出を目指し、2024年4月から約8カ月間のDX・IT高度人財の育成を実施した。

アドライトは同社に対し、新規事業開発支援で培ったノウハウに有識者の知見を融合し、高度なプロジェクトマネジメント人財の育成を目的とした講義やワークショップを実践レベルで提供した。今回、同社にてプログラムに参加したDX・IT統括本部 DX企画部 マネージャー 浜本 あゆみ氏、同部署の菊池 紗弥伽氏、遠井 大我氏に、その取り組みの背景、研修プログラムの詳細、参加者が得た成果についてお話を伺った。

会社紹介:サッポロホールディングス株式会社

サッポロホールディングス株式会社では、「潤いを創造し 豊かさに貢献する」という理念のもと、ビール事業をはじめとして、総合酒類、食品・飲料、外食、不動産の領域において事業を展開。

「公式サイト:https://www.sapporoholdings.jp/

DXによる業務改革や新たなビジネスモデルの創出を目指し高度PM人財育成に着手

――皆さんの所属する部署と役割について教えてください

浜本氏:
3名とも同じサッポロホールディングスのDX・IT統括本部DX企画部に所属しています。部署としては全体で十数名いて、データサイエンティストとビジネスアーキテクトのメンバーがそれぞれいます。
私の業務としてはグループ全体のDX基盤整備を行なっており、特に新規事業に関しては自分でも手を動かす立場として携わっています。

遠井氏:
私も業務としては社内のDX創出や推進、新規事業の開発に携わっています。

菊池氏:
私は現在、DX企画部とポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社のマーケティング本部新市場創造部を兼務しております。

――今回、育成プログラムをアドライトにお願いするきっかけとなった理由について教えてください

浜本氏:
サッポログループでは、2022年にDXの方針を打ち出しています。DXの中でも特に「トランスフォーメーション」つまりビジネスモデルやサービスモデルの変革を行うために、新規事業の創出、拡大を目指しています。

その中で、各社でもすでに取り組んでいる部分はありますが、ホールディングスとしてもグループにとっての新たな領域で、新規事業を創出していける人の育成に取り組む事となり、経産省のデジタルスキル標準でいうビジネスアーキテクト人財の育成をお願いしました。

――プログラム参加者はどのように集められたのでしょうか

浜本氏:
指名制です。私の所属するDX・IT統括本部 DX企画部で新規事業に取り組む人を作るということは決まっていたので、DX企画部のメンバーが中心となっています。

――プログラム参加への期待について教えてください

浜本氏:
私自身これまでいくつか新規事業に携わる機会がありましたが、あまり体系的に学ぶ機会というのはありませんでした。新規事業に関する一連の知識、スキルを改めて学ぶ機会として期待しておりました。

菊池氏:
指名制だったため、最初は突然のことのように感じましたが、1人あたりにかなりのお金と時間をかけて育成してくれるのだと感じたことと、そこで得られるプロジェクトマネジメントのスキルは、これからの社会変化の中でも必ず求められるスキルだと思い、自分の研さんのためにも期待値としては高かったです。

遠井氏:
私は社内に元々あったDX人財育成のプログラムには第1期から参加させていただいており、DXの取り組み自体には興味を持っておりました。今回の取り組みについても、自分のスキルや実力を上げることができる取り組みだと、とても興味を持って参加しました。また、菊池さんと同じく、会社として多くの投資をして作ってくれている環境で、チャレンジをしたいという気持ちで参加させて頂きました。

理論と実践を組み合わせた効果的なプログラム構成

――プログラムはどのように進行したのでしょうか?プログラムの進行について感じたことを教えてください

浜本氏:
今回、プログラム全体としてはフェーズ1と2に分かれており、フェーズ1では一通り新規事業に関する方法論を学び、フェーズ2では実案件を作ることを目標として進めました。

新規事業の分野は失敗しないと学べない部分があると思いますが、普通にやっているとなかなか失敗するのにも時間がかかります。今回のプログラムではフェーズ1を3ヶ月ぐらいで進行したので、そこで一度失敗の経験ができたことがよかったです。フェーズ1でフレームワークの使い方を体験した上で、すぐにフェーズ2で活用してみることができたので、その点もよかったと思います。

また、フェーズ2では協働プログラムとしてデータサイエンティストとも一緒になって事業を考えていきました。その中で、事業企画側だけではなかなか具体性を持たせられなかったアイデアや方法に対して、事例を踏まえたデータ活用ビジネスの示唆を頂けたのも大変役に立ちました。

遠井氏:
私はこれまで新規事業開発を経験したことがなく、バックグラウンドが何もない状態だったので、まずフェーズ1で新規事業がどうやって立ち上がっていくのかを体系的に学べたのはよかったです。

そのおかげで、自分の考えたアイデアがどのように事業になっていくのか全体感が掴めた中でフェーズ2に取り組めました。このような2段階のプロセスで学べる体制を作ってもらえたのは非常によかったと感じています。

菊池氏:
私も本業の方で新規サービスには携わっていますが、なかなか実際に新規事業をされている方の話や知見を直接聞く機会がなかったので、それが非常に参考になりました。

また、フェーズ2で実際に事業を考えていく過程で、1人で悩んでいるところに対して、メンターの方にメンタリングいただくことで、事業がブラッシュアップできたところもよかった点でした。

――プログラムの中で特に印象に残ったカリキュラムについて教えてください

遠井氏:
新規事業を実際に興して活躍されている講師の話が印象的でした。モチベーションやメンタリティ、ビジネスの視野など、どういうスタンスが必要なのかを人柄も含めて感じることができ、個人的には一番印象に残っています。

菊池氏:
私も実は一緒で、実際に新規事業を進められている講師の話がすごくよかったです。フレームワークなどはある程度本を読めば体系的に学ぶことができると思うのですが、本当に大切なのはモチベーションのところや、どうやって実践するのかだと思うので、その部分をリアルな話も踏まえてお伺いできたのはよかったと思います。

もう一つ実際の業務でも活用できているのは財務に関する講義についてです。そこで得られたフォーマットや考え方は実際の業務にも役に立っています。

浜本氏:
私はビジネスモデルキャンバスを書いてレビューを頂いた会が印象的でした。これまでも、ビジネスモデルキャンバスというフレームワークがあることは知っていて、実際に書いてみたりすることはあったのですが、自分の整理のためだけに書いて終わることがありました。

しかし、講義の中では、受講者同士で発表をして、講師からかなり具体的なフィードバックを頂けたことが非常に役に立ちました。今後、自分がフレームワークを活用する場面でも役に立ちましたし、自分が壁打ち相手となってメンバーのレビューをする際にも、どのような観点でフィードバックすると良いのかが学べたと思います。

プログラムを通じた新たなビジネスモデル創出の展望

――プログラムからは実際に今後新規事業になりうる企画が生まれたと聞いています。アイディエーションから今回のプログラムを通じて、どのような変化があったかを教えてください

浜本氏:
今回、アイデアを考えるにあたって、アントレプレナーではなくて、イントレプレナーであることを意識していました。イントレプレナーとしてグループのアセットを活用し、社会の潮流を踏まえながら、どのテーマにチャンスがあるのかを考えました。

テーマを決めてからは、実際にビジネスモデルの具体化を進めていきましたが、プログラム開始時に想定していたターゲットからヒアリングしていく中で別のターゲットに変更していきました。アイディエーションの段階では本当にビジネスモデルとして成立するのか私自身も半信半疑でしたが、今回のプログラムを通じてターゲットを変更したことで課題が明確になり、ビジネスモデルも具体化することができました。

また、事業を進めるには泥臭く、ステークホルダーを巻き込む必要があることもアドバイスとして頂き、ビジネスモデルをブラッシュアップできた点は私1人では絶対に思いつかなったところだと思います。

遠井氏:
私は元々いた部署で得られた知見を活かしたいという思いからアイデアを着想していきました。最初は、元いた部署が抱えている問題をDXで解決できないかという方向性で考えていたのですが、それだと業務の延長線上であまり面白くないと感じ、もう少しエンタメ性のあるアイデアにシフトし、テーマを決めていきました。

プログラムを通じて、初期のアイデアから大きく変わったのは市場の捉え方に関する部分です。メンタリングを受ける中で元々考えていた市場では、すでに競合がいたり、その競合の財務を調査しても実は売上があまり立っていないことがわかり、だったらもっと大きな市場を狙った方がいいのではというアドバイスを貰い、ターゲット市場の捉え方を変えられたのがよかったかなと思います。

菊池氏:
今回、新規事業をするのにあたって、何か社内にも恩恵が得られることがよいなと思い、私は本業でやっていた業務が抱えていた問題を起点に考えました。また、我々がやりたいことやできること、社外のお客様がサッポロに対して期待することなどをヒアリングし、その中で社内に蓄積されていたデータが実は非常に価値のある無形資産になっていることに気づき、それを活用するようなテーマで進めていきました。

アイデアの着想から最終プレゼンまでで、アドライトさんからアドバイスをもらった中で印象的だったのはアイデアの拡張性に関する部分です。初期のアイデアでは市場が小さいのではないかという懸念があったのですが、アイデアを拡張すれば同じ技術を使って市場を広げることができるのではないかというアドバイスをいただいた点が役に立ちました。

――プログラムを受けて、参加者の皆さまが感じた成果について教えてください

浜本氏:
今回のプログラムを受けて、フレームワークの使い方や検討ステップの考え方など、要点を理解することができたので、内製で人財育成をする際にも活用できるのではないかと考えています。

また、新規事業の進め方について、共通認識ができたことがチームとしては成果だったと思います。プログラムを受ける前は、まずはアイデアを思いついて、具体化したところで市場のニーズを確認するやり方で進めることが多かったのですが、その方法だとニーズ確認のところで失敗することが多くありました。しかし、今回プログラムを通じて、まずは「市場のニーズを確認する」ということを叩き込まれ、チーム内でも共通認識を持てたことがよかったと思います。

菊池氏:
個人的に思う成果としては、例えば、市場の見つけ方やユーザーインタビューの方法など、受けた講義の内容を兼務先の部署で展開することができており、組織に対して貢献することができているのではないかと思います。

遠井氏:
私はこのプログラムで、フットワーク軽く、様々な人に情報収集しにいくというのが大事であると学びました。その動き出しの速さや、情報収集しながら何かを見つけていくという観点は染み付いたと思います。

――最後に、今後の展開について教えてください

浜本氏:
具体的に市場性とか事業実現性を精緻に確認して、市場性が確認できたものは本当にサービスの提供を開始するところを目指して進めていきたいと思います。

遠井氏:
今回、検証を通して作り上げてきたアイデアではあるので、何かしら形にしていきたいなと思います。ただ、色々な人から見てもらって意見を聞くと、まだ足りていない観点や改善点が見えてきているので、実際の事業化に向けては柔軟に対応をしていきたいと思います。

菊池氏:
私も皆さんと同様に、まずは市場のニーズを丁寧に検証しながら、事業化を進めていきたいと考えています。

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