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自動運転技術をめぐる各社の動きと開発状況 (2/2)

前回記事では取り上げなかった新たなプレーヤーの動き

前回に引き続き自動運転技術をめぐる各社の動きと、その開発状況に関して、今回はこれまでに取り上げてこなかった新たなプレーヤーの動きをご紹介します。

Apple

2014年頃から自動運転技術開発を始動させ、2017年4月からは公道実験も行っている模様が報じられていたAppleですが、2017年6月5日のBloomberg社のインタビューで、自動運転技術開発に本格的に参入していることを、CEOであるティム・クック氏が公表しています。Project Titanと呼称される同プロジェクトは、Apple社による全自動運転車そのものの開発なのか、他の自動車メーカーの完成車に搭載するための全自動運転システムの開発なのかということで様々な憶測を呼んでいましたが、現在のところは、どうやらシステムの開発であるという線が濃厚であるようです。

ウェイモ

Waymoはグーグルの持ち株会社であるAlphabet社の傘下にあり、Googleのスピンオフ・ベンチャーとして自動運転技術の開発を進めてきた企業です。2014年から、Fireflyと呼ばれる運転席を持たない独自の全自動運転車を開発し、公道実験を行ってきていたことで話題になっていました。

しかし、2017年6月12日に、Waymoは、自社で作成した完全自動運転車でのテスト走行を取りやめ、フォードの量産型車両を利用しての自動運転技術実用化に向けた路上試験に切り替えることを発表しています。

2016年には既には、クライスラー製の車体に全自動運転システムを搭載した車両にて公道実験を開始していたWaymoですが、その全自動システムに用いられるカメラやセンサー類を全て内製化する方針を固めているようです。今回、自社製の車両での実験を中止するという決定に至ったのも、そういった自社製のハードウェアの開発に注力していくためであると考えられます。

出典: The Verge – Waymo retires its cute self-driving car in favor of minivans

アルゴAI

前回記事によってご紹介したように、米国Ford社によって10億ドルで買収されたArgo AI社ですが、もともとはGoogle出身のエンジニアとUber出身のエンジニアによって設立されたスタートアップでした。AIに関する専門家を多数抱える同チームは、自動運転開発の切り札になり得るという判断から、フォード社はその買収に踏み切ったようです。Argo AIのCEOであるBryan Salesky氏は、もともと前述のWaymoにてハードウェア開発のトップに立っていた人物で、Googleは自動運転技術においては先駆的であるが、社内で、マーケットへのアプローチ法をめぐってわだかまりができていることが指摘されています。そうした状況を背景に、もともとGoogleで自動運転技術の開発を行っていたエンジニアが独立してベンチャーを設立する事例が相次いでいるようです。

出典:recode – Ford is putting $1 billion into an AI startup, Detroit’s biggest investment yet in self-driving car tech

Tesla Motors

米国Tesla Motorsは、完全自動運転技術(ここではSAEレベル4以上を指しており、人間のバックアップをほとんど必要としないレベルのことを指します。)の実現に最も近い位置にいる企業のうちの1つと言えます。もはや規制面さえクリアすれば、技術的には可能なレベルに達しているのではないかと考えられており、今後の鍵となってくる公道データの収集に関しても、これまでに15万台以上を売り上げてきたモデルSのユーザーの走行データがテスラネットワーク上で蓄積されており、そのデータをAIによる学習を進めているといいます。AIの学習に用いられるデータの質といった課題があるとは言え、これまで各種センサー、カメラを搭載したインテリジェント・カーの販売を続けてきたテスラには全自動運転の分野においても一日の長があるように感じられます。

出典:Tesla Motorsホームページ

韓国ヒュンダイと百度

韓国ヒュンダイは、コネクテッド・カー分野において中国のインターネット検索大手百度と提携することを2017年6月9日に発表しました。コネクテッド・カーとは、インターネット上で得られる情報を活用して、ドライバーに交通状況や、駐車場の空き情報などを提供してくれるシステムを搭載した自動車のことを言います。また、ドライバーの音声認識による天気予報等の情報提供システムも搭載する予定で、2017年末に発売される新型車から搭載予定であるとのことです。そんなヒュンダイと百度は、全自動運転技術においての提携も視野に入れている模様です。

出典:【CESアジア2017】ヒュンダイと百度、コネクトカーで提携…自動運転も視野に

そうした全自動運転開発への取り組みの背景には、百度のインターネット検索大手企業としてのある強みが影響しているようです。

百度は検索エンジンのみならず、Googleマップと同様の地図サービスも展開しています。その百度地图は中国らしい、労働集約的な人海戦術によって作られていて、Google Mapを凌駕する精密さを誇っており、ストリートビューもほとんどの地域で見られるようになっています。すでにNVIDIAとの連携によって、こうしたマッピング技術を利用運転技術の開発にも着手しているようです。

出典:SmartDrive Magazine – 中国での自動運転車プロジェクト。鍵を握るバイドゥの現状と戦略

Nio

Nioは2014年に上海で設立された中国の自動車関連ベンチャーで、すでにドイツのニュルブルクリンク・サーキットにて、電気自動車としては世界最速タイムを誇るスーパーカー、Nio EP9を開発しており、その技術力に注目が集まっています。

そんなNioも、全自動運転技術開発へと参画しており、2020年までにその実用化を目指すと宣言していることが報じられています。Nio EVEと呼ばれるコンセプトカーは、運転席の固定ステアリングを配し、後部座席とも自由に行き来ができるような斬新な車内空間になっていて、EVEという、乗客の考えや好みを学習するAIも搭載されるようです。

自動車各社以外の動き(車載機器メーカー等)

パイオニア株式会社

カーナビや車載オーディオ機器事業を中心に展開するパイオニア社は、自動運転社会の到来に対応すべく各種システムの開発を進めているようです。今年の6月上旬に上海で開催されたCES2017アジアでは、SAEレベル3(運転者のバックアップのもとで、システムによる走行状況の監視等が行われる段階)の自動運転技術に対応できるよう設計された各種システムや、先進運転支援システムADASを搭載したコンセプト・コックピットを公開しています(内容は、今年1月に開催された東京オートサロンに出展されたものと同様です)。その内容としては、AR(拡張現実)によって、ドライバーにより多くの情報を提供するヘッドアップディスプレイやセンサーでドライバーの眠気を探知するドライバーモニタリングシステムなどがあります。

出典:パイオニア 世界最大級のカスタムカーイベント「東京オートサロン 2017」に出展

DESAY SV

同じく車載オーディオを扱う会社として1986年に中国で設立され、中国のカーエレクトロニクス産業のトップに君臨するDEASY SVも、自動運転社会に対応する車載コネクティビティシステム、「インテリジェント・キャビン」の開発に着手しているようです。同社の「インテリジェント・キャビン」は、4台のHDカメラや、77Gミリ波レーダーを搭載した先進運転支援システム(ADAS)を備えるほか、インターフェースとしてはTFT(薄膜トランジスタ)ディスプレイを採用。DESAY SV社のADASは、電子式リアビューミラーや、歩行者検知、前方衝突警告、車線逸脱警告、全自動パーキングといった機能を持っています。また、DESAY SVは、中国インターネット検索大手の百度と提携し、こうしたADASのシステムを全自動運転技術と結びつけるための研究・開発を続けているようです。

出典:Intelligent cabin concept demonstrated at CES Asia 2017

Continental

ドイツの自動車部品大手であるコンチネンタル社も、自動運転社会に向けた新たなコックピットシステムの開発を行っているようです。Holistic Human Machine Interface(HMI)と呼ばれるシステムは、ドライバーと車の間での情報のやり取りをよりスムーズで安全性が高く、かつ快適なものにするために開発されています。車が探知するあらゆる走行環境のデータをドライバーに送信する際に、HMIはドライバーの情報を読み取った上で必要な情報をあらかじめ絞り込んでくれるようです。また、ドライバーからの情報も音声認識等で読み取れるようになっているそうです。

出典:http://holistic-human-machine-interface.com/

自動車各社による自動運転技術の実用化に向けた動きと連動して、車載機器や部品メーカーも、そうした自動運転技術と連動するようなコックピットシステムの開発に着手しているようですね。また、DESAY SVなどは、ADASの技術を自動運転技術へと発展させるような取り組みも行っていて、自動運転の実用化に向けた競争はますます加熱していきそうです。

その他大手メーカーの動き

GM社

米国のGM社は、昨年1月に自動車の相乗りサービスを手掛ける米国Lyft社に5億ドルの投資を行っており、7月には、「全自動タクシー」の実用化に向けて提携していく方針を発表しています。全自動運転の実用化に向けて必要となるデータの収集を、Lyftの保持する顧客ネットワークを利用して、各種カメラ、センサーを搭載した車両をユーザーに貸し出すことで行う方針であるようです。

出典:GMとリフトの2社連合が目指す「自動運転タクシー」の実現

また、2017年6月15日の日本経済新聞での報道によれば、2018年にも、リフト社に数百台を供給する計画であるとのことです。

トヨタ

全自動運転の実用化に向けて必要となる公道でのデータ収集は、これまでにもご紹介してきたように、ゲームに用いられるような仮想データを活用するフォード社や、自社開発の車両にて公道データを蓄積させてきたWaymo、ユーザーから得られるデータを活用するテスラやGM社など、様々な手法が展開されていますが、トヨタは同分野において、ブロックチェーン技術を活用する方向に踏み切ったとのことです。トヨタが米国シリコンバレーに設置したTRIは、MITのメディア・ラボと提携し、膨大なユーザーの運転データを安全に共有できるネットワークを、ブロックチェーン技術を用いて開発するといいます。

出典;トヨタ、ブロックチェーンを自動運転車開発に導入へ――MIT始め多数の企業と提携

これまで、Waymoを初めとする各社が公道実験を行ってきたことや、Tesla Motorsが自社のユーザーネットワークを駆使して走行データを集めていることなどから明らかな通り、自動運転技術の実用化のためには、AIを学習させるための公道での走行データを可能な限り多く取りそろえることが重要になってきています。センサーやカメラといったハード分野では世界でも先行してきたと言える日本メーカーですが、今後はそういったデータ収集の課題にどう取り組んでいくのかということが、開発競争に勝利するための鍵となってくると言えそうです。

【台湾スタートアップ事情】台湾を、アジアを、そして世界を巻き込むインキュベーターGarage+

台湾スタートアップトレンドをお届けするシリーズ。今回は台湾を拠点にイノベーション創造を引き起こすインキュベーター、Garage+をご紹介いたします。
とにかく幅広く手厚いサポートに注目です。

Garage+を支えるEpoch


Garage+はEpoch(時代基金會)というNPOに支援され運営されています。そんなEpochとは一体何なのか、まずはご紹介していきます。
Epochは台湾、アジアパシフィックの経済発展を促進することをミッションに、社会のために将来の優秀な人材を育てるということをビジョンに掲げています。幅広いネットワークは30以上もの国内企業のみならず、MIT(マサチューセッツ工科大学)やカリフォルニア大学バークレー校といった名門大学や、イギリス王立国際問題研究所などトップクラスの調査機関にまでグローバルに広がっています。

Epochのプログラムはイノベーションと起業家精神育成の初期段階、Garage+を含む産業発展の段階、そして国際機関などと産業連携を行う段階と3つに分かれています。これらを包括的に行っていくのがEpochの特徴だということです。

台湾だけでなくグローバルに実績を上げる


Garage+のプログラムにはこれまで97ものスタートアップが参加し、そのうち37チームは海外からのチームです。これまでの全チームの資金調達成功率は平均して75%ということだそうで、最も多い分野はビッグデータやコンピューティングで3割強を占めるとのこと。これらに続いてIoTとヘルスケアがそれぞれ2割を占める形となっており、ヘルスケアの資金調達成功率はなんと100%ということなので驚きです。

MITのコンピュータ科学・人工知能研究所もパートナーの一員となっている

CSAIL所長のロドニー・ブルックス博士が設立したRethink Robotics社のロボットがエントランスでお出迎え(写真右) Rethink Roboticks初のアジアオフィスをGarage+に開設


これだけの実績を上げているのには理由があります。Garage+の幅広い支援がその1つで、Garage+の大きな特徴となっています。2017年のGarage+ Startup Grobal Programでは10日間の間にパートナー、投資家、そして市場を見つけ出すというスピードを実現するため様々なサポートを行っています。VISA申請の手助けや、パートナー、投資家との1対1のミーティングのアレンジはもちろんのこと、10日間の宿泊施設の用意や3ヵ月のワーキングスペースの提供、さらには海外から参加のチームには往復航空券をGarage+側で負担するという手厚さ。この支援もあってか、2017年1stバッチではなんと21もの国から135チームが参加しました。最も参加チームの多い国は33チームが参加したアメリカで、次に26チームでイスラエル。また、Garage+の持つグローバルネットワークも、500 Startupsや1776、日本でもDMM.comやTechCrunch Japanなどに広がっています。

ここでGarage+のプログラムに参加したチームをいくつか紹介していきます。


参加チーム

Lucid

2015年のStartup Grobal Programに参加したアメリカのLucidは3DVRカメラを開発。台湾のODMメーカーWistron社と提携し、Lab360やTEEC Angel Fundといった企業やエンジェル投資家から約2億円の調達を行いました。

 

ImmerVision Enables

ImmerVision Enablesは2000年にフランスで創業、現在はカナダを本拠としています。360°カメラの開発を行っており、Startup Grobal Programを通じてフォーチュングローバル500にも選出された台湾のODMメーカー、Quanta Computerと提携。また、日本のクラウドファンディングサイトMakuakeではSolo Piという製品を掲載しました。

Blocks Wearables

Lucidと同じく2015年のStartup Grobal Programに参加したBlocks Wearablesは世界初のモジュール型スマートウォッチを開発。こちらはロンドンを拠点とし、Kickstarterで約1.8億円(1.6億ドル)の資金調達に成功。さらにクラウドファンディング史上2番目に大きなスマートウォッチ会社となりました。

 

ここで紹介している企業はごく一部ですが、このように、Garage+では、幅広い国と地域から参加してくるチームの資金調達の多数サポートしていることをお分かりいただけたかと思います。このような海外からのスタートアップを台湾に誘致し、台湾の大企業との接点を生み出すグローバルオープンイノベーションというのもGarage+の特徴の一つです。

 

最後に

Garage+、またEpochのプログラムに参加する各チームの実績の裏にはそれぞれのチームへの懇切丁寧なフォローがありました。最初に挙げたような台湾、あるいはアジアパシフィックの発展を促進するというミッションや人材育成を掲げているということが手厚いフォロー、サポートの根底にあるのでしょう。
台湾のスタートアップエコシステムへの貢献だけでなく、グローバルに支援し、世界規模で動いているというのが非常に印象的でした。

いかがでしたでしょうか。
弊社では今後も海外のスタートアップコミュニティーに関するトレンドや情報をお届けして参ります。本記事、またその他お問い合わせがございましたら、ぜひこちらからお気軽にご連絡ください!

【開催報告】日本流オープンイノベーションによる大企業と大学発ベンチャーの未来(Mirai Salon #4)

株式会社アドライトが主催する、大企業や官公庁の事業責任者を対象にオープンイノベーションをテーマにしたイベントシリーズMirai Salonの第4回目「日本流オープンイノベーションによる大企業と大学発ベンチャーの未来」を、2017年6月8日(木)に、三菱地所株式会社様共催のもとEGG JAPAN(東京・丸の内)にて開催いたしました。今回のテーマは大学発ベンチャーに視点を置いたオープンイノベーション。大企業側も大学との連携には興味があるとみえ、今回も数多くの参加者の皆さまにお集まりいただきました。

イベント当日は、まず三菱地所株式会社者より、東京・丸の内が魅力的なビジネスセンターであり続けるために行われている、日本の中小ベンチャー企業に対してのビジネス開発支援や誘致活動等についてご説明。オフィススペースの運営や、年間250回以上のイベントを開催する会員組織「東京21cクラブ」の概要や取組み等についてご紹介頂きました。

次に、弊社代表の木村よりご挨拶とMirai Salonイベントシリーズについてのご紹介、および、弊社のベンチャー支援の実績や本イベントのテーマであるオープンイノベーションに対する取り組み、大企業とベンチャー企業を取りまく環境、オープンイノベーションの意義と有効性について、また、経産省が発表したイノベーション創造の現状に関する内容などをご紹介しました。今回で第四回目となる本イベントシリーズでは、過去にはインダストリー4.0IoTコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)といったトピックにおけるオープンイノベーションの実情を、第一線で活躍する有識者の方々をお招きしてお伝えしてきました。オープンイノベーションという手法は認知度が上がってきてはいるものの、実際にどう推進していくのかという点では正解がなく多くの企業が苦労されていることも事実。弊社ではこういった課題の解決をご支援すべく、関連イベントの開催やハンズオン支援の提供など積極的に活動している旨お話しました。

株式会社アドライト 代表取締役 木村忠昭

その後、登壇者4名より、各社のオープンイノベーションに対する取り組みとインサイトについてお話いただきました

大企業連携ではパズルピースが合致した

まずは最初の登壇者は、無意識で暮らしを良くするソリューションを創る企業ドリコス株式会社の代表取締役竹氏。竹氏は学生起業家としてキャリアをスタート。同社では、「飲む」と「エレクトロニクス」の融合により、消費者が知らないうちにヘルシーになっていくという世界の実現を目指しています。読者の皆さんの中にも、ダイエットや身体作りに挑戦したが続かなかった、挫折した、リバウンドした、といった経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。また、近年人気がでてきたヘルスケア系のアプリやウェアラブル端末などを使っていてもやはりうまくいかなかったという方もいらっしゃるのではないかと思います。この状況をみた竹氏は、日本の経済成長をけん引したエレクトロニクスの力に目をつけます。

同社で開発した「healthServer」は未来のヘルスケアデバイス。あなただけの栄養士であるheatlhServerは、管理栄養士と医学博士の監修のものに開発された独自の栄養解析アルゴリズムを搭載。消費者の身長、体重、性別といった身体的情報に加えて、どういった栄養素を消費しているのかといった行動パターンの情報などをもとに、ドリンクに混ぜ合わせることが可能な粉末状の栄養素を提供してくれます。まさにあなただけの栄養士。消費者は何も考えることなく、意識することなくhealthServerが提供するドリンクを飲むことで健康になっていく、ということです。

今回のテーマである、大企業連携においては、大手飲料メーカーとタッグを組んで事業展開を加速させてきたエピソードを披露。同社が経験した事業提携では、中核事業の成長エンジンとしての提携と派生価値の検証エンジンとしての提携のふたつに大別されるとのこと。前者は想起しやすい提携スタイルで、後者は例えばベンチャー企業にありがちなリソース不足問題の補充のメリットがあったようです。また、大企業側にとっては既存事業を時代や流行に沿った形で変革していくための足掛かりにできるという点もあるWin-Winな提携を実行。竹氏はこれを「パズルピースが合致した」と表現してくれました。

ドリコス株式会社 代表取締役 竹 康宏氏

宇宙開発のispaceは多様性に富んだチームを形成

続いての登壇者は、宇宙開発の分野で奮闘する株式会社ispace代表取締役袴田氏。同社が目指す未来は、宇宙に生活圏を築く時代を創造すること。そのために、積極的に大企業連携を行い、通信会社と組んで月面における通信環境を開発したり、接着剤メーカーと組んで宇宙で使える接着剤の開発をしたり、といった取り組みを行われているそうです。

同社が牽引する有名プロジェクトは、日本発民間月面探査チームHAKUTOです。通信大手au、東北大学、多様性に富んだプロボノメンバーが集い開発した月面探査ローバーは、各国から集まった計34チームの中から5本指に入る実力を発揮。その知恵と技術が業界最小の探査ローバーに集約されました。NASAのローバーは約900kg、中国は約100kg、アメリカは約30kgの重量があることに対して、同チームのローバーは4kgと圧倒的な軽さを実現。これにより、打ち上げてから月面に運ぶまでの労力とコストを大幅に削減することができます。

このような輝かしい実績を誇るispace社は、民間月面探査レースに参加するために立ち上げられたベンチャー企業。東北大学教授でもあるCTO吉田氏が約20年に渡り東北大学宇宙ロボット研究室の研究開発で培ったノウハウと技術を活用し、当初からレース後の宇宙分野での事業化を目標とし活動を続けてきました。今回のテーマにまさにぴったりなエピソードを紹介してくださった袴田氏。宇宙に生活圏が築く時代の到来が待ち遠しいところです。

株式会社ispace 代表取締役&ファウンダー、HAKUTO代表 袴田 武史氏

京都大学から生まれるオープンイノベーション

ベンチャー企業2社に続いて登壇いただいたのは、京都大学イノベーションキャピタル株式会社投資部でプリンシパルを務める八木氏。京都大学発ベンチャー企業をベンチャーキャピタルとして支援する八木氏からは、京都という土地柄や在籍する大企業、また、政府が出資する官民ファンドについてのお話など、普段あまり接することがない情報も交えてお話いただきました。

京都大学といえばiPS細胞の山中教授など、ノーベル賞の受賞者を数多く輩出してきた言わずと知れた名門大学。その京都大学からイノベーションを創出するために結成された同社の取り組み内容、ファンド概要/規模と投資先のベンチャー企業などご紹介いただきました。同社は、ベンチャー企業の事業領域に特化することはなく幅広く支援。その領域は、バイオテクノロジー、ICT、IoT、AI、エネルギー、素材系など多岐に渡っています。

印象的であったことは、大学連携を含めたオープンイノベーションの現実についてのお話。民間企業ではないという点で、やはり想定外のことが起きていることをプロジェクト推進の課題として捉えており、その点を解決してオープンイノベーションを通じたより多くの成功事例を生み出していく考えです。一方で、大学としても独立が求められており大学単体としてどのようなバリューを世の中に出していくのか、という点も今後の発展に向けて大切であると八木氏はお話しました。

その中でも最大の課題は、起業家人材が足りていないことであるといいます。それをうけて、より多くの優秀な若手のホープを起業家として育成すべく立ち上げたのが、Entrepreneur Candidate Club(ECC-iCap)と名付けられた起業家育成コミュニティーです。このコミュニティーを通じて、ミートアップやイベントの開催、シードプログラム、起業家育成プログラムの提供などを行っていくそうです。

これまでの数多くのイノベーションを生み出してきた京都大学の今後の動きに注目です。

京都大学イノベーションキャピタル株式会社 投資部 プリンシパル 八木 信宏氏

オープンイノベーションのカギはスピード感

そして最後の登壇者は、TomyK Ltd.ファウンダーでACCESS共同創業者の鎌田氏。鎌田氏は自身も東大在学中にベンチャー企業を立ち上げ、最近はベンチャー起業の支援を中心に活躍されています。また、Googleよって買収にされた東京大学発のロボットベンチャーSCHAFT(イベントの翌日SoftBankによって買収されることが発表された)の立ち上げからEXITまで社外取締役として支えた経験を持っています。

鎌田氏は、リアル世界とデジタル世界の融合がグローバルに戦うカギだと語りました。ハードウェアのみでは中国勢や韓国勢に価格で勝っていくのは難しく、Computingの面も付加しプラットフォームとして戦うことが大切との考えです。大学発の例として、インクジェット印刷でフレキシブル基板の製造をオンデマンドで発注できるサービスを展開するAgICやヒューマノイドロボットの実用化を目指すSCHAFTを、動画を交えながら詳しくご紹介いただきました。

テックベンチャー創出の課題としては、八木氏と同様に、起業家人材を増やすこと、また、大企業と足並みをそろえてともに成長していくこと、を挙げられました。鎌田氏のお話の中でも印象的であったことは、ベンチャーと大企業で連携する際のスピード感の違い。ベンチャー企業は一年半でなくなっちゃうんです、と語った鎌田氏は限られたリソースの中で成功していくためには大企業側の迅速な意思決定と推進体制が必要不可欠であると話しました。大企業にも特有の意思決定プロセスがありその必要性を説いた上で、ベンチャー連携は打率2割くらいの確率で成功するもの、くらい失敗を恐れない姿勢が必要とされるのではないか、ということでした。

グローバルにベンチャーを長期に渡り経営し、大型M&Aも経験された鎌田氏の熱のこもったプレゼンには独特の説得力を感じさせるものがあり、参加者の皆さまも聞き入っている様子がうかがえました。

TomyK Ltd. Founder & CEO 鎌田 富久氏

大学発ベンチャーとオープンイノベーションの未来

休憩をはさんでから、弊社木村ファシリテーションのもと、登壇者によるパネルディスカッションを実施。

パネルディスカッションの様子

まずは木村から、登壇者の皆さまへの質問タイム。最終的に提携を行うと意思決定した時に重要視していたこと、出資をもらう前後で事業のスピードが加速したことは具体的にどういった点であったのか、事業会社と提携する上でデメリットはあったのか、などを質問。京大VCの八木氏には、大学の先生のベンチャーへの関わり方について、VCとして投資した後の支援内容などについて。また、鎌田氏には、大企業とベンチャー企業のスピード感の違い、米国Google社の買収におけるプロセスや意思決定方法とスピード感などについてお伺いしました。その後、参加者からも、様々な質問が投げかけられました。大企業が以前と比べて他社連携に対しオープンになってきているのかや、ベンチャー企業が次の産業を創り出していくとするとどういった産業になるのかなど、それ他にも幅広くかつ突っ込んだ質問がでて予定時間をオーバーするほどの活発な議論が繰り広げられました。

その後の懇親会でも、登壇者と参加者を交えて、積極的に名刺交換や情報交換を行う姿が印象的でした。

最後に

大学発ベンチャー経営側、支援側の第一線で活躍される方々をお招きして行われた今回のMirai Salon第4回は、前回に引き続き熱気に包まれ、活発な議論が行われた会となりました。今後もMirai Salonでは、オープンイノベーションに関する様々なテーマでイベント開催を予定しています。関連トピックに関するイベント登壇やお問い合わせに関しては、こちらからお気軽にお声がけくださいませ。

 

【台湾スタートアップ事情】複合企業アクセラレータプログラムによる新たなイノベーションの形

エンターテイメント領域のアクセラレータプログラム

今回は台湾にて複合企業アクセラレータプログラムを展開するDIT Startupを紹介していきます。

Appworksやgarage+などのインキュベーション施設は台北市内にあるのに対し、台北市内から車を走らせること30分、DIT Startupの拠点は新北市・新店というエリアの真ん中にあります。大きな川に面し、近くには烏来などの観光地も多く、週末は多くの観光客がボートに乗りに来るような快適な場所です。

「台湾メーカーHTCの本社のすぐそばにあるため関連する外国企業なども多く訪れ、関連するゲーム企業の1社も入居しているビルのワンフロアが我々の拠点なんです。」お話をお伺いしたのは、DIT Startupsの育成事業部のディレクターを務めるManny Li氏。Manny氏は以前はゲームやエンターテイメント領域のアナリストをしながら、業界の記事を書いたり、若手クリエーターを集めたイベントをして独自のコミュニティを形成してきました。そんな彼がDIT Startupsにジョインしたのが今年1月。CEOであるRosa氏に誘われ、Rosa氏の持つエンターテイメントやゲーム業界の重鎮たちとのネットワークと、自身の持つ若手クリエーターのネットワークを掛け合わせれば面白い化学反応があるのではないかと考え、ジョインを決めたといいます。

Manny氏によると、DITとはDo It ! Team up !の略であり、数年前に設立され関連するゲームやエンターテイメント領域へのベンチャー投資を行ってきました。今年からはエンターテイメント領域に特化したアクセラレータプログラムを開始し、現在は12チームが参加する3か月間のbatch1の最中です。「IoTやヘルスケアに特化したインキュベーションやアクセラレーションのプログラムは台湾にもいくつか存在するが競争も激しいため、我々は他が注力していないエンターテイメント領域にフォーカスしているんです。」とManny氏は話します。メンター陣もCEOのRosa氏やManny氏の人脈で、アライアンス企業連合や業界のメンバーを中心に30-40名が在籍し、予約制の週次でのオフィスアワーを行っています。また、オフィスアワーとは別に週次の座学のカリキュラムがあり、3か月のプログラム期間の半分はプロダクト開発、残りの半分はマーケティングを、アライアンス企業連合の第一線で活躍している方々をお招きして開催しているとのこと。Batch1の大半はゲーム及びエンターテイメント領域においてBtoC事業を行っています。

複数のアライアンス企業による複合企業アクセラレータプログラム

さらに、DIT Startupの取り組みは、エンターテイメント領域にフォーカスしていることの他に、もうひとつ特徴的な要素があります。それは、DIT Startupが7つのアライアンス企業連合の投資によって設立・運用されていることです。そのうち5社は台湾での中堅ゲーム企業であるgamania社をはじめとするゲームやエンターテイメントで構成され、残りの2社は不動産・投資企業とのこと。また、不動産・投資企業がアライアンス企業連合にいることもあり、DIT Startupが入居するビルの2階にはカフェも併設されており、DIT CafeとしてDIT Startupの傘下で経営しています。

「DIT CaféはDIT Startupの収益源となっており、そこでの収益をアクセラレータプログラムに回しています。ちょっとした打ち合わせや大きなイベントなどを行う場合にはDIT Cafeを使っています。」今回の取材もDIT Cafeで行われました。

また、DIT Startupがこれらアライアンス企業連合により運営されている結果、アクセラレータプログラム後の展開として、
1.アライアンス企業連合とのIP(知的財産)やコンテンツ面など含むコラボレーション
2.最終的なアライアンス企業連合とのM&Aによるイグジット
も想定しているとのこと。これらの展開はこれからとのことですが、その前段として既に、毎週のクローズドな交流イベントを通じて、アライアンス企業連合の経営陣とアクセラレータプログラム参加企業との交流により、双方に刺激が生まれているそうです。Demo dayもクローズドでアライアンス企業連合向けのみに行われるとのこと。

最後に

いかがでしたでしょうか。関連するアライアンス企業連合による複合企業アクセラレータプログラムは世界中でもまだ新しい取り組みであり、このアクセラレータプログラムもbatch1の最中のことですが、ここからどのようなイノベーションが生まれるか楽しみです。Manny氏曰く、同じ業界のアライアンス企業連合による取り組みについて、当初は競争関係などを心配していたそうですが、新たなイノベーションの種を一緒に見つけていこうという気運のほうが高く、関係も良好でこれからの創造できない化学反応に期待しているとのこと。広い意味ではオープンイノベーションの新しい形とも呼べるDIT Startupの複合企業アクセラレータプログラムの取り組みからどんな革新が生まれるか、引き続き注目していきます。

弊社では今後も海外のスタートアップコミュニティーに関するトレンドや情報をお届けして参ります。本記事、またその他お問い合わせがございましたら、ぜひこちらからお気軽にご連絡ください!

エンターテイメント領域のアクセラレータプログラム

今回は台湾にて複合企業アクセラレータプログラムを展開するDIT Startupを紹介していきます。

Appworksやgarage+などのインキュベーション施設は台北市内にあるのに対し、台北市内から車を走らせること30分、DIT Startupの拠点は新北市・新店というエリアの真ん中にあります。大きな川に面し、近くには烏来などの観光地も多く、週末は多くの観光客がボートに乗りに来るような快適な場所です。

「台湾メーカーHTCの本社のすぐそばにあるため関連する外国企業なども多く訪れ、関連するゲーム企業の1社も入居しているビルのワンフロアが我々の拠点なんです。」お話をお伺いしたのは、DIT Startupsの育成事業部のディレクターを務めるManny Li氏。Manny氏は以前はゲームやエンターテイメント領域のアナリストをしながら、業界の記事を書いたり、若手クリエーターを集めたイベントをして独自のコミュニティを形成してきました。そんな彼がDIT Startupsにジョインしたのが今年1月。CEOであるRosa氏に誘われ、Rosa氏の持つエンターテイメントやゲーム業界の重鎮たちとのネットワークと、自身の持つ若手クリエーターのネットワークを掛け合わせれば面白い化学反応があるのではないかと考え、ジョインを決めたといいます。

Manny氏によると、DITとはDo It ! Team up !の略であり、数年前に設立され関連するゲームやエンターテイメント領域へのベンチャー投資を行ってきました。今年からはエンターテイメント領域に特化したアクセラレータプログラムを開始し、現在は12チームが参加する3か月間のbatch1の最中です。「IoTやヘルスケアに特化したインキュベーションやアクセラレーションのプログラムは台湾にもいくつか存在するが競争も激しいため、我々は他が注力していないエンターテイメント領域にフォーカスしているんです。」とManny氏は話します。メンター陣もCEOのRosa氏やManny氏の人脈で、アライアンス企業連合や業界のメンバーを中心に30-40名が在籍し、予約制の週次でのオフィスアワーを行っています。また、オフィスアワーとは別に週次の座学のカリキュラムがあり、3か月のプログラム期間の半分はプロダクト開発、残りの半分はマーケティングを、アライアンス企業連合の第一線で活躍している方々をお招きして開催しているとのこと。Batch1の大半はゲーム及びエンターテイメント領域においてBtoC事業を行っています。

複数のアライアンス企業による複合企業アクセラレータプログラム

さらに、DIT Startupの取り組みは、エンターテイメント領域にフォーカスしていることの他に、もうひとつ特徴的な要素があります。それは、DIT Startupが7つのアライアンス企業連合の投資によって設立・運用されていることです。そのうち5社は台湾での中堅ゲーム企業であるgamania社をはじめとするゲームやエンターテイメントで構成され、残りの2社は不動産・投資企業とのこと。また、不動産・投資企業がアライアンス企業連合にいることもあり、DIT Startupが入居するビルの2階にはカフェも併設されており、DIT CafeとしてDIT Startupの傘下で経営しています。

「DIT CaféはDIT Startupの収益源となっており、そこでの収益をアクセラレータプログラムに回しています。ちょっとした打ち合わせや大きなイベントなどを行う場合にはDIT Cafeを使っています。」今回の取材もDIT Cafeで行われました。

また、DIT Startupがこれらアライアンス企業連合により運営されている結果、アクセラレータプログラム後の展開として、
1.アライアンス企業連合とのIP(知的財産)やコンテンツ面など含むコラボレーション
2.最終的なアライアンス企業連合とのM&Aによるイグジット
も想定しているとのこと。これらの展開はこれからとのことですが、その前段として既に、毎週のクローズドな交流イベントを通じて、アライアンス企業連合の経営陣とアクセラレータプログラム参加企業との交流により、双方に刺激が生まれているそうです。Demo dayもクローズドでアライアンス企業連合向けのみに行われるとのこと。

最後に

いかがでしたでしょうか。関連するアライアンス企業連合による複合企業アクセラレータプログラムは世界中でもまだ新しい取り組みであり、このアクセラレータプログラムもbatch1の最中のことですが、ここからどのようなイノベーションが生まれるか楽しみです。Manny氏曰く、同じ業界のアライアンス企業連合による取り組みについて、当初は競争関係などを心配していたそうですが、新たなイノベーションの種を一緒に見つけていこうという気運のほうが高く、関係も良好でこれからの創造できない化学反応に期待しているとのこと。広い意味ではオープンイノベーションの新しい形とも呼べるDIT Startupの複合企業アクセラレータプログラムの取り組みからどんな革新が生まれるか、引き続き注目していきます。

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