はじめに
「脱炭素ビジネス」が注目されている背景
近頃、「脱炭素ビジネス」という言葉を耳にする機会が以前よりも格段に増えたのではないだろうか。世の中の企業が脱炭素という観点を重要視しながら経営・事業展開をしていくべきとされる理由は、大きく分けて三つある。
まず一つ目に、地球温暖化を食い止めるためのアクションを「今」起こす必要があるからだ。従来の環境を顧みない方法ではなく、温室効果ガス排出量を最小限にとどめる環境に優しい方法での事業展開に転換することができなければ、数十年後には取り返しのつかない状況になってしまうだろう。
二つ目に、脱炭素ビジネスへの挑戦は一種の「チャンス」であるからだ。脱炭素やカーボンニュートラルは世界的な潮流であり、新たな製品・サービスの開発に続々と繋がっている。経済成長の新たなエンジンとなり、雇用創出にも貢献するため、この波に企業が乗らない手はない。
三つ目に、脱炭素ビジネスに着手することは、社会的責任を果たすことでもあるからだ。環境問題に対して責任を持ち、脱炭素ビジネスに取り組むことで、世間からの企業イメージを向上させられるだけでなく、株主・投資家からの評価を高めることができる。
本記事では、脱炭素ビジネスについて理解度を高めるうえで役に立つであろう7冊の書籍を紹介するので、ぜひ参考にして頂きたい。
脱炭素ビジネスの全体像及び流れを掴みたい方へ
書籍リンク:https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85109-9
価格:979円(税込)
出版社:PHP研究所
発行日:2022年1月15日
は、脱炭素社会への転換という世界の大きな流れに乗り遅れまいと、関連情報を網羅的に抑えたいビジネスマンにおすすめの書籍である。
脱炭素ビジネスの重要性についての説明にはじまり、日本の当該領域におけるビジネス展開の現状、脱炭素時代の企業の経営方法等についても触れており、非常に満足度の高い内容となっている。
筆者の江田は大学卒業後、大手外資系コンサルティング会社のエネルギー/化学産業本部に所属して電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画した後、RAUL 株式会社を設立。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や、企業の社会貢献活動支援を実施してきた。
江田が持つ、「ビジネスの視点」から書かれた本書を読むことで、ビジネスの現場で役立てることのできる脱炭素へのアプローチ方法を身につけて頂きたい。
『
書籍リンク:https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/21/282450/
価格:2090円(税込)
出版社:日経BP
発行日:2021年11月8日
序章タイトルは「トヨタの危機感を共有せよ」といった印象的なものとなっており、本書に記載されている、事業環境を壊す気候変動・企業を追い込むESG潮流・脱炭素市場での中国の独走といった現実を再確認することで、今まさに脱炭素ビジネスを推進していくことの大切さを実感することはずだ。
本書はレビューにてかなりの高評価を得ており、「今後の羅針盤として活用できる」「もっと多くの人に読んでもらいたい」などの好意的なコメントが多数みられる。
世界を取り巻く脱炭素の流れをしっかりと理解したい方が最初に購入する1冊として、安心して手に取って頂ける書籍だと思われる。
書籍リンク:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784828309057
価格:1760円(税込)
出版社:ビジネス教育出版社
発行日:2023年3月2日
目次は、以下の通りとなっている。
序章 脱炭素に動き始めた世界
第2章 なぜ、御社が脱炭素に取り組まなければならないのか
第3章 安易に脱炭素経営の流行に乗ることの危険性
第4章 脱炭素を武器にする
第5章 脱炭素に取り組む
第6章 クレアトゥラにできること
本書は、脱炭素なんて関係ない!と無関心な人に対して警報を鳴らしており、環境に配慮したビジネス転換に対応できなければ取引先を失う恐れもあると主張する。
著者の服部は、2022年に独立し、クレアトゥラ株式会社を立ち上げ代表に就任。欧州とのJV運営等で培ったグローバルネットワークだけでなく、社内に多国籍の専門家を抱え、売上1兆円以上の多国籍企業を中心に先端的な気候変動サービスを提供している。
服部が本書を通して伝える、「体系から学ぶ、環境経営の基礎知識」を身につけ、脱炭素ビジネスの実践に活かして頂きたい。
技術面から脱炭素ビジネスにアプローチしたい方向け書籍
『ビジネス屋と技術屋が一緒に考える脱炭素』:ビジネスと技術の両視点で脱炭素ビジネスを考えるための1冊
書籍リンク:https://www.ohmsha.co.jp/book/9784274230578/
価格:2420円(税込)
出版社:オーム社
発行日:2023年5月26日
『ビジネス屋と技術屋が一緒に考える脱炭素』は、エネルギー・環境分野に携わるビジネスパーソン・経営者・技術者・行政機関及び環境問題・SDGsに関心のある人におすすめの1冊である。
ビジネスと技術の両視点で考えるところが本書の特徴であり、脱炭素の切り札として今注目を集めている水素を実際に利用している現場の取り組みや、工場における化石燃料を使わない生産工程等の具体的な対策などを事例に用いて説明している点が優れている。
脱炭素ビジネスといっても具体的にどのようにアクションすればよいのか迷っているような方は、本書に記載されている事例を参考にしながら戦略を練り上げることで、一歩を踏み出すことができるのではないかと思う。
「化石燃料が使えなくなる前に行うべき取り組み」をテーマに書かれたこの1冊を、ぜひ手に取って頂きたい。
『図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』:約30種の技術について説明されている、脱炭素ビジネス解説書
書籍リンク:https://direct.gihyo.jp/view/item/000000003030
価格:1980円(税込)
出版社:技術評論社
発行日:2023年4月24日
『図解即戦力 脱炭素のビジネス戦略と技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』は、脱炭素×資源循環のGX戦略の理解に大いに役立つ1冊である。
本書は脱炭素社会の背景から学び直し、国内外の脱炭素市場の動向や、製造や金融業をはじめとした各業界・産業のビジネスの変革と戦略、エネルギーを生み出す/エネルギーを効率よく使う/CO2を削減するの3つに分けた脱炭素技術について解説している。具体的には、ヒートポンプやCCS・CCU、ブルーカーボン等の技術が取り上げられている。
事業会社や金融業界で経営企画や技術・研究企画に関係するビジネスパーソン、コンサルタント、脱炭素技術の関連銘柄について学びたい投資家、脱炭素化とビジネスの結び付きについて知っておきたい一般読者、就活生といった幅広い層の読者を想定していることも、本書の特徴である。
約30種の技術について説明しているうえ、ポスト・ウクライナ侵攻を見据えた最新の脱炭素ビジネスの解説書であるこの1冊は、当該領域を理解するうえで大いに役立つはずだ。
脱炭素ビジネスの具体的な事例を知りたい方向け書籍
『グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす』:新時代の再エネの巨人「グリーン・ジャイアント」に迫る1冊
書籍リンク:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166613274
価格:1012円(税込)
出版社:文藝春秋
発行日:2021年9月17日
『グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす』は、日本の各業界、政府が内心わかっていながら目を背けてきた「世界の再エネビジネスの最前線」を、米国からあますところなくレポートしている1冊である。
ネクステラ, エネル(伊), イベルドローラ(西)といった知られざる「グリーン・ジャイアント」たちの成長戦略、炭素税導入で先を争う欧州各国、世界最大のCO2排出国ながら風力・太陽光にも巨大投資を行う中国、デンマークの洋上に林立する巨大風力発電の風車、CO2排出案件からの撤退「ダイベストメント」を叫ぶ投資家たちをはじめとして、様々な角度から脱炭素ビジネスの現状について説明している。
京都議定書の頃とは異なり、気が付けばCO2削減ビジネスの潮流に乗り遅れていた日本が、グリーン・ジャイアントに支配される新世界でカーボンニュートラルを達成するために、今どのようにエネルギー・原発に向き合えばよいのかについても論じている。
本書は、脱炭素をめぐる世界の動向及び具体的な取り組み事例を知りたい方にとって、必読の書籍である。
『60分でわかる!カーボンニュートラル 超入門』:脱炭素という課題を企業の成長に変えるポイントが60分でつかめることが強みの1冊
書籍リンク:https://gihyo.jp/book/2022/978-4-297-12508-0
価格:1210円(税込)
出版社:技術評論社
発行日:2021年12月22日
『60分でわかる!カーボンニュートラル 超入門』は、脱炭素という課題を企業の成長に変えるポイントが60分でつかめることを強みとする1冊である。
対象読者は、「脱炭素」「再生可能エネルギー」などのキーワードに関心をもつビジネスマンや一般読者、中小企業の広報PR担当者, IR担当者, CSR担当部署のメンバーなど経営層に近いビジネスマン、時事キーワードとして知っておきたい就活生である。
カーボンニュートラルは、気候変動への対策といった人類共通の課題という側面ばかりでなく、企業にとってはビジネスモデルの転換や新たなテクノロジーの開発・雇用創出などの経営課題や、ESG評価による投資への大きな影響を生じさせる重要テーマである。
日本と世界各国のカーボンニュートラルに向けた動き、各産業ごとの脱炭素関連の取り組みについて、「超入門」の名の通り分かりやすく解説している本書を読むことで、カーボンニュートラルへの理解度を高めて頂きたい。
終わりに
以上の7冊が、脱炭素ビジネス担当者に向けておすすめしたい厳選書籍である。各書籍はそれぞれ異なる長所があるので、ご自身の目的に合わせてより適した一冊を選び出して欲しい。
また、最後に、アドライトが開催しているプログラムについて紹介させて頂く。
新規事業化支援総合プログラム「イントレプレナーズ」とは アドライトが提供する、事業会社向けの新規事業化の総合支援プログラムである。 戦略〜人財育成〜事業化をインキュベーションマネジメント支援、イノベーション人材育成支援、事業 開発伴走支援の3つのサービスで一気通貫して実行し、社内から継続的に事業が生み出され続ける体制構築を実現する。本記事にて紹介した書籍に加えて、こちらのプログラムについてもご活用して頂きたい。