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RPA・自動化礼賛はむしろ日本?アメリカが手放しで喜べない事情

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Trend Note Camp 10

下の図は2017年1月〜12月26日現在、Googleトレンドで「働き方改革」と「RPA(Robotic Process Automation)」の検索数推移を調べたもの。約1年の間に検索数は何倍にも増え、動きに相関性が見られるように、RPAは働き方改革の文脈で語られることが多い。なかでも業務効率に寄与する取り組みとして近年注目を浴びている。

2017年1月〜12月26日現在、Googleトレンドで「働き方改革」と「RPA(Robotic Process Automation)」の検索数推移を調べたもの

イノベーション創造を支援する株式会社アドライトが2017年12月5日主催した「Trend Note Camp #10:ソフトウェアロボットによる日米の業務自動化トレンド – 働き方改革の未来」にゲストで登壇した、一般社団法人日本RPA協会・代表理事/RPAテクノロジーズ株式会社・代表取締役社長の大角暢之氏(以下、大角氏)によると、日本では2016年1月頃からブーム化。

2016年度RPAグループに来た問い合わせ総数は、営業時間の1時間に1本ペースに相当する4,000件。参入障壁も低いことから、事業社も200〜300社に増加しているという。

そもそもなぜこれだけ注目を浴びているのか?大角氏曰く、「経営的なKPIで注目されている」という。「デジタルレイバー」というRPAのように定型業務を自動化するソフトウェアを擬人化にたとえたもので、24時間365日ミスなく稼働してくれる。

一般社団法人日本RPA協会・代表理事/RPAテクノロジーズ株式会社・代表取締役社長の大角暢之氏

一般社団法人日本RPA協会・代表理事/RPAテクノロジーズ株式会社・代表取締役社長の大角暢之氏

加えて、技術の敷居が低いところも大きい。AIと違ってプログラミングせずレコーディングできるため、たいていの業務に合わせてチューニングすれば適用できる。言い換えると、ブラックボックスになりがちな属人性も踏襲できるのだ。仮に業務がなくなったとしたらDeleteで削除するだけ。経営インパクトは絶大だ。「人口減も手伝い、20兆円マーケットと言われている(大角氏)」

単に業務を効率化するだけでなく、最近では現場発のアイデアを組織でデジタルレイバー化する動きも見られているという。たとえば、年末繁忙期を迎えるレンタカーの受付を夜通し取りこぼしなくおこない、Eコマースでの売れにくい商品をサイトから在庫削除。会員制サイトのタイムセールにまわし、SNSでつぶやき誘導するという企業もあるという。

レガシーな業務は無数にあり、現場からのボトムアップで取り入れられることも多いというデジタルレイバー。組織で普及させるポイントを聞かれると、「デジタルレイバーに高度なことはやらせず、常に業務に合わせて変化させていくことが大事」としめくくった。

「自動化」はアメリカではいい言葉でない理由

では、自動化が進んでいるアメリカではどのような動きが起きているのか。IT情報システム管理部署の自動化を目指しているスタートアップ「Fleetsmith」のCo-founder・Zack Blum氏(以下、Zack氏)は「『自動化』はアメリカではあまりよく捉えられていないコンセプトです」と衝撃の発言をする。

「自動化により仕事を失い、苦労している人が沢山います。経済の仕組みなので止めることはできないでしょう」

アメリカでは仕事に給与を払う制度をとっている。専門分野の育成・もしくは極めるには向いているが、仕事自体なくなれば人材も放出される恐れがある。自動化で消えゆく仕事ならなおさらその可能性は高まり、他に経験をしていなければ職にありつくことも容易でないというわけだ。「日本の企業のように(人事異動等で)色々経験させる教育を学んだほうがいい」とZack氏。

自動化している仕事に共通しているのは、ユーザに対し大きな課題や大変な作業が発生しているもの、よく起こる頻度が高い作業。最近ではHRの自動化が進んでいるという。

Wikiaの情報システム管理部ディレクター出身のZack氏は、自身の経験をもとにソフトウェアのアップデートの面倒臭さと影響度合いに着目。

Fleetsmith Co-founder・Zack Blum氏

Fleetsmith Co-founder・Zack Blum氏

「年々、ハッキングの母数は増えています。2015年に近づくにつれて、原因の大半はPCのパッチやアップデートができていないことによるものだとわかりました。これらは利用者のタイミングに委ねられることが多く、つい後回しになりがちですが、とても危険です。Firewallの有効やセキュリティソフトの導入だけでは防げません」

原因が明らかになったところで、企業は対処できる人材をすぐには採用できない。技術の難易度も高く、ヒューマンエラーが出やすいのだという。人材に頼らず、プロセスもノウハウも自動化し、IT人材がやっていたことを誰もができるようにする必要がある——そうして生まれたFleetsmithは、PC(現状、Macのみ)のすべてのソフトウェアやパスワードを自動的にタイムリーにアップデートするサービスを提供する。「操作はLINEくらい簡単」と、日本向けジョークも添える。

ソフトウェアの自動化は自社のセキュリティ強化だけでなく、契約時にも威力を発揮するという。セキュリティポリシーが甘い部分を相手に指摘された場合、ITやセキュリティ部門の人間が議論して検証して…としている間に話が流れる可能性がある。それがFleetsmithのサービスを導入すれば、検証時間など必要なしにクリックだけでクリアするというのだ。ネット銀行を立ち上げようとしているスタートアップが実際導入したケースを例に紹介。

今後のアメリカの動きとしてZack氏は3つ挙げてくれた。

  1. ソフトウェアのクラウド移行
    企業のIT予算が社内のサーバからクラウドに移行中。とくにBPOが2016年から2020年の間に半分移行という予測がある。2012年〜2020年の間、働き方改革が進んだことでリモートワーカーが7%増。組織が分散されていることが原因のひとつ。
  2. ITのコンシューマ化
    あらゆるソフトウェアが専門知識を有せずとも使えるようになってきている。今後、ITに関しては、それがスタンダードになる。
  3. セキュリティとIT部門統合
    ITとセキュリティは切っても切れない。それぞれ専門部署が存在していたが統合されるだろう。

初来日を経て、日本市場はアメリカやヨーロッパに比べて自動化が受け入れられやすい環境という印象を持ったZack氏。「日本の企業の方々とお話しし、導入の可能性を探ってみたい」と述べた。

主人公は現場

後半は、弊社代表・木村モデレートのもとパネルディスカッションが行われた。

日本でのセキュリティや自動化で面白いと思う点を聞かれると、「日本ではクラウドよりデスクトップが普及しているので、皆の作業を自動化する、つまりRPAが面白いです」とZack氏。アメリカでは中小企業の場合、Saasの普及が大半で、会社と会社での普及率も変わらないという。

大角氏は、RPAという言葉が生まれる前から自動化に着手。レガシー業界へどのように導入を進めたか?という問いに対し、「ひたすらロボットを作り体感してもらうことをしていた」と吐露。稟議に数年要するが、それを乗り越えれば良好な関係に至ることが多かったという。

最後に、RPAのいい面として属人性を踏襲してくれる点を例に挙げてくれた。

「主人公は現場なんです」――自動化の勢いはとどまることを知らない。

米国で活躍する投資家が教える、Y Combinator出身スタートアップ

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国内外で大手企業やスタートアップのイノベーション支援を行う株式会社アドライトは、10月30日「最新のY Combinatorから見るスタートアップの潮流(Trend Note Camp #9)」をFINOLAB(東京・大手町)にて行いました。Trend Note Campは、投資家等招き、世界のスタートアップやビジネスモデル等のトレンドを紹介するシリーズ。今回、アメリカを中心に活躍する3名のキャピタリストが、Y Combinatorの特徴や気になるスタートアップを披露しました。

バリュエーション1千万ドル前後も!大型化するY Combinator出身企業への投資状況

オーディエンスの1/5がシリコンバレーに行ったことがあると答えたことから、Y Combinatorへの興味関心度合いがうかがえた

Y Combinatorは半年に一度のサイクルで「バッチ」といわれるスタートアップ向けプログラムを実施し、終了後、彼らは2日間にわたるDemo Dayにて、500人もの投資家達の前でプレゼンテーション(以下、プレゼン)をします。弊社代表・木村曰く、1バッチあたりの起業家数が毎回増えており、直近は120社強にまで増加。バリュエーション1千万ドル前後も出る等大型化しているといいます。

サービスやプロダクトより、ポテンシャルを中心に紹介するケースが多く、株式会社DGインキュベーション マネージングディレクター・林口哲也氏(以下、林口氏)も「ここ2年ほど参加しているが、プレゼンの内容が変化。以前は売上高や成長高を明確に示していたが、最近コンセプトや見込み額で話しているケースが多い。テキストが増え、デモ動画が減った」とコメント。

Demo Day会場には入りきらないほどの人で溢れ、シリコンバレーの著名なエンジェル投資家らが地べたにも座り、2分間のプレゼンを聞いて拍手で投資の合意を決める仕組みとなっています。「投資したい人で賑わっているということは、資金はコモディティ化しているということ」とは、株式会社WiL パートナー・久保田雅也氏(以下、久保田氏)。

Y Combinatorの盛り上がりとともに立ち位置も変わり、2011年から11回Demo Dayに参加しているというBEENEXT マネージングパートナー・前田ヒロ氏(以下、前田氏)は、Y Combinatorは100億ドル以下のファンドが500ほどに増えたあたりから「ノイズキャンセラーの役割」に変わったと分析。Y Combinatorに入るには2人のファウンダーを必要としますが、1人だけでも入れるアーリーステージ向けプログラムが組まれる等、常に起業家を大切にする文化が形成されているといいます。

 

日本のY Combinator参加企業1社という歴史が物語っていること

これだけY Combinatorはアクセラレータープログラムとして不動の地位を確立しつつ、日本からは遠い存在のようです。現に、日本のY Combinator参加はこの夏も0社、2005年設立からみてもわずか1社にとどまっています。

「グローバル向けサービスだからいい、ドメスティック向けはダメと思っているのならそれは違う」と、久保田氏。ドメスティック展開のスタートアップもいて、日本の起業家のクオリティも海外と遜色ないといいます。

違う点があるとすると、「英語」と「プレゼン力」。

「英語でプレゼンを下手でもやりきって人とコミュニケートできるところは、日本の起業家は不利。皆プレゼンがうまいので、プロダクト自体は弱くても資金調達はうまい起業家はいる。資金力は勝負の分かれ目になるので、プレゼンタブルの起業家をよしとするカルチャーもある。その中でもまれたら、日本人ももっと自信を持てるのではないか」

 

トレンドは、ファンダメンタル

「1、2年前はAIや自動運転といったハイパーテクノロジーが目立つも、最近は人の寿命を伸ばそう、学校の教育を変えよう、癌を治そう、効率良く食事を摂ろうといった、ファンダメンタルなアイデアが多い」と前田氏。癌治療で数社、バイオテックで10社以上登壇しており、バイオテックにいたっては「ゲノム解析コストが安くなったことが影響し、エコシステムが構築されようとしている」と久保田氏は解説。

そんななか、彼らが注目しているY Combinator出身スタートアップは以下のとおり。

 

洋服のように家具を1点から気軽にレンタル

林口氏は、ありそうでなかったサービスを展開するスタートアップを中心に紹介。

株式会社DGインキュベーション マネージングディレクター・林口哲也氏

  • Mystery Science
    小学校の先生が理科や科学といったサイエンスの授業を教える際、専門家が予め用意したビデオをもとに授業を進めるというもの。先生が必ずしもサイエンスに詳しいわけではないのと、見せたほうが早くわかることもある。クラスの皆でディスカッションできるような授業進行もサポート。学校側で課金する仕組みがとられている。
  • SMBRate
    中小企業向け融資横断サービス。自社が設立何年目で年商規模はどれくらいといった基礎情報を入れると、事業融資数やどの程度の規模融資が可能か算出してくれるというもの。単独で資金提供先を探すのは大変だが、これを使うと資金ニーズがあるところがわかり、成長やトレンドが時系列で確認できる。
  • AssemblyAI
    カスタマイズ可能なスピーチ英語サービス。音声データを認識化しテキスト化してくれるだけでなく、業界固有の言葉のカスタマイズも可能。営業電話のモニタリングの解析や、YouTubeのビデオコンテンツを自社と競合他社とで比較等に使われているという。
  • Feather
    家具のレンタルサービス。1点から数点セットのパッケージまで月額いくらで家具を借りることができる。家具も気分や季節、家庭環境で変えられるという発想が面白い。最近、大型の資金調達を果たし、BtoBのサービスも展開。

 

個々に合った癌治療の薬を判別

前田氏は、自身が投資しているというY Combinator出身の20社からPICK UP。

BEENEXT マネージングパートナー・前田ヒロ氏

  • Lob
    紙の印刷と配送を自動化するAPIを提供。これを使うことで、配送先に近いところで印刷し発送される。日本でいうラクスルのようなもので、元マイクロソフトのメンバーが創業。約30億ドル調達。
  • Instacart
    元amazonの物流担当が立ち上げたおつかい代行サービス。牛乳やクッキーを注文すると、一番近いスーパーから第三者が購入し、家まで届けてくれる。670億 調達し、時価総額は3,000億以上にものぼる。スーパー内に置いてある商品や配置、効率のいい送り方といったデータとロジスティクスを駆使。いいりんごやきゅうりの選び方もショッパーと言われる購入代行者に教育。
  • Notable Labs
    100万通りもの薬の組み合わせから、個々の癌細胞に合うものを判別するサービス。理論上、30年くらいかかると言われていたが、ビッグデータやプリディクティブ・アナリティクスを組み合わせることで、2週間に大幅短縮。現在、白血病に特化しているが、今後は脳腫瘍にも展開。創業者はヘッジファンドマネージャー出身。父親が脳腫瘍で亡くなったことがショックで、UCLAやバークレー大学の教授らと組み、発見したという。
  • Simbi
    英語のレッスンを教える代わりにギターを教えるといったバーターの経済を作ろうとしている。類似サービスは他にもあるが、KJという女性経営者のプロダクトエッセンスがきめ細かく、登録の流れや登録後のメール配信、ユーザフローが繊細に設計されている。数字を見ても経済が成り立っている。トリックは独自の仮想通貨。需要がないとバーターは成り立たないが、うまくバーターエコノミーをつくっている。
  • HEAP
    KPIを設定するために必要なデータを取得する際、コードを組み込まずとも一行だけ挿入することで、全てのデータが取り出せるサービス。あとからKPIを設定しても問題なくバックトラックできる。元Facebookのクライアントマネージャーである創業者が立ち上げた。現在、約40億ドル集まっている。

 

ゲノム編集の新領域

久保田氏は夏のバッチで注目を集めた自動運転サービスからゲノムにいたるまで披露。

株式会社WiL パートナー・久保田雅也氏

  • May Mobility
    自動車メーカーの研究職やエンジニア職、大学でロボット研究室に属していたメンバー等集結し、特定エリアでの自動運転サービスの実用化に取り組んでいる。バス型の車両が特徴で、利用実績とデータを蓄積する戦略をとっている。
  • Contract Simply
    建設業の工程管理をクラウドに集約するツール。おもてはそれを無料で提供するも、裏ではしっかり業者間の請求や決済で課金する金融プラットフォームとして位置する。売上も今期400万ドルの予定と、実事業が立ち上がった会社が増えているのも最近のY Combinatorの傾向。
  • PullRequest
    別の会社で働いているトップエンジニアにコードレビューだけをクラウドソーシングするサービス。エンジニア向けのツールを出し、プログラムテストやダークローンチを自動化する等、デベロッパーのかゆいところに手が届くものを展開。いかにデベロッパーに気に入ってもらえるかが鍵。
  • Original Tech
    ローンの中小金融機関向けクラウドシステム。金融機関が導入するとオンラインでレンディングできるというもの。Fintech領域において、スタートアップは自社のブランディングではキャッチアップできず、顧客獲得コストが高騰するといった課題と直面。金融機関のトップランに貢献するFintechツールがあるようでない部分へのアプローチとして期待がもたれる。
  • Rev Genomics
    大麻を害虫に強く、作付け効率が高くなるよう、ゲノム編集のテクノロジーで生産するスタートアップ。現在、大麻は成長産業のひとつと捉えられており、アメリカ28州で合法化されている。

 

投資家から見たY Combinatorの凄さ

会の最後に質疑応答が設けられ、会場から積極的な質問が飛び交いました。

「投資家から見たY Combinatorの凄さはどこにあるのか?」との問いに、三者三様の意見が出てきました。

林口氏は「運営力がずば抜けてレベルが高い」として、その理由を3つ挙げました。「1つめは、年2回200社以上登壇し、バッチをきっちりと回していく。2つめは、そのなかから大きく調達や注目を集める目玉企業が1、2社必ずある。最後は、フィルタリングという意味で、起業家と投資家ができるだけ本質的な議論ができるようファシリテーションがある」。当日になって来るメールで登壇者一覧と「興味がありますよボタン」「投資したいボタン」が配され、機械的にマッチングできる仕組みがあるといいます。

2010年から計10回ほど参加している前田氏は、「決してY Combinatorが突出して優れているわけではなく、タイミングがよかった」と振り返ります。「あの仕組みを2005年にやり、数年でDroboxやAirbnbを輩出し、それがブランドとなっている。そうしたところに人は集まりやすい」。

自分たちの勢いを止めず、ひたすら新しい取り組みをしているところも評価すべきポイントで、「Y Combinatorに参加していなくてもオンライン(MOOC)上で受けられ、ディスカッションにも参加できる「スタートアップスクール」があったりする(久保田氏)」といいます。

一方、久保田氏は「Y Combinatorだけかいつまんで見るより、シリコンバレーのエコシステムにうまく入り込んでいるのが差別化のポイント」と解説。

「Demo Dayで知ったサービスがほかに流用されてしまう心配は?」との質問に対しては、「情報をコントロールするのは難しい(林口氏)」と率直な意見のほか、「フェーズにもよると思うが、プロダクトと市場の適合性がない場合はアイデアの検証をしたほうがいい。それがなされているのであれば目立たないほうがいい。資金調達やなにか目的があるならいいが(前田氏)」とコメント。

「ICOへの印象」について聞かれると、「シリコンバレーではそんなにホットではない。ドットコムバブルを経験している人はシビアに見ている。日本では毎日ICOの問い合わせが来る(前田氏)」「ICOバブルは弾けたんじゃないかと言われている(久保田氏)」というように、シリコンバレーと日本では印象に開きがあるようです。

「見込み額でもピッチしているのはなぜ?ロジカルな説得力があるのか?」という質問に対し、林口氏は「おそらく案件として受注できていないのではないか」と見ているといいます。

「そうした起業家は、できるだけ早いタイミングのものを実績として見て欲しいという思いがある。見込み額だとしてもどのフェーズにあるかは投資家も見ているので、必ずしもネガティブじゃない。ただ、似たようなビジネスで受注している実績がある会社が他にいると、そちらに目がいきがち」と、本音も聞こえてきました。

木村も「スタートアップが解決できる課題が大きくなり、シードステージのスタートアップでも大手企業や自治体等と取引を始めているチームも増えてきた。リーンにスタートアップできる環境が整ってきたことも影響しているのではないか。現地では、オープンイノベーションという言葉こそあまり使わないが、当然のようにそういったコラボレーションは増えている」と解説。

「ほかにもたくさん面白いプログラムはある。ぜひ現地に行かれるチャンスがあれば、積極的に運営側にコンタクトをとってほしい。知りたいことは何で、自身がどういうバックグラウンドの人間か伝えれば、きちんと対応してもらえる(林口氏)」

「Y Combinatorは最先端のトレンドを捉えている。半年に一度のDemo Dayで一社ずつどういう市場を狙っているか考え調べると、最先端のトレンドを狙える(前田氏)」

「Demo Dayに出る起業家はプレゼン力だけでなく熱意がすごい。ここから何としてでも這い上がるという意気込みが感じられる(久保田氏)」

加えて久保田氏は、「日本人はこれまで一社しか参加していない。現在、来年の冬バッチを募集しているので、ぜひ参加してほしい」と締めくくりました。

Startup Science著者が語る、スタートアップ時の失敗を減らす極意

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「これは4、5年前の自分に向けて書いた。振り返ると起業家としてダメなことをやっていた。起業家としての人生を変えたいなら手にとってほしい」。自身のシリコンバレーでの起業の失敗をもとに興したスライド「Startup Science」著者・株式会社ユニコーンファームの田所雅之氏が、「Fin Book Camp #9(株式会社アドライト主催)」に登壇しました。

 

成功に近づきたいなら失敗を減らす

起業家とVCの両視点から作り上げたというStartup Scienceは、2015年に第一弾公開後、毎年改訂し、2017年版は1,229ページにも及ぶ大作へと進化。世界で累計5万ダウンロードされています。自身の起業経験に加え、100社のメンターやアドバイスもするなか気づいたポイントを集約。今回、そのなかから「起業での失敗を減らすポイント」について熱く語ってくれました。

「スタートアップはお金や人といったリソースがないなか、時間の価値をどうやって最大限にするか?それは失敗を減らすことにほかならない」と田所氏。「100を1つに絞ることは難しいけれど、3つに減らすことはできます。これがサイエンス。そしてさらに3つを1つに減らす。それがアート」と持論を展開。どこにフォーカスするかで失敗のしづらさは変わってくるといいます。

 

スタートアップが陥りがちな行動パターン

「学習にフォーカスしないスタートアップは失敗する」として、田所氏は学習しないスタートアップあるある行動パターン3つを挙げました。

1)カスタマーインサイトなしでプロトタイプ構築

市場の伸びも期待でき、テーマも面白いが、「このサービスは誰のどのようなお困りごとを解決してくれるのか?」と尋ねたら答えられなかった。なぜ作ったのか聞いたら、「投資家に『早くアクションしろ』と言われたから」と返ってきた。

2)主観や思い込みでプロダクトを作る

「こういうプロダクトがあったらいいよね」という主観や思い込みで作り、見たいものを計測するサイクルを繰り返す。学習にフォーカスしないと陥りがち。

3)何かをやっているつもり症候群

前に進んでいる感がないと人は不安になる。たとえば初期の段階でWantedlyを活用し、商品・サービスと関係ないブログをアップしたりする。PVが増えて喜ぶも、肝心の商品・サービスへの定着率は低く、売り上げも0。事業としては何も進んでいない。

「一生懸命やるだけでは評価されません。正しい問題に取り組み、人が欲しいもの、そして少人数に熱狂されるものを作ることが大切です。投資家はピンポイントではなく定点観測で投資します。数字がどれだけ伸びたかを見ています」

 

現地・現物が大切

学習にフォーカスするとは、「仮説構築→ヒアリング→仮説検証」のサイクルをまわすこと。主要人物のペルソナ像を設計し、現状のプロセスを洗い出す。痛みのある課題はどこなのか仮説をたて、代替ソリューションを考える(代替案の不安・不満を洗い出す)こと。

その次にヒアリング。ここでできるだけ多くの一次情報を集めることが大切ですが、5人くらい聞くとユーザーパターンが決まり、だいたい4つの象限に分かれる。そして市場がぼんやり見えてくるといいます。

「追求したい課題設定と、踏み込む勇気に迷っているとしたら、一次情報が不足していることにほかなりません。逆に迷う課題がなかったら次の課題をあたった方がいいです。スタートアップはサイドプロジェクトを気楽に始めたほうがいいのです」

こうした現地・現物が大切である一方、忘れてならないのが「ユーザーはプロセスや物においては専門家だが、彼らが課題を言語化するのは仕事ではない」という視点。

「ユーザーのコメントを額面通りに受け取るのではなく、真意を見つけ出すこと。99%知っていることを事業化してもリソース不足になるだけ。それでは大企業に太刀打ちできません。だれも顕在化していない真意を見つけ出し、最小単位で最大化することがスタートアップになります」

 

いい人材を集めたいならビジョンに力を

成功に近づくうえでさらに忘れてならないのは「チームメンバー」。成功しているスタートアップはおしなべてチームの平均人数が少ないといいます。そのほうが皆で学ぶことになり、学習が加速するからとのこと。いい人材の集め方のコツは「ビジョンピッチング」。ビジョンがあるからこそ人が集まるという発想です。

こうして学習にフォーカスしたスタートアップは、3.5倍早く成長し、7倍の資金調達ができる可能性が高まるといいます。

今後、Startup Scienceの4カ国翻訳や、BtoB向け、テクノロジードリブン向けを展開する等して、世界のスタートアップシーンを盛り上げていきたいと語る田所氏。「過去の経験が道筋を作ってくれた」——無駄なことは何一つないことを証明してくれた2時間でした。

大手企業、ベンチャーはこう見る「人工知能との協働がもたらす可能性」:Mirai Salon #5

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大手企業のオープンイノベーション支援等行う株式会社アドライトは、三菱地所株式会社様共催のもと、Mirai Salon「日本流オープンイノベーションによる人工知能の実用化が切り開く未来」をEGG JAPAN(東京・丸の内)にて行いました。Mirai Salonは、有識者の方をお招きし、社外リソースを活用したオープンイノベーションや支援事例をテーマに開催しているイベントシリーズ。今回で第5回目となります。

会場となったEGG JAPANは、「新しい事業の創造や成長を支援する」をコンセプトに、「ビジネス開発オフィス」の運営、「東京21cクラブ」の会員制ビジネスの二軸を柱とし、三菱地所様が2007年5月にオープン。現在600名の会員を有し、もっとも多いのが起業家4割、続いて弁護士等専門業27%、ベンチャーキャピタル・金融関係と、最近増加したという企業の新規事業担当がそれぞれ10%強等で構成されています。

 

人工知能を扱う企業として社会に貢献することも視野に

最初に登壇したのは、株式会社グラフの代表取締役社長・原田博植氏(以下、原田氏)。「テイラーメイドのマシン・ラーニング」を掲げ、機械学習のライブラリや企業が保有する大規模なサービスやデータベースを活用し、事業課題の解決や利益創出を生業としています。設立後1年未満ながら、金融から小売、メディアに至る幅広い業種のクライアントを抱えています。

原田氏は、昨年可決された「官民データ活用推進基本法案」に言及。

デジタル・ネットワーク技術の発展により、人工知能による創作物やセンサー等から集積されるデータベースなど、新たな情報材が次々と生み出され、新たな付加価値の源泉が「データ」にシフトするなか、データの利活用に向けて、知的財産制度での対応が重要となってきています。”
(引用:経済産業省「第四次産業革命に向けた横断的精度研究会報告書をとりまとめました」)

原田氏が委員として招致された経済産業省の研究報告会報告書からもうかがえるように、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字で構成)のプラットフォームが日本の政府以上に国民の個人情報を保有し、アプリケーションの開発や販売、決済集中で支配的地位になりつつあることを危惧する事態を受け、人工知能や越境データの法整備や個人情報保護の多面的な健全化に努める姿勢を見せました。

株式会社グラフ 代表取締役社長 原田博植氏

 

あらゆる印刷物から手書きまで高精度で読み込み!人間らしい働き方を促進

「ホワイトカラーの面倒な作業を人工知能に置き換え、人間は人間らしい仕事に注力できる環境を」と話すのは、Cinammon 共同創業者・CEO 平野未来氏(以下、平野氏)。同社の展開する「Flax Scanner」はアナログ、デジタルを問わず、ドキュメント内の情報を正確に抽出し、申請書からEメールまで必要な情報を抜き出して必要な箇所入力することで、業務効率や構造化を支援するというもの。

99.2%の精度で手書きの文字も読み込める「Flax Scanner Tegaki」も開発。決して上手とはいえない字でも読み込み可能といいます。100%の精度を求めるクライアントも一定数存在するため、人工知能で対応できなかった部分をカバーする人的リソースもセットで提供する等のラインナップも用意。

これらの技術を支えるのは、ベトナム・ハノイの人工知能ラボで育成された若き人工知能エンジニア集団。毎年ハノイ国家大学やハノイ工科大学でComputer Scienceを専攻した大学生や卒業生600名のうち、独自の試験でトップ10%を採択後、AIのトレーニングを有給で実施。こうした低い合格率や待遇面の充実、経営陣のコネクション等活かし、ブランディングを強化。いまではベトナムで人気の職種のひとつにまで成長しているそうです。

日本の人工知能関係のエンジニアはわずか累計400名程度といいます。「ベトナムは若年層の数が日本よりも多く、高等教育におけるコンピューターサイエンスの専攻割合も高い。ベトナムでの採用のインパクトは大きい」と話す平野氏。5年後には100人から150人近い人工知能エンジニアを抱えるアジア最大の人工知能ラボを目指していくとのこと。

Cinammon 共同創業 CEO 平野未来氏

 

アイデア創出から事業化実現までフォロー

ベンチャー企業2社の後、大企業によるオープンイノベーション事例として、パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター Game Changer Catapultプランニングリード・鈴木講介氏(以下、鈴木氏)が登壇。

「最近のパナソニックはトップラインが不動のまま、構造改革によって営業利益を改善させてきた歴史と課題がある。消費者、商品、製造、流通プロセス等の事業環境が変化したいま、成長の種をどう作っていくか(鈴木氏)」――立ち上がったのは4名のメンバー。新しい価値や事業の立ち上げを至上目的とし、アプライアンス社が家電を中心に扱っていることから、未来の家電を生み出す企業内アクセラレーター部門として「Game Changer Catapult」を昨年発足。

重点領域は、家事、教育、メディア・エンターテインメント、フードソリューション、ヘルスケア。「家電というユーザの手の届くところにある物を通じてライフログをいただきながら、IoTや人工知能を組み合わせ、最終的にはハードに加えサービスまで提供を目指している(鈴木氏)」。

ライフログでは、五感のうち触感や味覚、嗅覚でのデジタル化を視野に入れているとのこと。

新規事業を進めるにあたり、運用方針や継続性にも一工夫。やわらかいアイデアもビジネスモデルへ磨き上げる等垣根を低くし、ユーザの声を直接集める場としてITや音楽、映画の祭典「SXSW」に出展。アイデアを考えた社員達を説明員として起用したことでとてもいい機会となったとか。加えて、アドライトの木村も海外のイノベーション事例を紹介するべく登壇した社内ミニピッチセッション「Cat7」等行い、社員の挑戦への意識改革も推し進めているといいます。

今後はオープンイノベーション等社外との協業を積極的に行っていきたいと鈴木氏。お互いやりたいことを明示しながら、そこからこじつけてでも始めるくらいの勢いと身軽さを求めているそうです。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター Game Changer Catapultプランニングリード 鈴木講介氏

 

人工知能は人間の仕事を奪うのではなく、働き方を変えるもの

インターネットの普及とモバイルの進化によって発展を遂げた人工知能を投資家はどう見ているのか。グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社 代表取締役・安達俊久氏(以下、安達氏)が、人工知能におけるベンチャーキャピタル業界のトレンドや、これからの働き方について触れました。

同社は産業分野におけるIoTのコアテクノロジーの企業を世界中から発掘。日本の事業会社との橋渡しやオープンイノベーションを加速させ、ビジネスモデルのデジタル化の手伝いをしています。

スタートアップのかなり早い段階でM&Aが進むのが人工知能業界の特徴で、ベンチャーキャピタル業界の投資対象がレイターからアーリー・ステージに遷移。事業性の評価も人工知能で行っているといいます。同社も原石となるようなベンチャーへの投資を行い、なかでもイスラエルに着目。「人工知能やIoT、ヘルスケア関連のスタートアップ興隆の動きが活発で、投資も盛んに行われている」と安達氏。

「人工知能は仕事を奪うのではなく、働き方を変えるもの。仕事は探すのではなく、創るものへ(就活から創活へ)と進化していく。クリエイティビティを発揮してほしい」と鼓舞。

加えて、「起業の原点は社会の課題を見出すこと。直接見て聞いて、触れてワクワクするモチベーションを見つけてもらいたい。日本からグローバルに活躍する企業をどんどん支援していきたい」と、熱いメッセージをオーディエンスに投げかけました。

グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社 代表取締役 安達俊久氏

 

人工知能の実用化が切り開く未来

後半は「オープンイノベーションと人工知能の裏側」と題し、登壇者全員によるパネルディスカッションを実施(モデレーター:株式会社アドライト 代表取締役・木村忠昭)。オーディエンスからも闊達な質問が飛び交いました。

いまのオープンイノベーションの動きをどう捉えているか?という問いに対し、「日本の研究開発費のうち98%が社内で消費されているため、ほとんどがクローズド・イノベーション。KDDIとソラコムのような画期的な取り組みが契機となってM&Aの動きがより活発になることを期待したい」と安達氏。

そのうえで、「人工知能は非常に大きなきっかけとなる。今までのビジネスモデルが通用しなくなることが考えられ、経営トップが5、6年先を見据えた動きができるかどうかが重要。そのためには、オープンイノベーションの継続的取り組みができるような人事の仕組みも必要」と説きました。

継続的取り組みの観点から、大手企業の社員の自主性を上げるためにしていることを聞かれると、鈴木氏は「母集団をしっかり作るとアイデアが自発的に出やすくなる。パナソニックという企業風土自体にアイデアは潜在的にあると感じている」とコメント。よりいっそうのケアが必要なのは「社内の既存ビジネスとの競合性」。事業立ち上げ初期の段階では競合を意識せず、業績へのインパクトも限られているため内部での説明を意図的に避けている面もある。また、「ある部門に権限やリソースを一元化せず、社内に分散して存立させ、横のつながりを作っていくことが継続性のカギ」とのこと。

パネルディスカッションの様子

オープンイノベーションを進めるにあたり、スタートアップはどう見ているのか。クライアント側の期待との折り合いのつけ方について、原田氏は「同じような気持ちを先方とも共有しつつ、ある程度現実的な話を進めていく。予算や執行役員のもつミッション等をしっかり伺ったうえで、データ分析の成果を出したい部分を明確にする(上流からのハンズオン支援)」といった進め方をしているといいます。

一方、平野氏は「既存のITシステムをインプリメントに改善するのではなく、ビジネスオペレーションを変えることになるため、各社のオープンイノベーション推進室や経営企画室の方とお話しするようにしている」とのこと。

最後に、人工知能を活用して事業改善を進めていくにはどうしたらいいのか聞かれると、働き手へのうまみからマインド変換に至るまで持論が展開されました。

「最終的にはインハウスで行われて行かなければならない。給料以外のモチベーションを持たせることも重要(原田氏)」「日本人全体として働かなければならないという感覚に取りつかれているのではないか。マインドを変化させれば人工知能を活用する道筋も開ける(平野氏)」「人工知能を活用したアプリケーションの楽しさをどう伝えていけるかが鍵(鈴木氏)」。

安達氏が「生産性の改善や人件費削減面での活用マインドが根強いが、新たなバリューやビジネスモデルを創出する手段と捉えること」と締めくくり、盛況のなかイベントは終了。名刺交換も積極的に行われ、余韻を残し会場を後にしていました。

オーディエンスからの質問に答える平野氏

最後に

今後もMirai Salonでは、オープンイノベーションに関する様々なテーマでイベント開催を予定しています。関連トピックに関するイベント登壇やお問い合わせ等ございましたら、こちらよりお気軽にお声がけくださいませ。

addlight journal 編集部  addlight journal 編集部

大手企業のオープンイノベーション支援等行う株式会社アドライトは、三菱地所株式会社様共催のもと、Mirai Salon「日本流オープンイノベーションによる人工知能の実用化が切り開く未来」をEGG JAPAN(東京・丸の内)にて行いました。Mirai Salonは、有識者の方をお招きし、社外リソースを活用したオープンイノベーションや支援事例をテーマに開催しているイベントシリーズ。今回で第5回目となります。

会場となったEGG JAPANは、「新しい事業の創造や成長を支援する」をコンセプトに、「ビジネス開発オフィス」の運営、「東京21cクラブ」の会員制ビジネスの二軸を柱とし、三菱地所様が2007年5月にオープン。現在600名の会員を有し、もっとも多いのが起業家4割、続いて弁護士等専門業27%、ベンチャーキャピタル・金融関係と、最近増加したという企業の新規事業担当がそれぞれ10%強等で構成されています。

 

人工知能を扱う企業として社会に貢献することも視野に

最初に登壇したのは、株式会社グラフの代表取締役社長・原田博植氏(以下、原田氏)。「テイラーメイドのマシン・ラーニング」を掲げ、機械学習のライブラリや企業が保有する大規模なサービスやデータベースを活用し、事業課題の解決や利益創出を生業としています。設立後1年未満ながら、金融から小売、メディアに至る幅広い業種のクライアントを抱えています。

原田氏は、昨年可決された「官民データ活用推進基本法案」に言及。

デジタル・ネットワーク技術の発展により、人工知能による創作物やセンサー等から集積されるデータベースなど、新たな情報材が次々と生み出され、新たな付加価値の源泉が「データ」にシフトするなか、データの利活用に向けて、知的財産制度での対応が重要となってきています。”
(引用:経済産業省「第四次産業革命に向けた横断的精度研究会報告書をとりまとめました」)

原田氏が委員として招致された経済産業省の研究報告会報告書からもうかがえるように、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字で構成)のプラットフォームが日本の政府以上に国民の個人情報を保有し、アプリケーションの開発や販売、決済集中で支配的地位になりつつあることを危惧する事態を受け、人工知能や越境データの法整備や個人情報保護の多面的な健全化に努める姿勢を見せました。

株式会社グラフ 代表取締役社長 原田博植氏

 

あらゆる印刷物から手書きまで高精度で読み込み!人間らしい働き方を促進

「ホワイトカラーの面倒な作業を人工知能に置き換え、人間は人間らしい仕事に注力できる環境を」と話すのは、Cinammon 共同創業者・CEO 平野未来氏(以下、平野氏)。同社の展開する「Flax Scanner」はアナログ、デジタルを問わず、ドキュメント内の情報を正確に抽出し、申請書からEメールまで必要な情報を抜き出して必要な箇所入力することで、業務効率や構造化を支援するというもの。

99.2%の精度で手書きの文字も読み込める「Flax Scanner Tegaki」も開発。決して上手とはいえない字でも読み込み可能といいます。100%の精度を求めるクライアントも一定数存在するため、人工知能で対応できなかった部分をカバーする人的リソースもセットで提供する等のラインナップも用意。

これらの技術を支えるのは、ベトナム・ハノイの人工知能ラボで育成された若き人工知能エンジニア集団。毎年ハノイ国家大学やハノイ工科大学でComputer Scienceを専攻した大学生や卒業生600名のうち、独自の試験でトップ10%を採択後、AIのトレーニングを有給で実施。こうした低い合格率や待遇面の充実、経営陣のコネクション等活かし、ブランディングを強化。いまではベトナムで人気の職種のひとつにまで成長しているそうです。

日本の人工知能関係のエンジニアはわずか累計400名程度といいます。「ベトナムは若年層の数が日本よりも多く、高等教育におけるコンピューターサイエンスの専攻割合も高い。ベトナムでの採用のインパクトは大きい」と話す平野氏。5年後には100人から150人近い人工知能エンジニアを抱えるアジア最大の人工知能ラボを目指していくとのこと。

Cinammon 共同創業 CEO 平野未来氏

 

アイデア創出から事業化実現までフォロー

ベンチャー企業2社の後、大企業によるオープンイノベーション事例として、パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター Game Changer Catapultプランニングリード・鈴木講介氏(以下、鈴木氏)が登壇。

「最近のパナソニックはトップラインが不動のまま、構造改革によって営業利益を改善させてきた歴史と課題がある。消費者、商品、製造、流通プロセス等の事業環境が変化したいま、成長の種をどう作っていくか(鈴木氏)」――立ち上がったのは4名のメンバー。新しい価値や事業の立ち上げを至上目的とし、アプライアンス社が家電を中心に扱っていることから、未来の家電を生み出す企業内アクセラレーター部門として「Game Changer Catapult」を昨年発足。

重点領域は、家事、教育、メディア・エンターテインメント、フードソリューション、ヘルスケア。「家電というユーザの手の届くところにある物を通じてライフログをいただきながら、IoTや人工知能を組み合わせ、最終的にはハードに加えサービスまで提供を目指している(鈴木氏)」。

ライフログでは、五感のうち触感や味覚、嗅覚でのデジタル化を視野に入れているとのこと。

新規事業を進めるにあたり、運用方針や継続性にも一工夫。やわらかいアイデアもビジネスモデルへ磨き上げる等垣根を低くし、ユーザの声を直接集める場としてITや音楽、映画の祭典「SXSW」に出展。アイデアを考えた社員達を説明員として起用したことでとてもいい機会となったとか。加えて、アドライトの木村も海外のイノベーション事例を紹介するべく登壇した社内ミニピッチセッション「Cat7」等行い、社員の挑戦への意識改革も推し進めているといいます。

今後はオープンイノベーション等社外との協業を積極的に行っていきたいと鈴木氏。お互いやりたいことを明示しながら、そこからこじつけてでも始めるくらいの勢いと身軽さを求めているそうです。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター Game Changer Catapultプランニングリード 鈴木講介氏

 

人工知能は人間の仕事を奪うのではなく、働き方を変えるもの

インターネットの普及とモバイルの進化によって発展を遂げた人工知能を投資家はどう見ているのか。グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社 代表取締役・安達俊久氏(以下、安達氏)が、人工知能におけるベンチャーキャピタル業界のトレンドや、これからの働き方について触れました。

同社は産業分野におけるIoTのコアテクノロジーの企業を世界中から発掘。日本の事業会社との橋渡しやオープンイノベーションを加速させ、ビジネスモデルのデジタル化の手伝いをしています。

スタートアップのかなり早い段階でM&Aが進むのが人工知能業界の特徴で、ベンチャーキャピタル業界の投資対象がレイターからアーリー・ステージに遷移。事業性の評価も人工知能で行っているといいます。同社も原石となるようなベンチャーへの投資を行い、なかでもイスラエルに着目。「人工知能やIoT、ヘルスケア関連のスタートアップ興隆の動きが活発で、投資も盛んに行われている」と安達氏。

「人工知能は仕事を奪うのではなく、働き方を変えるもの。仕事は探すのではなく、創るものへ(就活から創活へ)と進化していく。クリエイティビティを発揮してほしい」と鼓舞。

加えて、「起業の原点は社会の課題を見出すこと。直接見て聞いて、触れてワクワクするモチベーションを見つけてもらいたい。日本からグローバルに活躍する企業をどんどん支援していきたい」と、熱いメッセージをオーディエンスに投げかけました。

グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社 代表取締役 安達俊久氏

 

人工知能の実用化が切り開く未来

後半は「オープンイノベーションと人工知能の裏側」と題し、登壇者全員によるパネルディスカッションを実施(モデレーター:株式会社アドライト 代表取締役・木村忠昭)。オーディエンスからも闊達な質問が飛び交いました。

いまのオープンイノベーションの動きをどう捉えているか?という問いに対し、「日本の研究開発費のうち98%が社内で消費されているため、ほとんどがクローズド・イノベーション。KDDIとソラコムのような画期的な取り組みが契機となってM&Aの動きがより活発になることを期待したい」と安達氏。

そのうえで、「人工知能は非常に大きなきっかけとなる。今までのビジネスモデルが通用しなくなることが考えられ、経営トップが5、6年先を見据えた動きができるかどうかが重要。そのためには、オープンイノベーションの継続的取り組みができるような人事の仕組みも必要」と説きました。

継続的取り組みの観点から、大手企業の社員の自主性を上げるためにしていることを聞かれると、鈴木氏は「母集団をしっかり作るとアイデアが自発的に出やすくなる。パナソニックという企業風土自体にアイデアは潜在的にあると感じている」とコメント。よりいっそうのケアが必要なのは「社内の既存ビジネスとの競合性」。事業立ち上げ初期の段階では競合を意識せず、業績へのインパクトも限られているため内部での説明を意図的に避けている面もある。また、「ある部門に権限やリソースを一元化せず、社内に分散して存立させ、横のつながりを作っていくことが継続性のカギ」とのこと。

パネルディスカッションの様子

オープンイノベーションを進めるにあたり、スタートアップはどう見ているのか。クライアント側の期待との折り合いのつけ方について、原田氏は「同じような気持ちを先方とも共有しつつ、ある程度現実的な話を進めていく。予算や執行役員のもつミッション等をしっかり伺ったうえで、データ分析の成果を出したい部分を明確にする(上流からのハンズオン支援)」といった進め方をしているといいます。

一方、平野氏は「既存のITシステムをインプリメントに改善するのではなく、ビジネスオペレーションを変えることになるため、各社のオープンイノベーション推進室や経営企画室の方とお話しするようにしている」とのこと。

最後に、人工知能を活用して事業改善を進めていくにはどうしたらいいのか聞かれると、働き手へのうまみからマインド変換に至るまで持論が展開されました。

「最終的にはインハウスで行われて行かなければならない。給料以外のモチベーションを持たせることも重要(原田氏)」「日本人全体として働かなければならないという感覚に取りつかれているのではないか。マインドを変化させれば人工知能を活用する道筋も開ける(平野氏)」「人工知能を活用したアプリケーションの楽しさをどう伝えていけるかが鍵(鈴木氏)」。

安達氏が「生産性の改善や人件費削減面での活用マインドが根強いが、新たなバリューやビジネスモデルを創出する手段と捉えること」と締めくくり、盛況のなかイベントは終了。名刺交換も積極的に行われ、余韻を残し会場を後にしていました。

オーディエンスからの質問に答える平野氏

最後に

今後もMirai Salonでは、オープンイノベーションに関する様々なテーマでイベント開催を予定しています。関連トピックに関するイベント登壇やお問い合わせ等ございましたら、こちらよりお気軽にお声がけくださいませ。